第30回 学校行事の実際-スポーツフェスティバル-

建前

指導のねらい

特別活動の一つである学校行事のうち、スポーツフェスティバルの教育的意義を理解する。

指導内容

・スポーツフェスティバルのねらいと内容
・実施計画と役割分担への積極的な取り組み
・学校行事の進め方
・事前指導の在り方
・事後指導の在り方

本音

Goくん

 総務部の PTA 会報担当として、実行委員長のスポーツフェスティバルの感想を添削している。文章から本番前の不安と直後の達成感が伝わってくる。責任を感じながら取り組んだのだと思う。
 一方で、今後のスポーツフェスティバルを考えると、種目や教員の関わり方を考えていかなければならないと思う。生徒が一つのものを作り上げる過程で教員のサポートは不可欠だが、できる限り自分たちで作り上げたという感覚を生徒に与えてあげたい。現段階で会場準備はお互いに声がけをし、積極的に取り組んでいる。もう一つ上の段階に集団としてのレベルを上げ、生徒にとって「学び」のある行事にしていきたい。

Sinちゃん

 スポーツフェスティバルでは,普段の授業では見られない生徒の様子が見ることができた。スポーツの得意な生徒が積極的に活動しているのが印象的であった。私自身の高校時代と比べると(比べるのは適切ではないのかもしれないが),教員が用意することが多い気がしている。行事の運営はなるべく生徒にやらせるのが良いというのが私の考えである。本校の生徒の実態を考えれば仕方ない部分が多いかもしれないが,教育活動としてスポーツフェスティバルを捉えるならば,なるべく生徒たちが自分たちで運営したんだという意識付けができると良いのではないだろうか。数少ない本校の学校行事をいかに効果的なものにできるか,考えていきたい。

私から

 君たちが今回、スポーツフェスティバルの生徒実行委員会の運営において感じたことは、ほとんどの教員が通る道だと言えるでしょう。私たち教員の多くは、進学校またはそれに準ずる高校を卒業しており、大なり小なり生徒主体で行事を動かしてきているからです。教員として指導困難校に勤務したなら、それは概ね等しく覚える感覚であり、そして文字通り困難な課題でもあります。

 本校で生活する生徒の多くが、小中学校での学校生活において、一般的には真っ当とされる自尊感情を育むことができませんでした。粗暴な生徒なら、自尊感情を歪めた状態でそれを手に入れてしまったのではないかと判断したくなる場合もあります。また、在籍生徒の半数が中学校時代に何らかの理由で不登校を経験しています。それは、そもそも集団の中で主体的に行動する機会すら得られなかったということであり、自尊感情の基盤、土台すら築けていないと言うことができます。

 それでは、自分自身のいわゆる進学校での高校時代と比べることに意義があるかどうか。
 私はあると思います。彼らが本来、主体的に活動すべき部分を意識することができる、そこに不満を持つことが大切だからです。当然ながら、不満を持つ対象は生徒そのものではありません。生徒を自主的な活動に導くことができない教育体制や教育的意図の有無、そして自らの力量…。彼らをどのように育てたいか、どこまで導きたいか、それを検討する際の基準として、自分自身の高校時代を設定してほしい。その目標に向かって、教員が用意すること、生徒が運営することのバランスを、生徒の成長を見極めながら段階的に変化させてゆく視点が重要なのです。

 さて、実際に生徒の主体性を育てられる教員になれるかどうかの分水嶺を示しておきます。実際運営すると分かるのですが、指導困難校においては自分で動かした方が早くて楽なのは事実であり、年齢を重ねて多忙になるのも相まって教員がお膳立てをするスタイルに流されてしまいがちです。主体性を育てられる教員であり続けるための分かれ目は、我慢して待つことができるかどうか、そして、小さくてセンスのいいきっかけを与えられるかどうかだと思います。
 
 指導困難校と表現する意味を「生徒に言うことを聞かせるのが困難だから」と捉えているうちは三流だと考えましょう。生徒の自主性の育成に直接的に携われるのが指導困難校に勤務する重要な意義であり、それは、公教育に携わる私たちが手に入れるべき資質・能力のひとつだと断言しておきます。

 君たちにひとつ喧嘩を売りましょう。おそらく来年度、いくつか主体性を育てるべき役職が与えられます。生徒会執行部顧問、生徒実行委員会顧問、また部活動顧問、そしてSA…。

 「できる限り自分たちで作り上げたという感覚を生徒に与えてあげたい」(Goくん)、「行事の運営はなるべく生徒にやらせるのが良いというのが私の考え」(Sinちゃん)をどのように実現するのか、具体的な挑戦が始まります。どのくらい君たちができるのか、お手並み拝見です。平成32年初春、旨いものを食べながら自慢話として聞かせてもらいましょう。

 最後に。私も初任校のS農業高等学校で、サブではありましたが、1年目から3年目まで生徒会顧問を担当しました。三年間、顧問をしながら考えていたことは君たちと同様であり、それを指導困難校の課題として捉え、県高等学校生徒指導研究会において「生徒を主体とした生徒会活動を目指して」というタイトルで発表したことがあります。
 拙い文章ですが、添付しておきますね。

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