第1章 ヨウとおジィ 昔ばなし 01
おジィが変な鼻唄を口ずさみ始めた。息を鼻から抜きながら、独特の節回しで唄う。ジョーズが近づいて来るあの曲より、怖い。
「桂馬成りで、詰みじゃ」僕の玉は盤上できゅうきゅうになり、行き場を失ってまたしても短時間で詰まれてしまった。おジィはコントローラーをテレビの前に置いて、カウチに座り直し、茶をすすりながらいう。
「銀をさらっと捨てたのがわしの勝因じゃ。目先の駒にこだわって小さい将棋をしとるから、大局を見逃すんじゃ。次はいかに持ち駒を捨てるか、ちゅーことを考えて臨め」なんだか