見出し画像

アメリカを食べる 5 シェフサラダ Chef Salad

日本でもお馴染みのシェフサラダ

  シェフお勧めサラダとかシェフの気まぐれサラダとか、日本にはいろいろなシェフサラダがあります。日本でもシェフサラダはよく知られたサラダということができます。その名前からも分かるように決まったレシピはなく、各レストランに独自のレシピがあり様々なシェフサラダが存在しています。
 日本でも人気のシェフサラダですが、起源となるアメリカのシェフサラダとはかなり違います。シェフサラダはアメリカを代表するサラダで、ある程度決められた材料で作られています。「ある程度」というのはちょっと曖昧ですね。私の『世界のサラダ図鑑』の中でも「ある程度決められた材料で作られるアメリカ伝統のサラダの名前である。」と書きました。実際シェフサラダにはこれだという決められたレシピはなく、基本的な要素は含まれつつも多くのバリエーションが存在しています。この点ではもしかすると日本のシェフサラダと似ているかもしれません。
 日本のシェフサラダとアメリカのシェフサラダのいちばんの違いは量でしょう。日本のシェフサラダはあくまでも副菜としてのサラダですが、アメリカではメインディッシュという認識があります。実際ミートサラダと野菜サラダをミックスした感じでかなりボリュームがあります。シェフサラダをでんと目の前に置いてあとはパン、スープくらいということがよくあるわけです。
 

シェフサラダによく似たもう一つのサラダ

 シェフサラダと似ているサラダにコブサラダというのがあります。日本語のサイトを検索するとシェフサラダはコブサラダが起源だと書いてあるものもあります。しかし両者は似てはいるものの別のサラダで、シェフサラダの起源がコブサラダということもありません。シェフサラダは17世紀に英国やアメリカの植民地で人気を博したサルマガンディと呼ばれる肉と野菜で構成された料理ではないかという説がありますが、あくまでも推測の域を出ないといえます。現在アメリカで知られるシェフサラダが登場し始めるのは20世紀前半で、ニューヨークの著名なホテルのシェフが考案したといわれています。しかし元祖と思われるホテルが3つあり、どのホテルかはいまだはっきりしていません。

The Brown Derby Cookookに登場するシェフサラダ(左)とコブサラダ(右)のレシピ
The Brown Derby Cookook [Doubleday & Company:New York] 1949
https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=uc1.31822042770693&view=1up&seq=1 より
オリジナルソースはUniversity of California
コブサラダ
Cobb Salad

 コブサラダは起源がはっきりしています。1930年代にカリフォルニア州ロスアンジェルスのレストラン、ブラウンダービーレストランのオーナーであるボブ・コブが考案したサラダです。1949年に出版された’Brown Derby's own cookbook’の中に登場します。シェフサラダと違いコブサラダにはきっちりとしたレシピがあり、現在も基本的には変わっていません。興味深いのはこの本にシェフサラダも登場するところでしょうか。ただし名前はシェフサラダではなく、ダービーシェフサラダと書いてあります。つまりブラウンダービーレストラン版のシェフサラダということになると思います。使用されている食材はミックスグリーン(緑葉野菜のミックス。レタス、ロメインレタス、チコリ、クレソン)、セロリ、ベイクドハム(焼いたハム)、茹で卵、パセリ、トマトで、現在のシェフサラダの要素が随分含まれていることが分かります。またこの本に登場するコブサラダ、シェフサラダには同じレストランオリジナルのフレンチドレッシング使われています。

どんなレストランにもあるシェフサラダ

  アメリカではダイナー(郊外などにもある庶民的なレストラン)に必ずあるのがシェフサラダです。ファミリーレストランはもちろんイタリアンレストラン、ピザレストラン、サンドイッチショップにもかなりの確率であると思っていいでしょう。日本の場合は知りませんがアメリカではスターバックスにも置いてあります。
 それだけポピュラーなシェフサラダですが、最近状況が変わりつつあります。Sweet Green(アメリカのサラダ専門のチェーン店)などに代表されるサラダの専門店が増えていろいろなサラダが食べられるようになったというだけでなく、内容を自分で選べられるようになってきました。量もたっぷりでこれをランチにする人がたくさんいます。サラダ人気が急上昇ということもあり、シェフサラダのような定番的なサラダは逆に人気を失いつつあるようです。とはいっても空港などの待ち時間にランチを取る場合など、サラダが欲しいなあと思うときはボリュームのあるシェフサラダを食べることが個人的には多いです。まだまだシェルサラダの存在は捨てがたいものがあります。

参考資料
https://en.wikipedia.org/wiki/Chef_salad 
https://www.tasteatlas.com/chef-salad
https://www.hungryhowies.com/blog/chef-salad-history#:~:text=Celebrity%20Chef%20Louis%20Diaz%20popularized,originator%20of%20the%20modern%20version.
https://quaintcooking.com/2022/07/29/the-history-of-chef-salad/
https://www.foodtimeline.org/foodsalads.html
https://babel.hathitrust.org/cgi/pt?id=uc1.31822042770693&view=1up&seq=1

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?