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ある日のスターバックス

午後3時、仕事で火照った頭をクールダウンするためにコーヒーを求める。砂糖もミルクもいらない。深煎りのブラック・コーヒー。

20代後半、僕はホテルをクライアントとする仕事をしていて、当時の名称でいえば赤坂(溜池山王)の全日空ホテルを担当していた。アークヒルズが隣接するあのホテル。ホテル側かアークヒルズ側かどちらかの1Fに、比較的広くて開放的な空間のスターバックスがあった。今でもあるのかな?

天井に吊るされたスピーカー、BOSE101からすこし大きめな音で、ジョン・コルトレーンとデューク・エリントンが演奏する「In A Sentimental Mood」が聴こえてきた(オリジナルはデューク・エリントンの曲ですね)。ちょうどひと仕事を終えた午後3時くらいのこと。イントロのあのデューク・エリントンのピアノの音、そこにすうっと絶妙なタイミングで入るコルトレーンのテナー。

当時のスターバックスはゆったりしたソファを配置していて、ちょっと贅沢な空間だった。僕は一人掛けの大きめのソファにすわっていた。目を閉じる。ビター・スウィートなサウンドが耳に心地良い。スターバックスの深煎りのコーヒーと相まって、火照った頭が徐々にクールダウンしていく。
これを味わいたくて、ホテルに訪問する用件もないのに、ちょくちょくこのスターバックスに立ち寄った。その度に「In A Sentimental Mood」がかかっていたわけはないのだろうけど、何回かは聴いたと思う。

午後3時にスターバックス・コーヒーを飲む。もちろんブラックで。脳内再生ボタンが押される。デューク・エリントンのあのピアノのイントロが聴こえてくる。


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