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リチャード・カーティス脚本&監督『ラブ・アクチュアリー』

 映画を観るときに、この脚本家だったら個人的に期待していいだろうと思う人がいる。そのひとりがビリー・ワイルダー。脚本家としてスタートし、映画監督として1944年『深夜の告白』、1945年『失われた週末』、1950年『サンセット大通り』、1953年『第十七捕虜収容所』、1954年『麗しのサブリナ』、1955年『七年目の浮気』、1957年『翼よ、あれが巴里の灯だ』『昼下りの情事』『情婦』、1959年『お熱いのがお好き』、1960年『アパートの鍵貸します』、1963年『あなただけ今晩は』、1966年『恋人よ帰れ!わが胸に』、1970年『シャーロック・ホームズの冒険』、1972年『お熱い夜をあなたに』、1974年『フロント・ページ』ほか、多くの作品を送り出している。そしてもうひとりがリチャード・カーティスだ。ローワン・アトキンソンと組んだテレビシリーズ『Mr.ビーン』、映画では1994年『フォー・ウェディング』、1997年『ビーン』、1999年『ノッティングヒルの恋人』、2001年『ブリジット・ジョーンズの日記』、2004年『ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうな私の12か月』、2011年『戦火の馬』、2014年『トラッシュ!-この街が輝く日まで-』、2019年『イエスタディ』の脚本を担当し、監督(脚本も兼任)としては2009年『パイレーツ・ロック』、2013年『アバウト・タイム~愛おしい時間について~』を手掛けた。そんな彼が脚本・初監督したのが2003年の『ラブ・アクチュアリー』だ。日本では2004年2月に公開され、15億円の興行収入を上げ、その後、2017年には続編となるテレビ短編映画『レッド・ノーズ・デイ・アクチュアリー』も作られた。
 筆者がこの映画を初めて観たのは、東銀座にあった今はなき映画配給会社UIPの試写室で、あまりの面白さにワクワクした記憶がある。そして、DVDが発売され、日本語吹き替え版はソフト版のみ。ヒュー・グラント=森田順平さん、アラン・リックマン=有本欽隆さん、エマ・トンプソン=高島雅羅さん、コリン・ファース=中田和宏さん、リーアム・ニーソン=原康義さん、キーラ・ナイトレイ=弓場沙織さん、ローラ・リニー=山像かおりさん、ロドリゴ・サントロ=三木眞一郎さん、ビル・ナイ=野沢那智さん、ローワン・アトキンソン=岩崎ひろしさんという豪華な顔ぶれだ。
 舞台はロンドン。グラント演じる英国首相のデヴィッドとマルティン・マカッチョン演じる女性スタッフ・ナタリー、ナイ演じるロック歌手ビリーとグレゴール・フィッシャー演じるマネージャーのジョー、サントロ演じる同僚のデザイナー・カールに片思いをするリニー演じるOLのサラ、リックマン演じる夫ハリーに浮気の疑いを向けるトンプソン演じる妻カレン、キウェテル・イジョフォー演じる夫ピーターの親友でアンドリュー・リンカーン演じるマークに思いを寄せられるナイトレイ演じる妻ジュリエット、ニーソン演じる妻と亡くした男ダニエルとトーマス・サングスター演じる息子サムなど、19人の男女が繰り広げるエピソードが交錯していく。一見、まったく関係ないような登場人物たちが実はどこかでつながっているという、群像ドラマとしての面白さがあり、劇中で使われている音楽もザ・ビートルズのカバー「オAll You Need Is Love(愛こそはすべて)」、ベイ・シティ・ローラーズのフォー・シーズンズのカバー「Bye Bye Baby(Baby Goodbye)(バイ・バイ・ベイビー)」、ビーチ・ボーイズの「God Only knows(神のみぞ知る)」ほか、耳慣れた音楽が使われ、場面間をつなぐ役割も果たしている。そして、ナイが歌う「Christmas Is All Around」が、カーティスが脚本を担当した『フォー~』でウェット・ウェット・ウェットが歌った主題歌「Love Is All Around(愛にすべてを)」の替え歌になっているという遊び心も憎い。そのほか、カーティスの盟友アトキンソンがビーンのようなキャラクターで場面をさらい、当時はまだ無名だったシエンナ・ギロリー、エリシャ・カスバートが出演していて、どの場面に出ているのかを探すのも面白いだろう。
 今ではクリスマス映画の定番作品の1本となってファンも多いこの映画。制作されてからもう20年以上という月日が流れている。劇場のスクリーンで観たことがないという映画ファンも多いはずだ。そろそろ4Kデジタルリマスター版で上映するとか、午前十時の映画祭のラインナップに入ってもおかしくないだろう。観ていて楽しいし、群像ドラマのお手本といっても過言ではない。それほど良く出来ているし、観終わった後の後味スッキリ、幸福感は劇場のスクリーンで観てこそ味わえるものだと思う。

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