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お金で買うことが許されるモノ、許されないモノ。

今、私たちが生きる現代では、ありとあらゆるモノがお金で買える。市場価値というものが私たちの生活を支配するようになった。

例えば、「インドの代理母による妊娠代行サービス」「1トンの二酸化炭素を大気中に排出する権利」「刑務所の独房の格上げ」「子供たちが本を1冊読むたびにお金を払う」

本書のテーマは「お金で買うことが許されるモノ、許されないモノ」を決める時、本当に大切な価値が何か?という問題を考え抜くことである。

著者[マイケル・サンデル]
ハーバード大学教授。専門は政治哲学。類まれなる抗議の名手としても著名で、中でもハーバード大学の学部科目「JUSTICE(正義)」は延べ14000人を超す履修者数を記録。著書の「これからの正義の話をしよう」は世界各国で大ベストセラーになっている。


■お金を払って、動物の命を奪うという自然保護。

1970年から1992年にかけて、アフリカのクロサイの生息数は65000頭から2500頭までに減少していた。原因は、密猟者による違法な狩猟である。

クロサイの角は、アジアや中東で高値で取引されていたからだ。

これを受けて、一部の野生生物保護団体は、絶滅危惧種に市場的インセンティブを活用した。

この市場的インセンティブとは、民間の牧場主に「限られた数のクロサイを撃ち殺す権利をハンターに販売する」という権利を与えるのだ。

つまり、権利を与えられた牧場主は、クロサイを繁殖させ、世話をし、密猟者から守る。そして、決められた数のクロサイをハンターに撃ち殺させる。それによって牧場主はお金を得られるという仕組みだ。

謳い文句はこうだ

「有料で絶滅危惧種のクロサイを撃ちにおいで下さい。忘れがたい経験を味わうと同時に、自然保護という目標に貢献することになるでしょう。」

ゆがんだエコツーリズムと感じるだろう。しかし、現実にはクロサイの数は回復し始めている。

経済学の論理だと、この解決策は完全な勝利である。幸福になる人はいても、不幸になる人がいないからだ。

ではなぜこれが多くの人が、正解だと思えないのか。

それは、市場の論理は道徳の論理を抜きにしては完成しないということだ。そして、道徳的問題での論争では人々の意見は一致せず、問題から解放されることはない。

この話では、「道徳を売買」するということに対して「大切な価値は何か?」が問われている。


■薬物中毒者の女性が不妊をすれば300ドルがもらえる。

世界には、薬物中毒者を母親に持つ子供が1年に数十万人づつ生まれる。この子供の多くが、虐待、育児放棄、薬物中毒という問題を抱えている。

こうした問題を解決するため、ある慈善団体が予防プロジェクトを行っている。

内容は、「薬物中毒の女性が不妊治療、長期の避妊処置をすれば300ドル(日本円で約33000円)を支払う」というのだ。

この話を聞いてあなたはどう思うだろう?

ナチスの優生学を思い出すだろうか、さらに薬物中毒を助長させるものだと思うだろうか。

確かに、批判者は多い。薬物中毒者は、多くが貧困層であり「お金をあげる」と言われた場合に自発的な選択する能力があるのか?強制と同じではないかという声もある。

しかし、創設者のバーバラ・ハリスはこう語っている。

「女性が子供を作る権利のほうが、子供が普通に生活を送る権利よりも重要だと、なぜ言えるのでしょうか」
「そうした人たちの判断力がそれほど弱っているなら、いったいどうすれば、子供を産み育てることに関して分別のある決定を下すはずだ、と期待できるのだろうか?」

薬物中毒者の女性が、お金と引き換えに不妊手術を受ける。その結果、問題を抱えた子供を減らせる。これは、善なのか悪なのか。生殖能力は市場取引にしたがうべきなのか。

売春、代理母、卵子や精子の売買はどうなのか。我々は、自分の身体の使用や売却も自由にできる財産とみなすべきなのだろうか。


■教育における金銭的インセンティブ。

金銭的インセンティブは教育改善のカギになるのか。ハーバード大学経済学教授を務めるローランド・フライヤー・ジュニアはこの問題を解決しようとしている。

フライヤーはアフリカ系アメリカ人で、治安の悪い環境で育った。彼は、金銭的インセンティブがスラム地区の学校に通う子供たちにとってやる気を起こさせる助けになると信じている。

財団から資金援助を受けて、アメリカで最大の学区のいくつかでプロジェクトを行った。

このプロジェクトは、生徒が授業に出席したり、行儀よく振舞ったり、宿題を提出したりすると報奨金がもらえた。また、テストで好成績を取ったり、本を1冊読むたびに現金を受け取った。

こうしたプロジェクトは様々な結果を生み出した。しかし、結論から言うと子供たちにお金を払って成績を上げようとしたが、まったく向上しなかった。

効果が高かったのは、本を1冊読むたびに2ドル(約220円)もらった子供たちの読解力スコアが向上したぐらいだ。

また、別のプロジェクトではAP試験(大学レベルの学力があるか測る試験)で合格点を取ると100~500ドル(約11000円~55000円)を支払うというものだ。

そして、生徒が合格するたびに教師にもまた、100~500ドルの報酬とボーナスが支払われた。

こうしたAP試験のインセンティブプログラムは、プラスの効果を発揮した。貧困家庭の生徒を含め、APクラスに出席しようとする生徒が増えた。多くの生徒がそこでAPテストで合格している。

しかし、お金を払えば払うほど、成績が上がるわけではない。

なぜならテスト合格に100ドルを払う学校もあれば、500ドル払う学校もある。だが、結果は変わらなかったからだ。

つまり、生徒と教師はただ金銭的利益を追求したわけではないのだ。お金そのもの価値より、その表現効果のおかげだ。生徒たちは良い成績を取ることが「クール」だと感じていたのだ。

このプロジェクトが成功したのは、生徒に賄賂を贈ったからではなく、成績と学校文化に対する価値観を変えたからなのだ。


■汚染許可証を売買するということ。

1997年地球温暖化に関する京都会議でアメリカは、世界の温室効果ガスの排出基準に「取引システム」を加えるべきと主張した。

これは自国の温室効果ガスを削減してもいいし、他の地域の削減にお金を払ってもいいというというシステムだ。

当時、この本の著者マイケル・サンデルは、この「取引システム」に反対した。

彼の主張は「裕福な国々がお金をを払って自国の排出量を減らす義務を逃れるとすれば、環境に関わる将来の世界的協力に必要な、犠牲の共有という意識が蝕まれてしまうのではないか」

この主張に経済学者からの批判が殺到した。取引の効率性、経済合理性の初歩的な原理を理解していないのだと。

そして、政府による規制の中でもその流れは止まらなかった。一部の環境保護論者は地球を救うため市場ベースのアプローチを取ったのだ。排出規制を工場に課すのではなく、その代わりに環境汚染に値段をつけ、市場に任せたのだ。

ある企業は自社の排出量を減らしてもいいし、汚染の割当量を下回った企業から余分な汚染許可を買ってもいいことになる。

カーボンオフセット(炭素の相殺)でも同じことが行われている。地球温暖化への個人的な負担を、お金を払って相殺するのだ。

例えば、自分の車の運転によって排出されたCO2を相殺するため、発展途上国のグリーンプロジェクトに寄付することなどである。

発展途上国の植林やグリーンエネルギー計画を支える資金調達はやるだけの価値がある。しかし、オフセットには購入者が気候変動に対してこれ以上の責任はないと考えてしまう。

つまり、責任を商品化し、個別化することによって行動が改善されるどころか、悪化する可能性もあるのだ。

大切なのはインセンティブ(賄賂)を送っていることを忘れないことだ。時には、それが正しいかもしれない。しかし、それは道徳的に妥協した行為であり、「より低級な規範をより高度な規範の代わりに行っているだけ」なのだ。

お金のためにそれをするのか、したいからそれをするのかでは本質的に違うということで、大切な価値は何かを考えるべきだろう。



私の要約では伝えきれなかった内容も沢山あるので、この本が気になった方は、実際に読むことをオススメします。私は、たった一冊の本でも「人生は豊かになる」と思っています。



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■私の考察

私たちの生活では、ほとんどのモノがお金で買えます。

でも本書では、本当にその商品は買って許されるモノなのかということを考えさせられる内容です。

道徳的に考えれば、「命に値段を付ける」「本質とは違うがお金で人を動かす」という行為はダメじゃないか。という意見は多いと思います。

しかし、善悪についての論争は、結局決着がつかないと思います。人々は全てにおいて合理的ではないし、感情で動いていて、しかも個人の主観が「自分の正義」を決めていますよね。

やはり、この市場主義と道徳の問題では、「本当に大切な価値は何か」ということを考えなければと痛感します。

例えば、クロサイの話では、大切な価値が「目の前のクロサイの命」なのか、「種としてのクロサイ」なのかでは、行動は変わりますよね。

どちらが正しいではなくて、もし、あなたが目の前のクロサイの親ならそのクロサイを守ろうとしますよね。もし、あなたが長年クロサイの研究をしている人なら種を守ろうとする。

その意思が「お金で買う」という行動を引き起こし、ある人にとってはおかしな行動だと思われてしまうし、思ってしまう。

私たちが日常で大量消費している、商品やサービスを「お金で買う」ことの「大切な価値」を見失わないようにしなければと思います。

それではまた次の本で。

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