活躍するのは「自分の頭で考えて、自分で行動できる人」

日本のトップランナーたちは、いかにキャリアを形成してきたのか。そして、若者たちにどんなアドバイスを送るのか。

2019年4月に株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)のCTO(最高技術責任者)に就任した小林篤氏に、法学部からエンジニアに転身しITの世界に挑戦した経験から、これからの時代のキャリア形成について話してもらった。

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DeNAが目指す第3次産業革命

DeNAには、モバゲーのソーシャルプラットフォーム開発エンジニアとして2011年に入社しました。それから、ミクシィや任天堂との協業案件、日産自動車との自動運転プロジェクトの立ち上げを経て、2018年4月から執行役員としてシステム本部の本部長、2019年4月から常務執行役員兼CTOとしてエンジニアリングとものづくりの強化を担当しています。

僕のいるDeNAについて少し紹介します。2019年で会社創立から20周年を迎えました。我々はインターネットと密な関係にある会社です。

1999年にビッダーズというネットオークションのサービスと共に創業しました。その後、携帯電話発達していく中でモバイルオークションにシフトし、ソーシャルゲームプラットフォームのモバゲータウンを手がけ、現在は主にスマホ向けのゲームやソーシャルLIVEサービスPocochaやSHOWROOMなどを提供しています。

最近では2011年から参入したプロ野球「横浜DeNAベイスターズ」に代表されるスポーツ事業をはじめ、2014年ごろからヘルスケア事業、2015年からオートモーティブ事業などにも取り組んでいます。

少し話は変わりますが、産業革命は、輸送・通信・動力の3つが要素になっています。この3つが進化することにより、人間の生産性が上がり豊かになる。これが産業革命のロジックです。

輸送手段として蒸気機関車が、通信手段として電信網が、動力として蒸気機関ができたのが第一次産業革命。第二次産業革命では、輸送が自動車に、通信が電話に、動力が化石燃料に変わり、より人間の生活が豊かになりました。

そして今、第三次産業革命が起ころうとしています。テクノロジーの進化により、輸送が電気自動車と自動運転に、通信がインターネットとIoTに、動力が再生可能エネルギーに変わろうとしています。第三次産業革命はまだ道半ばです。これが成し遂げられるためには、インターネットのテクノロジーが重要です。

DeNAは横浜市と提携し、再生可能エネルギー、自動運転のような高度交通システム、住民に情報を提供するコミュニケーションネットワークを組み合わせたスマートシティ構想を進めようとしています。

法学部からエンジニアに転身

これまでの経緯を話すと、大学時代は法学部で行政法や労働法の勉強をしていました。法律の勉強は楽しかったのですが、もっと刺激的な仕事をしたいなと思い、当時インターネットが出てきて盛り上がっているタイミングで興味のあったソフトウェア開発会社に就職しました。

そこで4年間、eコマース(楽天やアマゾンのようなネットショップサービス)のシステム開発をしていました。簡単にいうと、下請けの開発人員です。自分のサービスを作っている感覚が全くなく、お客さんから言われたものを作って納品する仕事に虚しさを感じていました。

当時、仕事に必要な知識を身につけようと、いろいろな雑誌や書籍を読んでいるうちに、自分と同年代でもっとすごい人が世の中にいるのだなと気づきました。そこで自分も何かをしたいなと思い、オープンソースソフトウェア(ネット上に公開されている自由に使えるソフトウェア)を使い始め、自分でも発信する活動を個人的に始めました。それが就職して3年目です。

そのうちに、オープンソースソフトウェアの技術コミュニティに繋がりができ、そこで仲良くなった人に声をかけられ、社員25名くらいのベンチャー企業に転職しました。

この会社は自社のサービスを提供していて、自分が開発したサービスに対して愛を持つことができました。また、新しいテクノロジーを使って開発をしたり、オープンソースで公開する経験ができました。

4年経ち、もっと幅広くエンジニアリングをやりたいという想いから、誰もエンジニアがいないけれど自前のサービスを持っている会社に転職しましたが、経営層と意見の相違があり1年弱で辞めました。

そこで、「次どうしようかな」と考えていたときに、コミュニティ内のDeNAの方から声をかけられ同社に転職しました。

昔の考え方でいうと、「転職を4回もするなんて」と言われるかと思います。僕の頃は終身雇用で一つの会社に身を置いて、年功序列で賃金が上がっていくキャリア観が一般的でした。

けれど今は、情報があふれていて、様々なことに興味を持ち、自分でスキルを磨いてチャレンジができる世の中になっています。今日は、みなさんに「どうチャレンジできるのか」「どういうことをしていけるのか」をお話します。

活躍するのは「自分の頭で考えて、自分で行動できる人」

勉強だけの人は、世の中に沢山います。例えば東大や京大、こういった最高学府には入るのも大変だし、頭の良い人たちが集まっています。DeNAにも、そういう人たちが沢山います。

けれど、勉強ができる人が実社会でも活躍できるかというと、そんなことはありません。東大出身で有名企業に入ったけれど、活躍できずに埋もれていく人も沢山います。

では、「実社会で活躍できる人」はどんな人かを僕なりに、自分の経験から感じていることを話すと「自分の頭で考えて、自分で行動できる人」です。単純な話なのですが、これをできる人は少ない。

以前、東大のある教授と話したときに「東京大学の学生は採らない方がいい」と言われました。
「彼らは自分の頭で考えることをしない。まず「答えはなんですか?」と聞いてくる。答えを出すのは学生の役割なのに、答えを聞いてくるってどうかと思うが、そういう学生が多くなっている」という理由です。

世の中には答えのないことが多くあるので、自分の頭で考えて答えを探す必要があります。そのためのアプローチを考え、行動してみる。その行動が正しいか間違っているかはどうでも良くて、行動に移せるかどうかが重要です。間違っていたら違うアプローチを試せばいい。

「自分の頭で考えて、自分で行動できる人」が、僕の周りで活躍している人には多い。考えて行動できない人は、言われたままの仕事をするだけの人なので、そんなに活躍できていません。

一つ一つに疑問を持つ

学校の勉強は役に立たないとよく聞きます。普段勉強していく中で「これって本当に役に立つのかな」と思ったことはありますか。みなさんが漫然と授業を受けていたら、学校の勉強は全く役に立ちません。なんとなく知識として残っているだけになります。

「なんでこうなっているのだろう」「どうしてこうなのだろう」と一つ一つのことに対して疑問を持って取り組むと、単にやらされているのではなく、自分が興味を持って、それを知ろうという行為に変わります。そうすると「こういうやり方はどうだろう」「こういう考え方はどうだろう」という変化が起こります。そうすると同じ授業を受けていても、その後に自分に生かせるものとして残ります。

自分の頭で考える。授業を受けるときも「なんでこれをやる必要があるのだろう」とか「これをやるのだったら、こうしたらどうなるだろう」という疑問を持って取り組んでください。

知らないことばかりの世の中をかき分けて進む

もしみなさんが、スマートシティの推進リーダーになったとしたらどうしますか。みなさんはどんな行動を起こしますか。これは頭の体操だと思ってください。

例えばみなさん、ジェレミー・リフキンの「限界費用ゼロ社会」を知っていますか。これはインターネットテクノロジーについてグローバルで見ると当たり前の考え方です。けれど、日本ではこの考え方が弱くて、今後世界から遅れをとってしまう可能性が高い。

また、FIWAREというスマートシティ向けのフレームワークが欧州では標準規格になっていて、日本ではNECが推進しています。

こういうことって、僕も知っていたわけではありません。DeNAがスマートシティ構想を掲げ始めたときに僕も勉強しました。情報を仕入れるというところから始めて、今は知っています。

何を言いたいかというと、「世の中知らないことばかり」なのです。僕はDeNAに入って8年目、エンジニアとしても20年弱のキャリアですが、それでも知らないことが沢山あります。

「世の中知らないことばかり」という中で、自分の知らないことに対し、いかにかき分けて進んでいくか。これが重要になります。今後、みなさんが社会に出たとき、もしくは学校でプロジェクトに取り組んでいくときに、自分が知っていることをだけをやっていくのは学びも面白さもありません。「自分の知らないことをやる」ことが重要です。

「自分の知らないことをやる」。これは、「自分の頭で考えて、自分で行動できる人」でないと無理です。それができない人は絶対に、知らないことをかき分けて進んでいくことはできません。みなさんがどの会社に就職するにしろ、あるいは就職はまだ先だと思っていたとしても、もう既に頭の体操は始まっています。

普段の生活の中で「こういうとき自分はどうするだろうか」とか、全然知らない未知のことにぶつかったときに「どうやって自分はこれを乗り越えていくか」を考える頭の体操。これを意識して、突き進んで、行動する。これを繰り返して将来、就職して大きなプロジェクトをやるときに「知らない」にぶつかっても、自分でそれを乗り越えていける、その筋肉、体力を身につけてください。

それができる人が世の中で活躍できる人です。人間は怠惰な生き物なので「ちょっと難しいな」とか「面倒くさいな」と思うと、「明日やろう」とか「とりあえずいいや」と先送りにしがちです。そこを「とりあえずやる」というトレーニングをすることで動けるようになります。みなさん、今から「とりあえずやる」トレーニングを始めてください。

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