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「掌」#4/10の日記

ずーーっと積んでいた本を読みました。

今回は本の感想です。久々。
日記を出していない間にも、ちょくちょく本は読んでいるんですが、全然書けてませんでした。

今回書くのは「硝子の塔の殺人」です。ミステリーですね。去年の本屋大賞のノミネートですね。相変わらず本屋大賞好き。ミーハーなのでね。

前半は圧倒的自分語り。後半からネタバレありの感想です。

ミステリーかあ。。。

これ、もう一年近く積ん読で積んでました。どうにも食指が動かなかったんですよね。多分ミステリーだからです。

昨日の音声日記でも少し触れましたが、自分はミステリーは全くと言っていいほど読みません。なんでかは分かりませんが、ずっと試されている感じがあるからかもしれません。

「あなたは気づく?気づかない?どう?頭いいの?どうなの?その辺どうなのよ?」という圧を感じるんですよね。あと「いやそんなんありえんやろ」みたいなマジで野暮なツッコミをいれてしまうことがあるのも避けているポイントです。いろんな意味で自分と戦う必要があるんですよね。

だから、なるべく地に足ついたヒューマンドラマみたいなものを好んで読む傾向にあります。人間の嫌なところを出しながらも、創作なのできれいに着地する、みたいなザ・ハッピーエンドみたいなものが好きです。

創作の中でまで嫌な気分になりたくない。。。と思うからね。

作中でも触れられてますが、ミステリーは物語の特性上必ず殺人が起きます。如何なる理由があるにせよ、どれだけ痛快に事件が解決されるにせよ、人が死ぬのは事実です。それがやるせないんですよね。極悪人だとして、どうにも蟠りが残ってしまうんだよなという感じ。

なのになんで買ったのか、そして読んだのかというと、一年位前に友人に激推しされたからなんですよね。普段あんまりこの本すごい、みたいなこと言う感じの人じゃなかったけど、ものすごい推してた(わざわざDMくれた?みたいな感じだったかな)ので買いました。

んで、一年くらい積んでたんですけど、一昨日くらいから激烈な風邪をひいてすごく暇なので読んでみましたという感じです。

感想!!!!!ネタバレあります(マジで一応ね)

めちゃくちゃ面白かったです。なんというか、自分が本に求めるヒューマンドラマみたいなものは全然感じませんでしたが、単にエンタメとしてとても楽しめました。

明らかにこれ伏線だろうな、という霊能力者の発言とか、名探偵の本棚とか、とにかくたくさん散りばめられているものがぐわっと解決する感じ。気持ちいいですね。

個人的には、①名探偵が犯人、②普通に塔の人間の内一人、③実は神津島が生きていて全部仕掛けているのうちのどれかかなと思ってました。

いやはや。まさかその全てが正解だとは全くもって思いもよりませんでした。そのうちどれかなと迷わせて、全部でした〜〜〜としてくる感じ。一枚どころか百枚は作者が上手でした。完全に全部掌の上。実に痛快。面白すぎ。

ミステリーに造詣がなかったので、地下牢をみた時に「いやいや、、、え〜?でもミステリー小説では許容されるのか?」と思いました。が、許容されなかったみたいですね。さすがにね。

だって「はわわ〜こわいですう〜」みたいなキャラ付けのメイドが脅されてもないのに「実験動物」とか言って人間飼わんだろと思ってしまったもんね。

それもこれもぜ〜〜〜〜んぶ掌の上。くやし〜〜〜〜〜って感じですね。

トリックそのものが解けなくて悔しいとは思いません。砂糖を溶かすとか絶対思いつかないし、遠くがよく見える=クソデカレンズになっているとか荒唐無稽すぎるし。

だけど、めちゃくちゃ「作者すげぇ!!!」って思わされたのは、三日目の殺人で、被害者の遺体を窓から外から部屋に入れて密室完成させるやつ。これ、トリックがすごいと思ったんじゃなくて、自分が「トリックこうじゃね?(四日目をみて)ほらやっぱりね」となったんですよ。そして、それが最終日に「くそしょーもねえトリック(意訳)」と言われるところですよね。

ミステリを知らない自分でもわかるようなトリックを仕込み、「得意げになった?全部掌の上でーす」と言わんばかりの開示。かぁ〜〜〜!!となりました。ミステリってこういうのが面白いんだな、とわからされました。

ミステリーのうんちくみたいなものについても、小説が好きなら誰しもが知っているような名前ばかりで、まったくミステリーを読まない自分でもちょっとずつ楽しくミステリー史をかじれました。読んでみようかな、とも。

単行本刊行に際して送られた書評にもありましたが、作者に「この手のトリックを全部逆手に取って、全身全霊で小馬鹿にしてやろう」くらいの気概を感じました。

メタ的な視点を組み込む?組み込まない?くらいのあたりや、執拗に「邪悪な存在がいる」と騒ぐ霊媒師を見て、「これ実は邪悪な存在は読者のことなのでは?」と思わされました。実際、一切ミステリーを読んだことがない自分も、かなり読者=邪悪な視線と思って読んでました。これに気づいたのは、自分が舞台かじってたことがあるからかもしれませんが(脚本なんてほとんど造詣ないけど、、、)。

そうして、メタ的なことについてかなり読者に考えさせる。そして、本のタイトルに近いことを話させた上で、どーん!と第四の壁の存在を明確にする。「実はその壁、登場人物はやぶれてませ〜〜〜ん」と言わんばかりのトリック披露。

もう最後のものに関しては、トリックの披露というよりは、「こういう技法がミステリーにはあるんですよね」くらいのプレゼンを聞いてる感じでした。

だから、最後のワトソンくんと名犯人のシーンとかは、「別に主人公は生きていた方がいいと思うけど、名犯人は散った方が却って美しいのでは?」と思わなくもない。時代を終わらせるというメッセージがもし本当にあるのなら、散々利用したトリックとともに散る方がよかったかも。

ただ、「これからミステリーは新時代を」というメッセージなのであれば生きていく方が綺麗か。書きながら納得しました。

最後に水を差すようですが、書評の「高学歴ゆえの〜」みたいな文面とか、常人にはなかなか伝わりづらい言葉で書かれた感じがすげー苦手だなと思いました。多分慣れてないだけだろうな。ヒューマンドラマの書評はわかりやす〜く書かれているのが多いので。

ちなみに作者の経歴見たら慈恵医出身ってあってひっくり返った。医者じゃん。それも上澄みの医者じゃん。こら作者も「学歴が〜」とか言いたくなるわ。普段、あまり偏見を持たないために作者の経歴は文章の最後に読むようにしているのですが、今回もそれにしてよかった。最初に経歴読んでたら、主人公が医者なのも相まって筆者=主人公で捉えかねなかった。

とにかく面白かったです。
本屋大賞候補に外れなし!!!!

今回知った日本語

人を食った:あまり人として扱っていないような
ご相伴に預かる:人のおかげで食事などを共にする

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