どう「日本」を世界に売っていくか?
カテゴリーセッション:「海外拠点」
https://www.youtube.com/watch?v=AQKwHyW0dTc
【ホッシーのつぶやき】
日本は、これまで培った歴史があるから「信頼」されており、それが政府にとっても、ビジネスにとっても、強みになっていると再認識しました。
「ホンモノを伝える」と言うこだわりを聞くことが多いですが、「現地の人の好み」も入れて、アジャストして変わっていく。20年、30年と続いたものがホンモノと認識される。本当に良いものを提供して、信頼を持続させることが大切だと言うことを学びました。
小島 レイリ:羽田未来総合研究所 アート&カルチャー事業部長
アート文化で日本を売って行くような仕事に従事。
山田 彰:駐ブラジル日本国大使 ブラジルから参加 AM4:30
日本のポップカルチャーに精通、インバウンド観光にも注力。
土屋 大輔:Brunswick Group LLP. Partner ロンドンから参加
元外交官、日本の国際広報をしたいとイギリスのコンサル会社勤務。
河野 力樹:PT Omiyage inc Indonesia 共同創業者 インドネシアから参加 インドネシアのハーフとして生まれ、インドネシアで起業。
小島:「日本が海外からどのように見えているのか」について、皆さんからお聞きしたいと思います。
山田:「日本が大好き。是非行ってみたい」という外国人が多く、訪日したほとんどが「良かった、面白かった」と感動してくださる。観光の魅力だけでなく、「日本は安全で、清潔、秩序があり、親切だ」というところに感銘されています。しかし、まだまだ日本は「知られていない」ところもあります。
また、日本人が感じる日本の魅力と、外国人が感じる魅力には違いがある。例えば、日本の新幹線の時間の正確さ、浮世絵からアニメまでの文化にも魅力がある。日本は伝統的なものと最先端のものが日常生活の中で同居している。他の国ではあまり見られないことです。
土屋:外国の方へのサポートをする仕事が多いですが、時間やルールを守り、きちんと仕事をする「日本への信頼が大きい」。これは企業のみならず、日本人、日本政府にとってもメリットになっています。
20年前にイギリスに来た時と比較すると、文化が浸透したことを感じます。20年前は、寿司も分かってもらえない状態でしたが、今はスーパーでも売られ、よく知られています。
インバウンド観光でいうと、日本からイギリスに行く人より、イギリスから日本に行く人の方が多くなった点が大きな違いです。
河野:インドネシアは「親日的」な国の一つです。この5年ほどで日本食レストランが急速に増えており、インドネシア人は、インドネシア料理の次に日本食を食べています。自動車は99%日本車で、日本のブランドは信頼されています。また、五輪真弓さんの「心の友」がインドネシアの歌のトップ100に選ばれていて、日本を好きな方が多い。
私は、日本の企業とコラボして洋菓子を展開していますが、日本というだけでイメージアップに繋がります。しかし最近は、中国製や韓国製のものも増えており、少し信頼が薄れ始めているようにも感じます。
小島:「日本のイメージについて、最近、目に見えて変わってきた」と感じるようなものはあるでしょうか?
山田:私は、世界で親日的な地域は中南米だと思っています。6月18日は、「日本人移住の日」というブラジルの記念日で、日の丸がライトアップされていました。これまでに移住してきた日本人の努力の結果できた信頼感であり、身近にいた日本人から受けてきた感情だと思います。
小島:日本は海外に浸透してきましたが、海外進出で「もう少しここに気をつけてほしい」「これは注意した方が良い」というようなお話しをお願いします。
土屋:日本の商品やサービスは素晴らしいのですが、「良いことをすれば伝わる」「良いモノを作れば買ってもらえる」という感覚は、奥ゆかしいが故に損をしている面があります。例えば、国により食品規制がありますが、日本は「その国のルールに合わせよう」と努力するのですが、「既存のルールを変えよう」というスタンスは無い。また、「新しい仕組みを作る」時は、当然、失敗もありますが、失敗を恐れずに仕掛けた方が良いと思います。
河野:日本はローカルニーズが分かっていない。インドネシアに進出してきた企業も、短時間に理解したつもりにならず、インドネシアが求めているニーズやマーケットサイズを理解する必要があります。インドネシアへの企業進出も5年前の方が多かったが最近は減ってきています。日本のモノはハイコンセプトで価格も高いですが、現地の人が欲しいと思うような伝え方が必要だと思っています。
山田:100年前に、日本人があれだけチャレンジを重ねてきたから今があります。また、「良いモノは、使ってもらえれば分かってもらえる」のですが、サービスは、分かりやすい言葉で、ストーリーを伝えないと伝わりません。インバウンド観光は母国語で伝えるのが一番です。外国人への情報発信は英語等だけでは不十分だと思っています。大使館も努力しているのですが、それぞれの日本の立場の人が努力すれば、もっと伝わるようになります。
日本政府は、2017年から世界に3ヶ所(サンパブロ、ロンドン、ロスアンジェルス)に「ジャパンハウス」を立ち上げました。この「ジャパンハウス」は、日本の最先端のモノを発信する文化的な取り組みです。サンパブロではこの3年間の来場者数が200万人を突破しています。日本の文化、モノは、上手く伝えれば必ず伝わります。旅に関していえば、美しい景色、美味しい食事、優れた製品は勿論大切ですが、その背後にあるストーリーを伝えていくことが特に大切です。アニメの聖地巡礼もファンにとっては最強のストーリーです。
小島:日本の魅力を伝える時に「日本人が伝えるのが良いか」「現地の人が伝えるのが良いか」については、どのようにお考えでしょうか?
山田:日本人と現地の人が協力してやるべきです。現地の人が何に関心を持っているかは現地の人の方がよく分かっており、日本のことをよく分かっているのは日本人です。サンパブロの「ジャパンハウス」の館長はブラジル人で、日本人との共同作業で伝える努力をされています。
土屋:私も、ロンドンの「ジャパンハウス」の社外取締役をさせていただく中で感じるのは、いかに両方を組み合わせるかだと思います。「日本大好き」な方はどこの国にもおられますが、「日本大好き」な方だけではなくて、「日本に少しだけ関心がある」という人達に、どのように裾野を広げていくかがポイントです。ロンドンの「ジャパンハウス」の館長も「日本のエキスパート」ではなくて、一般的なイギリス人です。
河野:日本人にしかできないこともたくさんあり、現地の人にしかできないこともあります。インドネシアで日本のホンモノを買える人は収入面からも多くないので、ホンモノでなくても、とりあえずジャパナイズされたものも認めてあげて欲しいです。実際、多くの国でジャパナイズされたお店がありますが、その7割は日本人の経営ではないです。しかし、彼らの活動が日本文化を広げるのにつながっていると思います。
小島:「ホンモノ」を伝えたいとのこだわりや、それほど「ホンモノで無くても良い」について、現地にいる方の感覚をお聞きしたいと思います。
山田:「食」の場合、現地の食と融合して新しい食ができており、それが「自然」であり、私は否定しません。頭ごなしに否定すると相手のプライドを傷つけるので、いつかホンモノを食べる機会があれば、「是非ホンモノを召し上がってください」とお話ししています。
土屋:「ホンモノ」自体が変わり続けているという感覚があります。
イギリスも「和食ブーム」なのですが、日本人がなかなか進出して来られていないのが残念です。
「ホンモノに触れてもらいたい」と思うのですが、「現地の人の好み」も入れて、アジャストして変わっていくのが良いのかなと思います。
今、ロンドンでカレーブームが起きており「カツカレー」と言います。カツが乗っているわけではないのですが、「日本式カレー」を「カツカレー」と呼ぶのです。日本でも「明太子スパゲティ」があるように、ホンモノがどんどん進化していくのが良いと思います。
河野:「ホンモノ」って何だろうと思います。「洋食」も日本人が作った西洋食であり、海外にも進出されています。インドネシアもカレーが広がっており、これも20年、30年と残ったものがホンモノと認識されるのだと思います。私は、日本の方のほうが新しいものを作り出す力が強いと思います。
私は「ホンモノ」も大好きですが、「ホンモノでない」ものの進化も楽しみです。
小島:「日本を売り出す」という時に、「日本と海外がWIN-WINになる」ことについてコメントをお願いします。
山田:日本に来た外国人が「より日本を好きになる」事だと思います。大使館も、日本の友達を増やしていく事が使命だと思っており、それが日本にとって有利になるし、望ましい国際関係を生みます。
日本は、国際関係の中でも信頼されており、日本と仲良くすることは「日本のためになる」けれど、「あなたの国にとっても良い事」なんですよと説明しています。
土屋:山田さんのおっしゃる通りですが、また「トラブルになることを恐れない」ことも大事だと思います。
私は仕事柄、トラブルに巻き込まれることもありますが、「相手を怒らせたらいけない、ここは黙っていよう」と判断して、損をしてしまっているケースもあります。これまでの信頼関係があるので、「言うべきことはしっかり言う」ことによって、信頼関係を高めることができます。
イギリスが「EU離脱」の時、日本政府が日本企業の意見をまとめて、イギリス政府に送るとともに公表しました。一般的な意見ではなくて、「離脱するとこう言うことで困りますよね」など具体的な課題を提起されています。これは場合によっては「内政干渉」と言われかねないことでもあったのですが、「普段、物静かな日本が、これだけ声を上げている」と、イギリスではポジティブに受け入れられました。
河野:日本とインドネシアの狭間で生きてきて、日本のモノを進める時も、「貴方のためになりますよ」と伝えています。日本には良い価値観、モノ、文化がありますが、伝える相手・セグメントによって伝えるポイントが異なります。日本企業も、それを理解してビジネスすることがWIN-WINになると思います。
小島:現地で活動されてくる中で、現地進出する時に「自分たちでないとできないこと」「パートナーとして組む」と言う観点の話をお聞きしたいと思います。
山田:魔法の出口はりません。相手の組織や人によっても違うので一言では言えないですが、いろいろな人に当たってみてもらうしかないと思います。
土屋:企業から相談を受けることが多いですが、日本政府、相手国政府、企業などと「信頼できるネットワーク」を作っていくしかないと思います。
河野:1度や2度、会っただけで信頼関係はできるものではありません。現地にしばらく住み着いて、いろいろなコミットして、信頼関係は構築されると思います。
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