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野球でノーアウト1塁送りバントはありか、なしか~因果推論で考察する

今年になってから本格的に勉強始めている因果推論。

岩波データサイエンティストのVol3に傾向スコアの使い方のケースで野球のメジャーリーガーで、ノーアウト1塁で送りバントをした方が、しなかった時よりも得点が入りやすいかを確率的に考察されている内容が面白かったので自分も考えたいと思います。
(2006~2014年 4233場面中、1038場面でバント 9年間でこのケース数なので、全件なのかどうかはよくわからず。感覚的には少ないような。)

因果推論

因果推論とは、ある施策(処置)が結果に対してどれくらいの影響を与えているかを推論する方法です。パール派とルービン派があり、勉強していたのは、ルービン派でした。

施策の影響を見るための理想は、各人ごとに、施策ありと施策なしの結果を比較した結果を集めることですが、往々にしてどちらもというのは難しい。そのため、施策を受けた人達の結果の平均と受けていない人たちの結果の平均の差を見ることで施策の影響を見る方法です。ここで、重要なポイントは、施策を受けた人たちと受けていない人たちが逆の立場になったときに、逆の結果になるかどうか。つまり、施策のあり、無しだけで結果を比較できる組み合わせになっているかというものです。

ケーススタディ

今回のケースの結果としては、なんの調整をしなかった場合、バントしないほうが10ポイントほど得点の確率が上がる結果でした。

ただ、それがそのまま受け入れられるかという話です。例えば、考えられるつっこみとしては、送りバントをしたくなるケースは1点を争っているケースが多く、攻守ともに緊張感ある戦いをしていることなどから点が入りにくいみたいなことが言えてしまいます。

そのため、条件を合わせたうえで比較することでそのギャップを減らしていく方法が考えられました。ケースごとにマッチングをする方法などがありますが、関係するケースが多い場合にはマッチさせることが難しくなります。また、回帰分析などで調整しようとする場合にも変数が多くなりすぎるとマッチングがうまくいきにくくなります。

解決策として、施策以外の変数(共変量)をインプットに、結果とのロジスティック回帰を使い、施策が実施される確率を傾向スコアとして調整する方法が考えられました。傾向スコアをどう使うかは何パターンかあります。(今回は割愛)

今回は、以下の項目を共変量(送りバントをするかどうか、得点が入るかどうかのどちらにも影響を及ぼす特徴量)を傾向スコアとして、調整したうえで得点の入る確率の比較からどちらが良いかを考えています。

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傾向スコアでの結果

そこで、傾向スコアで調整された結果を見ると

①全体としては何とも言えない。
(ATE:平均的な処置効果としてはプラス(バントしたほうが得点が高い)と出るが、95%優位水準で推定すると、プラスからマイナスまでにわたるため、このケースではどちらともいえないという結論になる。)

②バントをしたケース(ATT:処置群の平均処置効果)では、バントをしないほうがよかったといえそう。 (95%信頼区間で常にマイナス) 

③バントをしなかったケースでは、何とも言えない。(ATUはプラスだが、95%信頼区間ではどちらともいえない) となったそうです。

個人的考察

自分も野球は好きで、個人的に勝負所の送りバントはありだと思っている派なので、ケースとして入ってきやすかったのと、共変量的にこれでよかったのか的なところも含めて、考えていきたいと思います。

1、日米野球の違い
日本に比べてアメリカでは送りバントが日本ほど行われない印象です。全件なのかわかりませんが、ケース数的にも。

9年で4000ケース。年間500で、メジャーリーグは30球団くらいあるので、15試合×150戦と考えると2250試合。 4試合に1回か。。それくらいですかね。

また、スポーツニュースで見たのですが、アメリカのバッティングのトレンドはゴロよりもフライを打つで、日本のたたきつけるバッティングとトレンドが違います。(メジャーリーガーの早いバッティングスピードだと、斜め70度くらいにボールが当たると、回転で浮力がまし、遠くまで飛ぶとか。ニュースでは、メジャー投手の菊池雄星選手がインタビューで、日本はたたきつけにくい低めが重要だったが、アメリカではそれが狙われるので、高めが重要みたいな話をしていました。) 

この考えを一般的なものとして考えると、アメリカのほうがゲッツー(一度に二つアウト取られる)の可能性が低いことになるのではというのが一つ目の考察です。

併殺打率というものが、投手の共変量に入っていますが、ここがアメリカのほうが低いので差が出にくいとかあるのかなという思いです。(日本人的感覚として)

2、バントしないときのゲッツーのインパクト

その理由として、実は勝負どころの送りバント最大の効果はゲッツーを取られにくくすることだと思っています。ノーアウト1塁からツーアウトランナーなし。そしてチェンジになると、どうしても試合の流れが悪くなり、結果として失点のチャンスを与えてしまうのではないかと。ピッチャーも急に準備しなくてはいけなくなりますし。

負けないための送りバントの価値というのもあるのかなと思いました。

3、点が入るかと勝利の関係

というわけで、結果が得点率になっていましたが、その試合の勝率みたいなところで結果を見るのも面白そうだなというのと、やはり、見慣れている日本のケースで同じ検証をしてみたいと思いました。

詳しくはこちらの本に書いてあります。

https://www.amazon.co.jp/gp/product/4000298534/ref=as_li_qf_asin_il_tl?ie=UTF8&tag=masaru3fighto-22&creative=1211&linkCode=as2&creativeASIN=4000298534&linkId=dfcb985767aeb04a4804db99b6a8584a


また、これを書いている間に、野村監督死去のニュースが。

スポーツニュースでのコメントが面白かったので本当に残念です。北海道民んとしては、マー君を育ててくれた人として、巨人ファンとしては、松井選手に対する執拗な投手交代など監督として面白い野球を見せてくれた印象でした。心よりご冥福をお祈り申し上げます。


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