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天彦九段の将棋イベントからの『盤上に君はもういない』を読んで

小説家の綾崎隼さんの将棋小説『盤上に君はもういない』を読みました。読み始めた理由は、このイベントで綾崎さんの作品にすごい興味を持ったからです。

このイベントに参加した理由は、もちろん、佐藤天彦九段のお話を聞きながら、将棋で強くなるヒントをもらえればと思って参加していたためです。が、綾崎さんの将棋界の知識量も豊富で天彦九段の言葉を引き出す質問がこの会を非常に面白く盛り上げてくれました。

その中で、天彦九段が綾崎さんの作品は入り込み過ぎないので読み切れるのがいいという話をしました。その理由を知りたくてこの本に手を伸ばしたのです。(3段リーグは魔のリーグと呼ばれるほどしんどいものらしくて、棋士の人は入り込むと逆につらくなるらしい)

この本は、章が変わるごとに主人公になる人が変わっていく小説でした。ちょうど感情移入したくなるくらいに章が終わる構成になっている気がしました。そこが、入りすぎないポイントなのではないかと考えています。

とはいえ、一つのメインストーリーに話が収斂していくながれで最後はおおーとなるストーリーでした。最初のうちは一つに収斂していくのかわからないところがあるのですが、それが徐々につながっていき最後にすべてのピースがつながるところが非常時面白い作品でした。

自分はこの小説。ミステリーだと思います。タイトルからわかる通り、誰かがいなくなるんです。タイトルに「君はいない」とあるように、誰かがいない、もしくはいなくなるはずなので、あれ、この人がいなくなる人なのかと勘繰りながら読み進めていくのです。このバランスがうまい。
いろいろなものがつながって一つの作品として完成するこの本はまさにミステリーを読んでいるような読後感になります。

動画の中でもわかるように、奨励会の3段リーグを女性が突破し、初の女性のプロ棋士が生まれるというお話です。藤井5冠のようなすごい若者も登場します。将棋がテーマになっていますが、細かい棋譜(どのように駒を動かしたかをまとめたログのようなもの)が出てきたりしないので、どんな人でも楽しめる作品になっています。

ぜひイベント動画もご覧になってほしいと思います。将棋好きな人は特に。
天彦九段がおっしゃっていた盤上合理性と相対合理性という考え方を用いると将棋にも運が入り込む余地はあると考えているといったあたりのお話は将棋好きなら思わず納得するところではないでしょうか。

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