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上沼恵美子さん

前回の原稿では、いつも出演させてもらっている読売テレビ・中京テレビ「クギズケ!」のことを綴り、その中で高田純次さんのことを書きました。

そして、紙幅の関係で、上沼恵美子さんに関しては次回に持ち越し。

別にあざとくしたわけではないけど、一度やってみようと思い立ち、いわばクギ&ズケ!みたいな、その構図をやっただけだよ。

やおら「香水」の替え歌風に原稿を始めてみる、高田純次さん的テキトー世界観によるウォーミングアップも済んだので、色気たっぷりに羽織を脱いで噺に入る先代桂春団治さんのように本題に入りたいと思います。

昨日も「クギズケ!」の収録がありましたが、この番組の収録はいつも本当に楽しい。そして、本当に疲れます。

僕にとって、その理由は明白です。

テレビの脳とラジオの脳、2つを同時にフル回転させているからです。

テレビ番組ですので、モニター画面を説明したりする“段取り”もあります。コンパクトに与えられた役割をしっかりと果たしていく。これはこれで馬力の要ることです。

一方、扱うニュースなどは定まっていても、上沼さんがそれをどう料理されるのか。もしくは、どんなドリブルから、どんなシュートを打ち込むのか。それは、1秒前まで分かりません。

そんな中で、芸能ニュースなんて関係なく「で、中西さんの家ではどうなん?」と尋ねていただく時もあります。

ここでお答えする際には、実は、テレビ的な話ではなく、ラジオ的な話が求められる。

もう少しかみ砕くと“ウソやごまかしのない話”しか成立しない。僕はそう捉えています。ここで使うのはラジオ脳です。

テレビでありながら、ラジオのように話す。

広い守備範囲を、僕のような一般人が走り回ると、それは圧倒的な疲弊感にたどり着くのだろうと我がことながら分析しています。

そして、そのあたりの領域といろいろつながっているのか、上沼さんご自身、とてもラジオを大切にされています。

ABCラジオで40年近く続いている「上沼恵美子のこころ晴天」では毎回3時間、生放送でしゃべりっぱなし。

もちろん、元来の圧倒的な才能。これが何よりだとは思いますが、天才がずーーーーっと研鑽を続ける。

その結果、何が起こるのか。

65歳にして、マスターズリーグではなく、現役バリバリとして155キロのストレートを投げる。そんな超常現象が起こります。

忘れられない瞬間があります。

2018年の「M-1グランプリ」。

大会後、出場者が酒に酔った状態で行った動画配信で、上沼さんを揶揄するような発言があり、それが大きな騒動になりました。

騒動から数日後に収録された「クギズケ!」には大きな注目が集まりました。読売テレビの周りには多くの報道陣が詰めかけ、物々しい雰囲気が漂っていました。

番組にお世話になって、その時で数年経っていましたが、そんな空気の中の収録は間違いなく初めて。

そして、もう一つ断言できるのが、その日の収録は、爆発的に面白かったということです。

上沼さんが投げるのは全てど真ん中の160キロストレート。

思いもよらぬ形で巻き込まれた騒動。

そこから派生する世間のあらゆる目。

そういったものへの無言のメッセージが火の出るようなストレートに込められていた気がしました。

そして、僕が心の底から震えたのは番組の最後でした。

出演メンバーと飲みに行く話になり、ゲストの若手漫才コンビ「祇園」が「今度、飲みに連れて行ってください!」と上沼さんにリクエスト。

それに対し「ぜひ!ぜひ!」と笑顔で答えつつ、そこからサッと声のトーンを変えて「でも、若い漫才の方のグデングデンは嫌い!」と切り捨て、スパッと番組を締めました。

剣豪に斬られると、斬られた側が気づかない。そんな逸話は歴史上の話としては聞いたことがありましたが、それを実体験した思いでした。

騒動をネタにする度量。

芸人としてのプライド。

圧倒的な腕。

鮮烈なオチをつけ、事も無げにスタジオから出ていく。心を震わせるなという方が無理な話です。

お仕事でありながら、毎回、あらゆる財産をもらってもいる。

なんとも、有り難いお話です。

そして、お出しいただくお弁当が、まーーーーー、ゴージャス!

そのお弁当を持ち帰って、僕のフェイバリットメニュー“弁当チャーハン”にした日には、弁当チャーハンをおかずに、白飯がかき込めるほどのクオリティーです。

全方位的に、感謝、感謝の46歳。

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