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井戸端プロレス/私/Cocco

学校の帰り道
JAの駐車場に人だかり
囲まれた中央にリング
おばさんとおばさんが
デスマッチ中らしい
片方は赤い三つ編み
もう片方は短髪
片方は長ネギを持ち
もう片方はゴボウを束にして
取っ組み合い
つかみ合い
目を腫らして
鼻血流して
真剣(?)勝負

私もあんな風に
ぶつかり合える性格なら
いいのだけれど

それにしても
こんなことしてて
警察沙汰にならないかと
思ってたのは勘違い
パトカーが何台か止まってて
一応の警戒体制
何かに備えて
後ろに手を組んだ警官達

観衆が沸く
赤いおさげ髪が
引っ張られ
ハサミで切られようとしている
セコンドは青筋を立てて
レフェリーにまくしたてる
首を横に振る
スキンヘッドのレフェリー
夕日が照り返して
頭頂部がピークに神々しい
パツンと
おさげが切られると
観衆は絶叫する

気まぐれで自傷した私
教室で誰かが笑うだけだった
私もリング上でカットしたら
歓声を浴びることができるのだろうか
いやいや
そんなわきゃーない

おさげ髪の逆襲
嫌がる短髪を
ロープめがけて走らせる
そっちだけロープの色が違うな
瞬間
閃光と火花
これぞデスマッチ、、、なのか

何かを通り越して
泣くことすらできない私
未来なんていらないと想ってた
言葉にならない毎日
けれど
帰り道のにおい
その優しさだけで
生きていける気はしてる

レフェリーが
カウントを取り始めた
私は3つ目のカウントを聞く前に
白いヘッドホンをつけて立ち去る

今日はとても
晴れた日だったな

今のところサポートは考えていませんが、もしあった場合は、次の出版等、創作資金といったところでしょうか、、、