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桃源郷ヤィヤィヤ

かあさん
僕は旅に出た
見知った街から
見知らぬ街へ
見知らぬ街から
未詳の街へ

アテもなく
飛び出したわけじゃない
歳が歳だし
そんなことは言えやしない
だけど
アテらしいものはすぐに枯渇して
小さな想定外の連続に
いつしか希望を失う時が来る
そんなことはわかっている
ホントにわかっている?
わかっているって
どういう状態かわかっている?
自問自答を繰り返すたび
天使は悪魔に
悪魔は魔王に成り変わって
鼓膜を薄く削いでいく

かあさん
とうさんは元気かい?
かあさん
破天荒な兄貴は
まだ胴体に首が付いているかい?

それぞれがそれぞれの人生を
各々の方法でコツコツ散らかしていく
それが家族としての幸せだと
言い聞かせるように進んできた

もうダメだと思っても
地面は針の山
先端恐怖症の僕でなくても
誰人もこの道では
座って休むことはできない

かあさん
かあさんが火山灰に埋まる前に
僕は地球の公転速度
少しでも上げて
灰を減らしたい
減らすよ
確実に

ああ
隣街だって大変だと聞いたさ
犬も歩けば born this way
猫に bitcoin
馬の耳に HERMES
人が人だと思われてないんだって

かあさん
随分遠くまできた
(もしかしたら
そういう気がするだけで
堂々巡りで
未だスタートラインかもしれない)

街の灯りが
地平線上
まばらに瞬く

未詳の街は
未満の都市で
未開の土地から
未来のガスが噴き出ている
吸ったら死ぬかもしれない
だけれど僕は
ファーストペンギン
飛び込んだ後には道ができて
セカンドライオンと
サードヌーが
皆を連れて夜行する
宴と祭は線引きしない
主旨とプロセスは
混ぜて練り上げる

かあさん
僕はね
桃源郷の開拓者

ある人には
旗を振るように見えて
別の人には
剣を振るように見える
癖のある人には
ほうれん草に見えるし
パンダには
笹に見える

そうさ
それぞれが見てる世界で
見たい物
見えるべき事でいい

ガスマスクを外して
服を脱ぎ
これまでにない皮膚呼吸
極端に短い足で地面を蹴り
バランスの悪い大きな羽根で
範を示して宙を舞う
伸身宙返りの途中
時が止まってしまったとしても
入り組んだ時間の矢を
皆が願う方向へ束ねて飛ばし
つま先立ちで着地する

かあさん
その時のポーズはきっと
渾身の一発ギャグ
後からジワジワくるタイプ
きっと笑ってね
きっと笑ってよ

今のところサポートは考えていませんが、もしあった場合は、次の出版等、創作資金といったところでしょうか、、、