見出し画像

お元気なうちに,早めの事業承継対策を

 皆さま初めまして。弁護士・中小企業診断士の正岡です。初投稿ですので,温かい目で読んで頂けるとありがたいです。
 この記事では,事業を後継者に承継するために,早めの対策が必要だということをお伝えします。

➀承継と判断能力


 後継者の方から,「父(母)が持っている会社の株式や事業用の土地建物の名義を自分にしておきたいのだけど,どうすればいいか。」といった相談をお受けすることがあります。
 よくお話を聴いてみると,会社の株式や事業用の資産を持っている方が入院していたり,介護福祉施設に入所しておられることがあります。なかには重度の認知症になっていて,ご自身で判断する力がないと思われる場合もあります。
 判断能力がない場合,その方が契約などをしても無効となってしまいます。例えば,その方に,株式を後継者に贈与する契約書を書いてもらったとしても無効なのです。判断能力が回復しなければ,遺言書の作成もできません。
 つまり,経営者の方が,事業承継の対策を行わないうちに判断能力を失った場合,承継の対策は難しくなってしまいます。法定後見制度を利用することも考えられますが,後見人は判断能力を失った人の財産を守ることに重点を置く傾向にあり,会社や後継者の利益も考慮した柔軟な対策をとるのは難しいのが現状です。

➁判断能力のあるうちに対策を行えなかった場合のリスク


 もし,承継の対策を行えないまま経営者の方が亡くなってしまうと,後継者とその兄弟(姉妹)が,株式や事業用資産の相続でもめることもありますし,株式や資産が分散してしまうリスクがあります。
 また,事前に対策をとれば抑えることのできたはずの相続税の負担が生じることもあります。
 したがって,経営者の方がお元気で,判断能力をしっかり持っておられるうちに,承継の対策に取り組むことが大切です。

③承継には時間がかかる


 事業の承継には,株式や事業用資産の引き継ぎだけではなく,それに伴う税金の対策をどうするか,後継者をどのように育てるか,後継者を支える人材をどのように配置するか,取引先や金融機関との関係をどうやって引き継いでいくか,承継前に事業の課題をどう解決するかなど,取り組むべきことが多くあります。
 これらを計画して,一つ一つ実行していくとなると時間がかかります。
 私の個人的な考えですが,現経営者が承継を決意して,実際に後継者に事業を引き渡すまでに5年間は準備期間が欲しいと感じています。
 なお,中小企業庁が発表している事業承継ガイドラインの11頁から12頁には,以下のような指摘がなされています。

「後継者の育成期間も含めれば、事業承継の準備には5年~10年程度を要することから、平均引退年齢が70歳前後であることを踏まえると、60歳頃には事業承継に向けた準備に着手する必要がある。」
(中小企業庁・事業承継ガイドラインより引用)
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/2016/161205shoukei1.pdf

④まず取り組むこと

 「承継対策に取り組みたいけど,何から始めたらいいか分からない。」という経営者の方は,まずは後継者や家族と承継に向けた話し合いをしてみてはいかがでしょうか。承継の時期や方法だけでなく,事業の状況や今後の方針などについても話し合うと良いと思います。
 また,弁護士や税理士,中小企業診断士などの専門家に相談することも有効な方法です。
 相談相手に迷う場合には,事業引継ぎ支援センターに相談してみると良いと思います。事業引継ぎ支援センターは国が各都道府県に設置した機関で,事業の承継のお手伝いをしてくれるところです。私のいる大分県にも,大分県事業引継ぎ支援センターがあり,親身になって相談に乗ってくれます。

⑤まとめ


 最後に,お伝えしたいことをまとめますと,
・経営者がお元気なうちから,事業承継の対策に取り組むべき
・まずは後継者や家族と承継に向けた話し合いをする
・専門家や事業引継ぎ支援センターに相談してみる

ということです。
 この記事が少しでも皆さまのお役に立つと幸いです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?