東日本大震災でスナメリが減った

Shirakihara, K., F. Nakahara, M. Shinohara, M. Shirakihara, K. Hiramatsu and T. Irie. 2019. Abundance decline in the narrow‐ridged finless porpoise population off the Pacific coast of eastern Japan. Population Ecology 61:325–332.


仙台湾から東京湾にかけて生息するスナメリは一つの個体群とされている。このスナメリを対象に東日本大震災後の2012年に航空機による目視調査を行い、結果を2000年に行われた同様の調査と比較した。
その結果、平均で2000年に3400頭だったものが1491頭と推定誤差を考慮しても有意な減少が生じていた。その減少は特に福島県以北で顕著で、津波による直接的な死亡と生息地の撹乱が要因と考えられた。
今回を含めこれまでの何回かの調査でも塩屋崎周辺にはスナメリの発見がない。このことと、これまでの遺伝的情報は、東北と関東の間で個体群が分かれていることが強く示唆された。

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東日本大震災が野生哺乳類に及ぼした影響をきちんと評価できた数少ない研究なのではないだろうか。これが可能になったのも、これまで繰り返し同じ方法で目視調査がなされてきたからだ。地道なモニタリング調査がいかに重要か、こういうときに明らかになる。
2000年の調査は私たちが行ったものなので、その時のことが思い出される。福島の原発のすぐ近くにスナメリがたくさんいた。それが2012年には全くみられなくなっている。仙台湾では少ないなりにも見つかっているので、何か原発との関係を勘繰りたくもなるが、原発事故の影響よりももともと生息適地が狭かったということが原因かもしれない。
今後、環境の回復とともに、スナメリの数も回復するのだろうか。引き続き定期的に調査がなされることを期待したい。

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