見出し画像

【感想】ランス美術館コレクション 風景画のはじまり コローから印象派へ

風景画は画家が眺めた世界を描いているのであって、風景を写しているわけではないというのを改めて感じる展覧会でした。(制作経緯、解説など詳しいわけではないので、あくまでも個人的な感想です。

新宿のSOMPO美術館で開催中の企画展『ランス美術館コレクション 風景画のはじまり コローから印象派へ』には、現在改装中のフランスのランス美術館所蔵の作品が来日しています。事前のチェックはしていませんでしたが、猛暑のまちなかを避けるように、ネットから時間指定のチケットを購入し、思いつきで向かいました。

さて、ポスターを飾っているのは、展覧会のタイトルにも掲げられているジャン=バティスト・カミーユ・コローの「湖畔の木々の下のふたりの姉妹」。壮大な自然の中に佇む人々の構図は、古典的のような気もします。しかし、その中にストーリーを読み取る情報はわずかで、ただただ樹木の生命力に圧倒され、座って談笑する少女たちを包んでいて、それは守られているようにも、禁忌のテリトリーに迷い込んでいるようにも感じられます。そこから見える湖、空、遠くに見えるのは城壁でしょうか、確かにそこには外部とつながる道はあるが、姉妹が座るそこは影が落とされた別世界のようにも見える面白い作品でした。

この作品が制作されたのは、1865年から1870年ごろらしい。コローは1875年に78歳でなくなっているから、68~73歳ごろに描いたということになります。定年後の年齢で制作されたと考えると、エネルギーに満ち溢れすぎではありませんか?巧みな技術によるものなのか、芸術家がもつ制作への熱量によるものなのか、老いてなお往々にしてすごい作品を残す人がいるからアートは恐ろしい。会場にはこの絵を含めて18点のコローの風景画が並んでいるが、中には制作が1875年というものも。晩年も評価が高かったとされているが、こんなものを見せられては納得せざるを得ない。風景画オンリーの作家でないのだから本当にすごい。

そのほかこれは良いなと感じたのが、アンリ=アルピニー。描かれる情景はもとより、その地面の質感に目を奪われた。風景画を見て、岩のザラついた冷たさ、土の匂いを感じたのは初めてかもしれません。シスレー、ピサロ、ルノワールといった人気どころもきちんと鑑賞することができます。

会期は9月12日まで続き、予約制ということで土日もゆっくり鑑賞できそうなのでおすすめです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?