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『草むしりの哲学』匝瑳プロジェクト③

千葉県匝瑳市の、SOSA Project。
日常の忙しなさにかまけていると早くも3回目(初回不参加の僕は2回目)が来てしまい、またも片道2時間かけて匝瑳市に出向き、"My田んぼ"の世話をしてきた。

今回のアジェンダ

前回の田植えから2週間が経ち、5月で雑草も伸び盛りの時季。ということで、今回は草刈りが中心の1日に。お昼には新しい参加者の方の自己紹介タイムや、スタッフのまりりんさんの聴覚を紙芝居で紹介してもらう一幕もあった。

  • 苗間の雑草取り

  • 畦の雑草刈り

  • Extra: 薪割り

薪を割る: スクワットの応用が肝

今回感じたこと

「草刈りか〜、普通の作業になっちゃうのかなー」などと、行きの電車に乗りながら勝手に物足りなさを感じていたものの、またも田んぼのパワーに吸い込まれてあっという間に時間が過ぎ、たくさんの気づきを得ることができた。

無駄な命をつくらないということ

細長くないものが"雑草"

意外な発見でもあり、またいかに日頃自分が都市的な生活をしているかということに気付かされたことがあった。
それは、苗間に生えた雑草を引き抜いたあと、雑草をどうするのかという問題。

なんとなく、都会でのガーデニングや庭の草むしりだと、"引き抜いた雑草はビニール袋に入れてゴミに出して…"式に、雑草を「ゴミ」として処理してしまう気がする。僕自身も、草むしりの時はそうしていた。

一方で、今回のレクチャーでの指導は「抜いた雑草は苗間の泥の中にねじ込んでおけば大丈夫」というもの。
ほー、そんなラフな感じでいいのね、と思うとともに、自然や生き物に対する自分の視線の幼稚さも痛感した。

なぜなら、雑草は「稲を育てたい人間」にとって「邪魔な存在」であるだけで、そもそも稲と同じひとつの植物として、命を持つ存在であるから。また、仮に引き抜かれたとしても、死んでいき微生物に分解され土に還ることで、稲を含めた田んぼの生態系全体に影響を与えていける存在であって、「ゴミ」ではないからだ。

"異物"や"邪魔者"を排除し、ゴミとして処理しない。
あくまで自分と対等なひとつの命として、敬意をもって向き合い、手前勝手な人間の営みのために、"抜かせていただく"気持ちで手を入れること。失われていく命を無駄にせず、次につなげていくこと。

単に雑草取りひとつの作業をとっても、生き方や哲学に深い示唆を得られる。

(ちなみに、抜いた雑草や刈った草は土の上に敷いておくことで、土を日差しから守り、乾きから守ることができるらしい)

田んぼとマインドフルネス

苗の束とお揃い色の蛙

やや大仰な響きがするものの、心身をフルに投じて自然と向き合う農作業は、「今、この瞬間」に心身を集中するマインドフルネスと共通点が多いと感じた。

腰をかがめて水面近くに顔を寄せ、苗間に顔を覗かせた雑草を5本の指で掻き取る。
踏み締めることで泥の中に空気が送り込まれ、ぷくぷくと泡を立てる。
こちらの気配を察して、そそくさと逃げ出す蛙やおたまじゃくし、あめんぼ。

気づけば、西田幾多郎の言う「行為的直観」のように、世界がこちらに浸透してくる。五感も、脳も、思考も、すべては世界と一体化しているようだ。
普段は、自分の意思や行為を世界に投げかける、いわば「主体→客体」的だった流れが、いつの間にか「客体(世界、環境、全体と言った方が良いかもしれない)→主体」的な流れへと逆転しているのだ。

この瞬間は、かのフロー理論を提唱するチクセントミハイも脱帽だろう、何とも言えない没入感を味わえる。全身の毛穴から世界に溶け込んでいくかのように、世界と自分の融合に酔いしれることができる。
こんな一瞬が、毎日の生活に少しでもあれば、きっとほとんど全てのストレスなんて気にしなくなっちゃうだろう、と思いながら。

言うまでもなく、そんなひと時を楽しむ自分をメタ認知した瞬間から、その美味しさは溶け出していってしまうのだが。

どでか毛虫。何に変態するのか怖くなるほど。足元の池にはどでかおたまじゃくしも。 

今回学んだこと

今回もまた、自然にまつわるたくさんの事を知ることができた。こうして、山や野草のこと、自然や生態系のことに少しずつ詳しくなれると思うと、ささやかな嬉しさを感じる。こんなことを繰り返していった先に、「ヒッピーじいさん」とか「野生おじさん」とか言われる日がくるのかもしれない。まだしばらくは、お兄さんと呼んでほしいものだが…

  • ヒメジオン: 蕾を集めると食べられるらしい

  • こなぎ

  • いちょうごけ

  • ジャンボタニシ農法

  • 桑の実

桑の実: 黒く熟したものが食べ頃

さて、次もまた草刈り。他の参加者さんとの交流含め、今から楽しみだ。

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