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ZFCで遊ぼう No.2

神は「光あれ」と言われた。すると光があった。

ZFC公理2 「空集合の公理」
∃∅∀x(¬(x∊∅))

あ、∅なんて記号使っていますけど、別にaでもAでもなんでも構わないです。省略しないで、わかりにくく書けばこんな感じです。

¬(∀a(¬(∀b(¬(b∊a)))))

これは一応基本記号だけで書けるよーっていう確認です。上の式も下の式も全く同じことを言っています。
普通に
∃∅∀x(¬(x∊∅))
を読みます。

∃∅ 「空集合というものが存在し、それは」
∀x( 「どんな要素候補xも」
¬(x∊∅) 「空集合には属していない」
) 「という性質を持つものである」

要素候補をいろいろ持ってきましょう。1,2,♡,☆,わたし,...

何を持ってきても、それが属していないという集合です。つまり

{ }

これです。なにも入っていませんね。

こういう集合が「存在する」と言っています。

ZFCの一つ目の感動ポイントだと思います。何もないところから何もないというものを作ってしまった。何もないということができるという一つの概念が「ある」んですね。すごいです。

空集合の公理は我々に一つだけ具体的に集合を教えてくれます。これは宝物で、今作ろうとしている宇宙のなかの最も重要で基礎的で、すべてを作ることができるエネルギーです。まさに光ですよね。

神はその光を見て、良しとされた。神はその光とやみとを分けられた。
神は光を昼と名づけ、やみを夜と名づけられた。夕となり、また朝となった。第一日である。

もちろん創世記とZFCは何の関係もありません。ですから、この通りに追っていくのは無理があります。でも、なんとなく親近感がある感じがします。

さて、いま手に入れた空集合∅に0と名前を付けましょう。0から始めて数を作りたいんです。今はこんな宇宙です。

どうしましょう。0があるんだから、0を要素に持つ集合を作れないものでしょうか。

ZFC公理3 「対の公理」
∀x∀y∃A(∀k(k∊A ⇔ (k=x ∨ k=y)))

省略記号を多く用いているにも関わらず、( )の数が増えてきましたね。解釈はこうです。

∀x∀y「どんな二つの集合xとyからでも」
∃A 「次のような性質を持つ新しい集合Aを作り出せる」
( 「それは」
∀k( 「Aの全ての要素候補を考えたとき」
k∊A ⇔ (k=x ∨ k=y)) 「Aに属しているのはxとyのみである」
) 「という性質である」

いま、知っている集合は0しかないので、0二つから新しい集合を作ってみましょう。

x=0、y=0です。ここから、新しい集合Aを作ります。どのようなAかというと、
Aに属している要素はxとyのみである、すなわち、0と0のみである、ので、

{0,0}

という気持ちですが、外延性の公理より、これは{0}と等しいですね。

{0}

という新しい集合が作れました。今回は要素がちゃんと1個あります。空集合は要素が1個もなかったので、これは本当に新しい集合と呼べるものですね。{0}に1という名前を付けましょう!

次の記号たちはすべて同じ1を表します。
1
{0}
{∅}
{{}}
1は数らしく見え、{0}は1の要素が数で分かり、{∅}は集合としての性質が見えやすく、{{}}は最も初心に戻った、という感じですね。

もう少し「対の公理」で遊べます。
x=0、y=1としてみると、
新しい集合Aに属しているのは0,1のみとなり、

{0,1}

という集合が作れます。なんと要素が2つもあります!これを2と名付けましょう!

ここまでで数を3つも作ることができました。

0={}
1={0}
2={0,1}

このまま数をどんどん作っていきたいです。具体的には次のように作っていきたいです。

3={0,1,2}
4={0,1,2,3}
5={0,1,2,3,4}

・・・しかし、対の公理で作れる集合の要素は2つだけでしたから、3以降を作ることはできません。次回、和集合の公理にて、どんどん数を作っていくことにしましょう。

ここまでのまとめ。

0 = {} = ∅
使った公理:空集合の公理
1 = {0} = {∅} = {{}}
0の存在以外に使った公理:外延性の公理、対の公理
2 ={0,1} = {∅,{∅}} ={{},{{}}}
0,1の存在以外に使った公理:対の公理

続く

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