見出し画像

ZFCで遊ぼう No.3

ついに数0,1,2を作れたのでした。

ところで、なんの説明もなしに{}なんて記号を使っていますが、これはZFCの記号ではありません。(ZFCの記号は7つの基本記号と無数の変数記号のみなので)

たとえば、{}は

∀x¬(x∈A)

という式に登場するAの「解釈」

{{}}は

∀x(x∈A⇔∀y¬(y∈x))

という式(Aに属する集合は、どんな要素ももたない集合のみである)に登場するAの「解釈」です。

本来∀に「すべての」なんて意味はありません。ただ記号を読み上げる際にそのように読んでいるだけです。ただ、述語論理の公理で式をいじると、このような意味に見える、という感じですね。

「りんご」

という文字をみて、これ自体はりんごでもなんでもなく、ただ白地に黒い模様があるだけですが、りんごとして解釈できる、というような感じに似ているかもしれません。

では、一気に世界が広がる公理にいきましょう。

ZFC公理4 「和集合の公理」
∀A∃T(∀x((x∊T)⇔∃y(x∊y∧y∊A)))

これは少し構造が複雑なんですが、とりあえず読んでみましょう。

∀A 「どんな集合の集合Aからでも」
∃T( 「新しく集合Tを作ることができて、次のようなものだ」
∀x((x∊T)⇔ 「Tの要素は次のようなもの全てで、それのみである」
∃y(x∊y∧y∊A))) 「Aの要素である集合のどれかに属しているような要素」

例を挙げないと厳しいですね。集合の集合Aを考えます。
A={{1,2,3},{3,5,6}}
こんな集合から次のような集合を作れます。
まずAの要素を挙げます。(yの候補になります)
{1,2,3}と{3,5,6}
ここの要素である、1,2,3,3,5,6がTの要素になります。
T={1,2,3,3,5,6}={1,2,3,5,6}
最後は外延性の公理を使いました。

この和集合の公理は対の公理と組み合わせて使うと威力を発揮します。

たとえば、集合A={2,3}と集合B={0,1,4,5}から、集合{0,1,2,3,4,5}を作りたいとしましょう。
対の公理で{A,B}という集合を作ることができます。
{A,B}={{2,3},{0,1,4,5}}
です。そして、これに和集合の公理を使うと、
{2,3,0,1,4,5}
となります。外延性の公理より、順番を入れ替えてもかまわないので、
{0,1,2,3,4,5}
と作れるのでした。

対の公理で二つの要素を持つ集合が作れたのは、まさにこのためだったわけですね。そして、ついに、要素が3つ以上の集合を作ることに成功したのでした!よって、ついに、3={0,1,2}を作ることができそうです。

まず、2={0,1}を用意します(前回の記事で作った)。これは3={0,1,2}に近いですが、2が足りませんね。{0,1}と{2}を用意できれば和集合の公理で{0,1,2}を作れるのでこれを目指します。

2から{2}を作る方法は対の公理で見た通りです。2と2を要素に持つ集合{2}を対の公理で作ることができます。

空集合の公理で作った0を対の公理で1にして、0と1から対の公理で2をつくり、2から対の公理で{2}を作って、2と{2}から和集合の公理で3を作る。

このようにして3を作ることができたのでした。

3={0,1,2}なので、
{3}
と合わせて
{0,1,2,3}=4
を作ることができます。こうなれば、
自然数nに対して、その次の数nを
nと{n}の和集合
というように定めていけば、どんな自然数でも作りだすことができるわけですね。(ものすごく手間はかかりますが)

ところで、自然数(0も含む)を今次のように考えています。
0={}
1={0}={{}}
2={0,1}={{},{{}}}
3={0,1,2}={{},{{}},{{},{{}}}}
4={0,1,2,3}={{},{{}},{{},{{}}},{{},{{}},{{},{{}}}}}
5={0,1,2,3,4}
...
n+1={0,1,2,...,n}

なぜ、こんな考え方をするのでしょう?この考え方が自然数の性質を完璧に再現できている、という理由によるところが大きいですが、それ以外にも、非常に便利だから、というのもありそうです。

なぜ便利かというと、
a<b
は、
a∈b
と表現できるからですね。しかも、自然数nの要素の個数がn個になっているのもポイントです!

4={0,1,2,3}
と、
6={0,1,2,3,4,5}
を考えると、それぞれの要素の数はたしかに4個と6個になっていて、
4<6

4∈{0,1,2,3,4,5}
がたしかに成り立っています。

そして、ここまでで、自然数を順番に作ることができたので、足し算を考えてみることができそうです!それは次回!

ここから先は

0字

¥ 100

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

記事のお読みいただきありがとうございます。 即興演奏を通した様々な活動と、これからの執筆活動のために、サポートしていただけたら幸いです。