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ダイバーシティの先にある理想の日本

今回は今後日本がJapan As No1を復活させるために必要となるダイバーシティについて考えたいと思います。いつも通り、Why, How、Whatの考え方で整理してみました。

【1.Why~なぜダイバーシティが必要なのか?】

世の中ダイバーシティが必要と謳われて久しいですが、なぜダイバーシティが必要なのでしょうか?早稲田大学の入山教授は、イノベーションを起こすためだと話します。
世界は産業革命以降物質的には非常に豊かになりました。人間は慣れの生き物なので、物を提供するだけでは人が満足しなくなったことが根底にあると個人的には考えております。
現在のGAFAMはほとんど有形資産を有しておらず、時価総額の2割程度、8割は無形資産です。一方、日本企業の平均はこれとは逆で有形資産が8割、無形資産が2割です。時価総額の格差は一目瞭然。GAFAで日本全企業の時価総額を上回ります。世界が今求めているものは無形資産であり、無形資産が弱いのが日本衰退の根本原因だと思います。
無形資産とは目に見えない資産で、その多くがイノベーションから発生します。イノベーションを起こすためには、今ある「既存の知」と「別の既存の知」を新たに組み合わせることです。
すなわち、考え方の違う2つ以上のモノ(=ダイバーシティ)を組み合わせると新しいもの(=イノベーション)が発生し、これが無形資産となり、企業の価値を高め、最終的には国の価値を高める。だからダイバーシティが必要だと言われるのです。まずはこのwhyを押さえる必要があります。
whyを押さえた上で、ダイバーシティの種類(=How)を見てみましょう。

【2.How~ダイバーシティの種類】
 
【2-1.How No1~性別】
 
<日本の現状~女性の労働比率は高まったが、家事の負担が依然大きい>
 
リクルートの調査で、2021年1月に住宅勤務が可能な会社による求人数はコロナ前と比べて7.8倍、応募者数も4.6倍です。国交省によるとテレワークを実施する人の割合は2020年度に約20%と前年の2倍となりました。
総務省の労働力調査によると、女性の転職者数は2020年に272万人と6年連続で伸びました。テレワークという選択肢が増えたことで、女性の仕事観は大きく変化しました。仕事か家庭かの二者択一を迫られた時代は過去となり、生涯現役を求めて転職する女性は少なくないです。転職サイト「女性の転職type」の調査では、何歳まで働きたいかという問いに対して60歳以上が8割超、一生涯との回答も25%に上りました。
日本生産性本部が2021年10月に実施した直近の調査ではテレワーク実施率は2割で、2020年5月の約3割から1割近く下がりました。働き方の柔軟性が下がれば再び選択肢を狭めかねません。
働く女性は増えています。総務省の労働力調査によると、労働力人口の割合は1990年に30~34歳で52%だったのに対し、2020年には78%に高まりました。女性の労働参加率は2019年に日本は73%で、OECD平均の65%を上回ります。
2020年に男女共に最も多い就業時間は週40〜48時間で、男性で46%、女性で32%です。一方、次に多いのが男性が49~59時間(14%)に対し、女性は15~29時間(26%)、1~14時間(14%)となり労働時間に差があります。男性は1日8時間以上働く人が就業者の7割を占める一方、女性は4割で、非正規雇用が多いことが原因です。30歳前半の人口に占める正社員の割合は男性が74%に対し女性が44%。年齢が高まるほどこの差が広がり、40歳後半では男性が72%、女性が32%と倍以上の差があります。国際労働機関によると、労働時間の性別差は G 7で日本が最も大きいです。 
厚労省の調査で、女性が非正規社員として働く理由は「家庭と両立しやすい」(41%)でした。女性の常勤比率は出産前後で38%→25%に下がる一方、パート、アルバイトの比率は19%→42%と増加します。 
日本は2021年のジェンダーギャップ指数が156カ国中120位と先進国で最下位、賃金格差は22%でOECD 平均12.5%の約2倍です。
児童手当や保育サービスなど家族関係の公的支出も見劣りします。女性活躍を掲げながら2017年の GDP 比は1.6%と、OECD平均の2.1%、アイスランドの3.3%よりも低いです。
 
<PPP対象~ジェンダー先進国 アイスランド>
 
では、PPP(パクってパクってパクりまくる)対象であるアイスランドを見てみましょう。
アイスランドでは2009年、企業の女性役員比率を4割以上にする法律が制定されました。その結果、ジェンダーギャップ指数でトップになり、12年連続でその地位を維持し、女性の労働参加率も8割です。2018年には男女の同一賃金を証明するよう企業に義務付けました。
女性の管理職登用率が0.1ポイント上がると、ROAが約0.5%、生産性が13%高まり、登用率が15%を上回ると企業業績が明確に向上する傾向があります。
日本政策投資銀行は、特許資産の経済効果は男女混合チームの方が男性だけの場合と比べて1.5倍上回ったと発表しました。女性が加わることで多様性が高まり、発想力が豊かになり、男性も刺激を受けてより成果を出そうとすると指摘します。 
 
 
【2-2.How No2~年齢】
 
<ニューカラー層の登場>
 
IBMはオフィスで働くホワイトカラーでも、肉体労働をするブルーカラーでもない非伝統的な教育プロセスを経てテクノロジー分野で働く人を、ニューカラーと名付け育成に力を入れています。米コーンフェリーの調査によると、高度なスキルを持つ専門職は2030年までに世界で8500万人不足します。ニューカラー層は21世紀の働き手の主役となりえます。 
PWCの試算によると、2030年までにスキルギャップを解消すれば世界のGDPを5兆ドル底上げします。2年前倒しすれば6.5兆ドル増えます。鍵を握るのがリスキリングです。IPAの調査によると「リスキリングの実施も検討もしていない」と答えた日本企業は47%と、アメリカ企業の5倍に達しました。日本同様、急激な少子化に直面するシンガポールはリスキリングを目的に2015年から一人500シンガポールドルを支給するプログラムを導入し、約60万人が恩恵を受けています。
年齢によって、働き方の考え方も異なります。40代まではブルーカラー、ホワイトカラーという括りが一般的ですが、Z世代はニューカラーという考え方があります。ここにもダイバーシティがあります。
年齢の多様化は、様々な年代の人々がいることです。年功序列制の強い企業にあっては高齢者の村社会に陥りやすく、高齢者の視点は短期的になりがちです。リスクの大きいが飛躍のチャンスとなる設備投資は若者が中心となって進める必要があります。
 
【2-3.How No3 ~地理】
 
<日本人だけ経営の限界>
 
地理的多様性とは、国籍も含め、多様な人材がいることです。海外から人材を得ることで価値観が多様化し、人材だけでなく拠点の多様化を図ることの重要性も増しています。多様な拠点を維持するには多様な人材を採用することとなり好循環を生むと同時に、大災害などのリスクに強い経営を作ります。
GAFAMの他にもサムスン、スターバックスやマクドナルド等の多国籍企業はそうですが、基本的に現地のことは現地人にやらせます。なぜなら現地のことを一番分かっているのは、現地人だからです。ここには宗教、考え方、習慣、教育等も密接に絡むため、正直外国人が理解するのは非常に難しいです。日本企業は日本人を派遣して現地支配人を担わせますが、往々にしてこの部分に苦しみます。どうしても理解しがたい部分があるからだと思います。日本人だけで世界中をカバーするのは不可能です。むしろ協力体制を敷くのが必須です。
 
【2-4.How No4~時間】
 
<短期投資と長期投資>
 
資産運用の世界でも、個別株やビットコイン等短期的な利益を狙うサテライト戦略の他に、長期的に変わらないインデックス投資、分散投資等のコア戦略があります。時間という概念からすると、短期と長期というダイバーシティになります。
今日本が足りないものとして投資がよく挙げられますが、この投資も短期的な利益を求める投資(例:現有設備を最新設備にする)もあれば、今は全く利益に貢献しないが、長期的な利益を求める投資(人財育成、CO2ネットゼロ達成のための再エネ)もあります。これらも組み合わせて行く必要があると思います。
日本企業は1990年~2020年まで失われた30年と言われておりますが、私見として上記の長期的な投資をしなかったためと思っております。その結果、人財が育たず、現状を大きく変えるイノベーションを起こせる基盤を育てなかったことが、低成長の原因だと思います。
 
【3.What~日本のあるべき姿、理想の日本】
 
上記WhyとHowで理由と方法を整理しました。今後日本に必要なダイバーシティとして考えられるものとして、上記に挙げた「性別」「年齢」「地理」「時間」の他にもあると思います。これも様々な人が議論すれば、もっとたくさん出てくると思います。
 
ここで重要なのは、ダイバーシティはHowであり、What~日本のあるべき姿ではないということです。「ダイバーシティが必要だ」という論調はよく目にしますが、ダイバーシティをもって何をなしたいのかを書いている記事は多くありません。Whatは各人が考える理想の日本の姿になると思います。
 
自分もまだこのあるべき姿を思い描ききれていませんが、ぜひ皆様もダイバーシティを利用してどのように日本がなったらうれしいのかを考えて頂ければ幸いです。その議論の先に、本当の日本のあるべき姿が見える気がします。ぜひダイバーシティの先にある理想の日本を思い描き、実現しましょう!


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