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少子化対策はソフト面へのケアを!

<少子化の加速>

厚労省は2023/2/28、2022年の出生数が外国人を含む速報値で前年比5.1%減の79.9万人だったと発表しました。80万人割れは比較可能な1899年以降初めてで、コロナの影響で結婚や妊娠、出産をためらう人が増えたものと思われます。出生数は7年連続で過去最少を更新し、この3年間で10万人減少しました。
国立社会保障・人口問題研究所の人口推計では、出生数が80万人を下回るのは2033年でしたが、11年も前倒しになりました。ワースケースでの推計では2021年に77万人で80万人を割る想定でしたので、現実はワースケースに近いです。 

<婚姻数も減少>

婚姻数は2019年の60万組超から2022年は51.9万組と約10万組減少しています。日経の調査で『結婚はした方が良いと思いますか』の問いに、30代女性のわずか9%しか『そう思う』と回答していません。結婚が減っている理由は、『若年層の低賃金』『将来の賃上げ期待がない』『出会いがない』などが上位を占めています。婚姻数の減少は出生数減少に直結します。非正規労働者に従事する若者も含め、将来の生活への安心感を取り戻すことが必要です。 

<人口減も加速>

人口減も加速しています。死亡数は9%増の158万人で過去最多を更新しました。出生から死亡を差し引いた自然減も78万人と過去最大で、減少幅は2021年より17万人ほど広がりました。

<岸田政権の少子化に対する異次元対策>

上記の少子化に対して岸田政権の異次元対策では、『1.児童手当などの経済的支援の強化』『2.学童保育や病児保育、産後ケアなどの支援拡充』『3.働き方改革の推進』を3本柱としています。

『1.児童手当などの経済的支援の強化』は、日本の場合養育費等が賄えず子供を持つことを諦める夫婦もいるため、まずは育児の経済面を支援することで出産増を狙うという考えです。
『2.学童保育や病児保育、産後ケアなどの支援拡充』は、出産後にすぐに女性が社会復帰でき、将来も共働きができる環境を整えることだと思われます。
『3.働き方改革の推進』は、日本は賃金がこの30年間上がっていないことを考慮し、より生産性の高い業務の実施、成長分野への転職を含んでいると思います。

それぞれ各論としては正しいように思えるのですが、実態はどうなのでしょうか。まずは事実を確認したいと思います。 

<1-1.国の国富は過去最高>

内閣府は2023/1/20、国民経済計算年次推計によると官民合わせた国全体の正味資産(国富)は2021年末に3858兆円で、前年末に比べて174兆円増えたと発表しました。比較可能な1994年以降で最高で、住宅など固定資産の価格上昇が押し上げました。国富は土地や住宅・工場などに加えて、金融資産を含めた資産から負債を差し引いた総額を表します。家計や企業・政府といった各部門を合算します。 

<1-2.貧富の格差は世界中で拡大>

国際調査会社イプソスが世界29ヶ国の国民に最も心配な問題を質問したところ、インフレが1位、貧困・格差が2位となりました。人々がとりわけ強い危機感を抱くのは、生活に直結する経済情勢です。
国際非政府組織のオックスファムが2023/1/16に発表した報告書によると、2019年末からの2年間に世界で増えた資産の63%を11%の富裕層が握っています。上位1%の富裕層が得た資産は残る99%の獲得した資産の約2倍に上ります。10億ドル以上の資産を持つ富豪は、1日あたり27億ドルのペースで富が増えます。かたや1日あたり2.15ドル未満で暮らす極度の貧困層の割合は、2020年にほぼ四半世紀ぶりに上昇に転じました。物価上昇率が賃金上昇率を上回り、実質的に所得が目減りしている国々の労働者は17億人となります。

<1-3.現在も江戸時代と変わらず5公5民>

財務省は2023/2/21、国民所得に占める税と社会保障負担の比率を示す国民負担率が2023年度は46.8%になる見通しだと発表しました。
江戸時代は5公5民と言われ半分は年貢として幕府に納めていることを社会の教科書で習いましたが、現代も同じなのです。 

<『1.児童手当などの経済的支援の強化』に対する私見>

私見ですが、上記事実から分かることは日本の国富は過去最大なのにも関わらず、世界中で発生している貧富の格差が日本にも広まっており、2極化が進んでいることかと思います。高齢者に金融資産が集中し、若者が貧困になっているという現実です。また貧窮問答歌ではありませんがせっかく稼いでも半分は年貢として政府に持ってかれる現状から、将来に対する明るい未来が描けないことは昔も今も変わらないのかもしれません。 
結婚するタイミングに助成金を給付したり児童手当を多少拡充しても、結婚生活自体が苦しい、明るい将来が築けないということであればあまり子供を持とうという気持ちにはならないと思います。 

<2-1. 人口は首都圏に集中>

総務省は2023/1/30、2022年の住民基本台帳人口移動報告を発表しました。東京都は転入者が転出者を上回る『転入超過』が3.8万人となり、超過幅は3年ぶりに拡大しました。東京、神奈川、埼玉、千葉県の一都三県は10万人の転入超過で、前年比1.8万人増でした。日本人に限れば27年連続の転入超過です。地方の転入超過は大阪、福岡で、それ以外の県はほぼ転出超過となっています。2023年1月も同様の傾向です。

<2-2. 海外は出生減と回復の2極化>

韓国統計庁が2023/2/22に発表した韓国の2022年の合計特殊出生率は0.78と、前年の0.81からさらに低下しました。2018年に1を割り込んでから低下が加速し、OECD平均の1.59の半分以下、日本や欧米の先進国と比べても圧倒的に低く、OECD加盟国で最下位となっております。統計庁は人口推計などから2024年には0.7まで低下すると見込んでいます。2022年に生まれた子供の数は前年比4.4%減の25万人と、7年連続で前年を下回りました。出産年齢の平均は33.5歳で前年より0.2歳上昇しました。 
シンガポールの合計特殊出生率が2022年に1.05と過去最低を更新しました。政府は子育て支援を強化しているものの下落傾向が止まりません。晩婚化に加え高齢化で育児と介護を同時に抱える人が増えていることが、出生率低下の背景にあるようです。 

一方欧米はコロナ禍による出生減から既に回復しています。ドイツやフランス、ベルギーなど少子化対策が手厚い国は回復が早い傾向にあります。

<『2.学童保育や病児保育、産後ケアなどの支援拡充』に対する私見>

出生率が高いエリアは地方にも関わらず、人口は首都圏に集中する方向です。アフターコロナを見据えこの都市集中はさらに進むものと思います。状況はシンガポールに近い状況になるのではないでしょうか。 
シンガポールも同様に子育て支援を強化していますが、下落傾向が止まっていません。学童保育や産後ケア等の支援を拡充しても、人々が将来に対する不安を取り除かない限り、子供は増えないのではないかと思います。 

<3-1.転職者は増加傾向>

厚労省が2023/3/3に発表した1月の有効求人倍率は1.35倍と、前月比0.01ポイント低下しました。コロナ禍で2020年9月に1.04倍まで落ち込みましたが、直近は1.3倍前後で推移しています。有効求職者数は178万人で前月比+0.6%、有効求人数は256万人で0.1%減でした。物価高を背景に収入を増やそうと転職を希望する人が増え、求職者一人当たりの求人数を示す求人倍率が低下したものと思われます。
景気の先行指標とされる新規求人数は94万人と前年同月比4.2%増で、宿泊・飲食サービスの伸びが17%増加しました。就業者数は6600万人で前年同月比43万人増、完全失業者数は164万人で21万人減、非労働力人口は4160万人で65万人減、休業者数は219万人で30万人減でした。 

総務省が2023/3/3に発表した1月の完全失業率は2.4%と前月比0.1%低下し、2020年2月以来の水準です。

厚労省の一般職業紹介状況によると、2022年12月時点で求職者に対する求人数は飲食物、調理が3.2倍、接客が3.4倍と全体の1.3倍を大きく上回っています。訪日客に加えて全国旅行支援による押し上げ効果もあり観光地には活気が戻っていますが、待遇面が悪く離職者が戻りません。2021年の賃金構造基本統計調査によると、産業全体の所得内給料は月31万に対して、宿泊業は月26万、年間賞与は産業全体が88万でしたが宿泊業は28万に止まります。 

<3-2.転職後の賃金も増加傾向>

リクルートは2023/1/26、転職した後に賃金が増えた人の割合は2022年10月から12月で33.4%となり、集計を始めた2002年以降で最高だったと発表しました。

<『3.働き方改革の推進』に対する私見>

日本では終身雇用が昭和の前提でありましたが、令和の現在は転職することに抵抗がなくなってきていると思われます。自分が得意とする分野に転職する、今後伸びる業界に身を置くことで給与を上げていくと言う考え方が浸透して生きているのかもしれません。
人材の流動化は好ましい点である一方、将来の職に対する不安等は取り除かれていないため、将来賃金が上がるという確信が持てない以上、子供を持とうとするかどうかは疑問があります。 

<少子化対策は保険を利用する>

岸田政権の少子化対策は、現在のお金や施設等ハード面に施策が集中しており、根本的な問題である将来の不安への解消というソフト面への対策となっていないため、うまくいかないのではないかと思っております。

私が岸田首相なら少子化対策としてソフト面への対策を打ち出します。利用するのは保険です。保険は今保険料を支払っても何も返ってきませんし、何も提供されません。ただし将来、問題が発生したときにお金が支払われます。その保証があるから人々は積極的な行動ができるのです。生命保険しかり損害保険しかり、不測の事態に対して保険という商品がソフト面への対策になっています。

子供は将来に対する投資です。将来の不安があっては子供は生めません。だから保険で将来の不安を解消するのです。 

<北欧をPPPする!>

実際のやり方は北欧をPPPします。これは以下のNoteに記載してありますので、こちらを見て頂ければ幸いです。
▼YCS No124 ジェンダー平等、生産性向上が出生率増加への道▼
https://note.com/masanori1980/n/n2ffd1ee0e62c

▼YCS No99 目指すべき国はデンマーク▼
https://note.com/masanori1980/n/ne36fe40383e0

<年金制度を賦課方式から積立方式に移行する>

ジェンダー平等で生産性を向上させた上で、何かあってもフレキシキュリティーでリスキリングすることにより再出発ができるという保険を国民に浸透させ、それを実際に数字で示します。大切なのは実現性で、『実際にこういう状況になったらいくらお金が入ってくるから大丈夫ですよ』と数字で示すことが不安の払拭に繋がります。今の社会保険が保険として機能しないのは将来減額される、潰れるという不安があり、数字が信用できないからです。そもそも将来の補償額が変わる現在の社会保険は詐欺みたいなもので、保険としての機能がないと思われます。
社会保険を信頼される保険にするために、社会保険支出の5割を占める年金制度を賦課方式から積立方式に移行します。今の社会保険料は現在の年金支出に当てられているため、将来の自分の給付には当てられないのです。これが制度不信の根源だと思います。積立方式であれば、自分が払ったお金は自分の将来口座に入るため、補償額が減額される可能性は低くなり、制度として信用できるようになります。 
当然現在の年金世代に払う財源は確保しなければなりません。ただ30代以下の将来世代に対して積立方式を適用することにより、少なくとも30代以下の年金は確保されるということを示すことが少子化対策への一歩だと考えます。

<少子化対策はソフト面へのケアを!>

金額が保証されれば将来に対する安心が持てます。年金やフレキシキュリティーで将来に対する保険があれば、子供という将来への投資をしようと思う人が増えると思います。また、ジェンダー平等で共働き、育児、家事も平等ということであれば、女性の人の出産に対するネガティブなイメージも減ると思います。こういったソフト面へのケアが現在求められている少子化対策ではないでしょうか。 
その上で、以下のNoteで書いたように首相が重点投資する部分を明らかにし、将来像を国民に見せていくことが結果として明るい日本を描けるようになり、ひいては少子化が改善するのではないでしょうか?

▼日本に必要なのはエゴイストのFW▼
https://note.com/masanori1980/n/n31270bbaff6e


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