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中国の投資方法を真似よう

<中国が自然科学の最先端>
 
文科省科学技術・学術政策研究所が2022/8/9に公表した最新の報告書で、中国が研究者による引用回数が上位1%に入るトップ論文でアメリカを初めて抜き、総論文数、引用上位10%に入る注目論文の数とともに首位となり、自然科学分野の研究論文に関わる代表的な三つの指標全てで中国が世界一になりました。
中国のトップ論文の数は4744本で、アメリカの4330本を上回りました。シェアは中国が27.2%、アメリカが24.9%、イギリスが5.5%です。10年前のトップ論文の世界シェアはアメリカが41.2%、イギリスが7.6%、中国が6.4%で、中国は10年前の696本から約7倍となりました。 
 
<戦略的な人財投資>
 
中国が科学技術分野で急速な成長を遂げたのは、政府主導で戦略的に資金を出し、人材育成を進めてきたためです。中国共産党中央と国務院は2016年に発表した科学技術の長期戦略で、『2050年までに世界の科学技術強国になる』ことを目指しました。
スピード競争の科学技術研究では、トップダウンで予算投入や政策を迅速に進められる中国の政治体制が有利に働きます。中国の2020年の研究開発費は前年比7.5%増の約60兆円と、10年で約2.5倍に増えました。アメリカの研究開発費は世界トップの72兆円です。研究者数では中国が228万人と2位のアメリカの159万人、3位の日本の69万人を大きく引き離しています。
中国政府は2021年3月に定めた5カ年計画で欧米に比べて劣勢とみられる『AI、量子情報、半導体、脳科学、遺伝子、バイオテクノロジー』などの強化を掲げました。
 
世界銀行は2022/6/29、新興国でデジタル決済を使う人の割合が2021年時点で成人全体の57%になったと発表しました。人との接触を避けるコロナも影響し2014年の35%から大幅に増えました。インドではコロナを受けて初めてデジタル決済で商業取引をした成人が8000万人以上、中国でも加盟店でデジタル決済を使う人が1億人以上となりました。
 
<日本は人財投資が下手>
 
研究者による引用回数について、日本は20年前が4位、10年前が7位、最新の調査では10位と存在感の低下が続いています。論文数自体はそれぞれ333本、351本、324本でほぼ横ばいの水準、世界シェアは2%弱です。 
研究開発費や研究者数をみると米中に次ぐ3位ですが、特に人材育成に課題が多いです。博士号の取得者はアメリカや中国、韓国では2倍以上に増えてるのに対し、日本は減少傾向が続きます。日本政府は2021年度からの5カ年計画『科学技術・イノベーション基本計画』で、若手研究者の処遇改善や運用益で大学の研究活動を支える10兆円の大学ファンドなどを進めます。東京工業大と東京医科歯科大が統合へ向けた協議を始めています。 
 
帝国データバンクは2022年6月時点で、中国に進出している日本企業が過去10年で最低の1.2万社だったと発表しました。コロナ拡大前の2019年5月に比べ約1000社(7%)減りました。
 
<戦略をPPP(パクってパクってパクりまくろう)しよう>
 
戦後半世紀以上にわたってアメリカが世界の最先端を率いてきました。軍事のみならず経済、科学分野でのトップといえばアメリカでした。日本はそのアメリカに追随することで、世界第二位の経済大国の地位を獲得することができました。
現在は様々な面で中国が世界最先端となってきています。上記で掲げた自然科学分野のみならず、人口も世界一です。GDPも2028年には世界最大となる可能性が高くなっています。今後も中国が世界経済に与える影響は非常に大きなものとなるでしょう。 
 
私見ですが、尖閣諸島等の領土問題、台湾、一帯一路による債務の罠と様々な危険がはらんでいますので、アメリカと同様の付き合いをすることは難しいと思います。ただ一方で戦略的に投資を推し進め、必要な人財を確保し、世界第2位の経済大国に成るべくして成った戦略は真似すべきものだと思います。『人財投資が下手』と現状を認識した上で、人財投資が上手い中国を真似るというのが今考えられる上策ではないでしょうか。
 
岸田首相が内閣改造を実施してまだ数日ですが、出てくるものは旧統一教会との関係がメインで、トップダウンによる政策等はまだ見えてきていません。そのため通常であれば内閣改造後に上がる内閣支持率は改造前と同じぐらいで推移しています。
本来であれば内閣とは首相の戦略を実行するために必要な人材を大臣として据えるべきです。自民党内の党派争いの均等を図るべきものではありません。全員が協力してやって行くのは民主主義では大切ですが、時にはトップダウンで物事を決める必要があります。岸田首相がトップダウンで物事を決められるのでしょうか。今回の内閣改造を見て思ったのは、黄金の3年間を無駄に過ごしてしまうのではないかという不安の方が大きかったです。私の懸念が実現しないことを祈っています。 


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