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リスキリングのやり方

<日本政府のリスキリング支援>
 
岸田首相は2022/10/3、所信表明演説で成長産業への労働移動を促すリスキリング支援に5年で1兆円を投じる計画を打ち出しました。また2022/10/12に、人への投資について3本柱で進める方針を示しました。転職者や副業する人を受け入れる企業への支援制度の新設や、働き手のリスキリングに取り組む企業への助成拡大などを挙げました。
具体的には、有期雇用者等を正社員にする事業主に出す『キャリアアップ助成金』について増額などを検討します。また、企業で働く人のキャリアアップを目的とする転職を支援する仕組みづくりを掲げます。在職中のリスキリングから転職先探しまで民間の専門家に一括して相談できる体制を作ります。 
リスキリングの1兆円パッケージは就職後に改めてスキルを高めた人材が成長分野に移り、生産性を高めて賃上げにつなげる好循環を狙います。賃上げと労働移動の円滑化、人への投資という三つの課題の一体的改革に取り組むと説明しました。年功序列的な職能給からジョブ型の職務給への移行も含め、企業間、産業間での労働移動の円滑化に向けた指針を2023年6月までに取りまとめると発表しました。 
 
<転職者はコロナで減少>
 
厚労省は2022/9/6、転職や再就職などをテーマとした2022年の労働経済白書を公表しました。日本の労働移動の活発さはOECD平均の半分に止まってると分析し、生産性向上や賃金上昇に向け、働く会社や仕事内容を柔軟に変えることができる環境が大事だと記載しました。
コロナ禍となった2021年の転職者数は290万人と、2019年比で63万人減少しました。常用労働者数に対する転職者の割合を示す『転職入職率』はコロナ禍前が10%だったのが、2021年は8.7%まで低下しました。新たに失業した人と再就職した人の合計が生産年齢人口に占める割合は、日本が0.7%とOECD平均1.5%の半分程度です。
職業能力を自発的に開発する自己啓発をしている人は、男性正社員で2020年に43.7%と2012年の50.7%から減少、女性正社員も41.1%から36.7%に減りました。理由は『仕事が忙しい』『家事・育児が忙しい』が多かったです。
パーソルキャリアの調査によると、2021年に業種からの受け入れ人数が最も伸びた業種はコンサルティングで、前年比4割増でした。 
 
<リスキリングには時間がかかる>
 
リスキリングが効果を発揮し、社会全体で人材の再配置が進むのに5〜10年程度の時間がかかります。長年同じ職場で働いてきた多くの中高年労働者にとって、リスキリングで就職できる技能には一定の限度があるという現実も受け入れなければなりません。社会のセーフティネットを同時に整備しないと技術革新についていけない下層階級を作ることになります。 
日本製鉄はリスキリングを進める社員に対し、最長3年間の休職を認める制度を始めました。博士号の取得などを視野に入れた制度で、社員は大学院などに通いやすくなります。
 
文科省が公表した2022年度学校基本調査によると、大学院博士課程に在籍する学生は7.5万人で2年連続減少しました。修士課程を終えて博士課程に進学する割合は2000年に約17%でしたが、最近10年は常に10%未満です。人口100万人あたりの博士号取得者は、イギリスやドイツに比べて1/3です。
 
<リスキリングする時間を確保しよう>
 
リスキリングの重要性は叫ばれていますが、社会人は時間に余裕があるわけではありません。通常の仕事もこなしつつ、自分の能力開発に時間を当てなければなりません。さらに家庭や自分の趣味等もあり、時間が足りないのが現状です。 
政府の支援は補助金等お金の支援がメインになるものと思われ、時間は確保してくれないと考えた方がいいです。お金があったとしても時間がなければ実施できません。まずリスキリングを実行するにあたっては、各自が自分のリスキリングのための時間を確保することから始まります。
リスキリングは人生にとって重要なことではありますが緊急性を伴わないため、優先順位は後回しになり結局やらないことになります。自分にとって『重要かつ緊急』なものだと決断し、時間を確保することが第一歩です。 
 
<リスキリングする分野を決めよう>
 
時間を確保したら次にやるべきことはリスキリングする分野を決めることです。限られた時間の中で実施するには、分野を絞り込む必要があります。
自分の得意なこと、興味のあることでもOKです。もし分野が定まっていない場合は、政府が来年6月までに作成するパッケージに乗っかるのも一つだと思います。 なぜなら政府として成長分野と考える産業において活躍できる人を作るためのパッケージであるため、官僚としてはその分野が成長すると信じているからです。日本の官僚は今でも優秀です。何より政府のパッケージに乗っかれば助成金の対象となるため、お金の点では非常に有利になります。自分で選択できないのであれば、政府のパッケージに乗っかるのがいいと思います。
 
<継続して勉強しよう>
 
VUCAの時代において知識は急速に陳腐化します。この時代において生き残るためには、常にリスキリングを継続する必要があります。個人的には『生涯勉強』と思って続けられるかが一番重要かつ難易度が高いと思っております。ある種の覚悟です。決して気負う必要はありませんが、是非一緒に生涯を通じてリスキリングしていきましょう! 


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