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成人病予防の方法でCO2ネットゼロの達成を!

<パリ協定の達成は見えない>

 
国連気候変動枠組み条約事務局が2022/10/26にまとめた報告書では、各国が目標通り温暖化ガスの排出を抑えても2030年の世界の排出量は52.4ギガトンで、2010年比で10.6%増えます。気温上昇を1.5℃に抑えるなら45%減、2℃なら25%減とするパリ協定の目標は遠く、ウクライナ危機で化石燃料への回帰も起き、足並みの乱れが温暖化対策に影を落としています。
CO2排出量は中国が世界の30%、アメリカが13%、EUが7%となっております。 
 
国連環境計画は2022/10/27、『排出GAP報告書』を公表しました。2021年11月にイギリスで開かれたCOP26以降、各国による2030年の排出削減目標の引き上げ幅は0.5ギガトンに留まると推計し、2030年時点の予想で排出量の1%に満たない状況です。各国の取り組み不足から、先進国の支援などを前提にしても今世紀末の気温上昇は2.4°c、その前提を除くと2.6°cに達する可能性が高いと指摘しました。

<企業経営者の関心は低迷>

 大手コンサルティング会社プライスウォーターハウスクーパースが売上高10億ドル以上の企業の取締役700人以上に実施した聞き取り調査によると、『短期的に業績に影響が出ても気候変動対策を進めることは重要だ』と回答した人の割合は女性取締役で7割だった一方、男性取締役では45%にすぎませんでした。女性役員のいる取締役会の方が、女性がいない取締役会よりも気候変動対策の議論に長い時間を費やす可能性が高いです。
またサステナビリティへの関心の低下も示しました。企業の経営戦略にとって『ESGの要素が大切だ』と答えた人の割合は57%と、前年の64%から下落しました。また『ESGが株価や業績などのパフォーマンスを向上させる』と答えた人は45%で、前年から9ポイント減りました。『取締役会に気候変動やサステナビリティに関する知識が必要だ』と答えた取締役は10%でした。 

<日本はレベル2>


米ボストンコンサルティンググループの日本法人は2022/10/26、『カーボンニュートラル経営』の成熟度を評価する独自指標を新たにつくり、分析結果をまとめました。指標は5分野31項目の質問に対する企業の回答に基づき4点満点でスコアをつけた上で、4段階で評価します。東証プライム上場企業231社から回答を得たところ平均スコアは2.1で、レベル2でした。中長期計画の策定はそれなりに進んでいる一方で、計画を実現するための基礎構築が遅れています。脱炭素を進めるのに必要な人材ポートフォリオの構築や、組織の整備意思決定の仕組み作りなどが必要です。グローバル企業トップ15社の平均スコアは3.5です。 

<現状は悪化の一途>

 
米非営利団体のファースト・ストリート財団が2022/8/15にまとめた報告書によると、南部テキサス州からカナダ国境に近い中西部ウィスコンシン州にかけての一帯では超酷暑帯が形成されつつあると指摘しました。人体が感じる温度で50°cを越え、熱中症誘発など極度の危険と判断される日を超酷暑日とし、各地域でどれだけ発生するかを調べました。米国内で超酷暑日が年間1日以上発生する恐れがある地域の居住人口は、2023年の800万人から2053年には1.8億人に増える見通しです。 
 
アメリカは2022年夏に記録的な猛暑や干ばつに襲われました。大規模な森林火災が発生し水害の遠因になったケースもあります。被害総額が10億ドルを超える自然災害は増加傾向で、気候変動の悪影響は厳しさを増しそうです。
海洋大気局によると、2022年7月の暑さは記録が残る過去128年間で3番目で、特に南部テキサス州では昼間の最高気温が月平均で38°cでした。
アメリカ政府の統計では、2022年の原野火災は8月20日までに43000件以上発生し、森林2.4万平方kmが消失、西部カリフォルニア州では大規模火災が相次ぎ、ニューサム知事が7月に非常事態宣言をしました。水害も南部ケンタッキー州では、7月下旬前線の停滞による大雨が洪水を招き、40人近くが死亡しました。
 
欧州委員会の2022年の報告書によると、欧州の47%で土壌の水分が不足し、17%では農作物に悪影響が出ている状態です。干ばつは2022年8月上旬時点でも拡大しており、地中海沿岸などでは通常より乾燥した天候が11月まで続く見通しです。小雨や熱波はスペインやポルトガルなどで大規模な山火事を引き起こした他、欧州全域で河川の水位低下を招いています。イタリアやフランス南西部では、貯水量の減少が水力発電やその他発電所の冷却システムに深刻な影響を与えています。農作物への影響に関しては、特にトウモロコシの収穫量が過去5年平均と比べ16%、大豆は15%それぞれ減少すると推計しています。 

<達成に必要な投資額、被害額は巨額>


日本政策投資銀行は2022/8/4、日本企業が温暖化ガス排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルを実現するために必要な設備投資額は、2022年度で3.5兆円、2023〜2030年で5.4兆円、2031年度以降に毎年5.6兆円で、2050年までの累計投資額は約160兆円との見通しを公表しました。
 
国交省がまとめた2021年の国内の水害被害額は3700億円で、5年間の平均で初めて1兆円を超えました。5年毎の平均被害額を分析すると直近の2017年から2021年は1兆320億円で、2012年から2016年の3800億円の約2.7倍でした。 
 
アフリカ開発銀行は、気候変動の影響でアフリカの一人当たり経済成長が年に5から15%押し下げられているとの分析を明らかにしました。アフリカでは近年、干ばつや洪水の被害が拡大しており、2030年までの気候変動対策に必要な資金は1兆6000億ドル不足しています。 

<カーボンネガティブを達成している国も>

 
温暖化ガスの排出量が吸収量を下回る『カーボンネガティブ』を実現している国があります。ブータンは経済を犠牲にしてでも森林を守り、再生可能エネルギーを活用して温暖化ガスを抑えています。ブータンの人口は約80万人で佐賀県や山梨県と同じぐらい、国土面積は九州ほどです。 
昔は外貨を稼ぐために森林伐採を実施し、1990年代前半には国土に占める森林面積が5割台に減りました。そこで、2010年代にITを活用したドローンやセンサーの導入で森林の違法伐採に目を光らせ、国内の電力は水力発電を使い、有機農法に取り組んだ結果、2020年の森林面積は71%に改善しました。
2020年に公表されたデータによると、ブータンの温暖化ガス吸収量は2015年に約775万トンで、218万トンの排出量を大きく上回りました。 

<長期的な観点での意思決定を>

人間の病気もそうですが、未病の段階で対応するのが一番コストがかかりませんし、苦しまずに済みます。また病気になったとしても、なるべく元気なうちに寝て回復する方が、結果的には生産性が高く仕事ができることは皆様ご承知の通りだと思っております。
ただ、仕事が立て込んでいたり旅行中等でどうしても休めないケースがあります。その場合無理をしますので状況は悪化します。
成人病予防も同様です。健康診断で血圧が高かった場合、産業医の忠告を聞いて医者に通い薬を飲んでいれば大事には至りませんが、放置しておくと最悪くも膜下出血等の大惨事を招くことになります。

人間は目の前のことが一番気になり、将来のことは分かっていてもどうしても先延ばしする傾向があります。この傾向が顕著に表れているのがCO2ネットゼロへの取組だと思います。CO2を出したとしても、明日地球がなくなる可能性は低いです。それよりも自分が経営者として予算を達成していないことの方がよっぽど重要なことだと思います。結果としてほとんどの国が目の前の経済成長を重視し、パリ協定が未達となります。放置しておけば巨額なコストがかかることも、自分達が住めなくなることも分かりつつ、明日起こることではないため、見て見ぬふりをしているのが現状です。

上記に記載したブータンは観光が主な外貨獲得手段のため、本来であれば観光客を優遇すべきところ、逆に入国税を多額に取ることにより観光客を規制することで森林を保全しています。長期的視点で合理的に考えれば、傷が浅い現時点でブータンのような取り組みをするのが賢明な判断だと思います。

<成人病予防のやり方でCO2ネットゼロの達成を!>

どうしたらこの人間のエゴと相反するCO2ネットゼロを達成できるのでしょうか?私見ですが、Co2ネットゼロと成人病予防は同じやり方で対応可能だと考えます。

成人病予防は毎年健康診断を受けた上で、結果が悪い項目について産業医等の診察を受けます。その上で病院に行き、投薬を受けて継続的に薬を飲みます。生活習慣を改め、血圧や糖分等を気を付けながら食事をし、十分な睡眠及び運動をするようにします。
現在産業医が有効に機能していないのは、ここに義務がないからです。個人の判断に委ねている結果、悪いと分かりつつ病院に行かず、生活習慣を変えないからです。ドクターストップがかかり、体が動かなくなって初めて仕事を辞めます。ただしその時には手遅れです。
成人病を高確率で予防するには第三者の監視と義務、罰則が必要だと思います。例えばAIが毎週勤務状況を監視し、オーバーワークと判断した場合AIが自動的に給料を減給するというルールを作った場合、確実に仕事を減らすと思います。病院に行くのも生活習慣も全てAIが監視しており、違反したら銀行口座から罰金が自動的に支払われる場合、それに従わざるを得なくなります。監視社会としての議論はあると思いますが、成人病は結果として予防される可能性が高いと思います。
このことから人間のエゴと相反する行動を取らせたい場合は、第三者による監視と義務、違反した場合の罰則が必要になると考えます。 

同じようにCO2ネットゼロをどうしても達成したい場合、第三者による監視と義務、違反した場合の罰則が必須だと考えます。 
今回のケースであれば国単位で取り組む必要があるため、国同士が監視するのが良いかと思います。実効性を高めるには馴れ合いを防ぐ必要があり、たとえばアメリカと中国が相互に監視するというような関係の方が良いかと思います。
義務はパリ協定の遵守となります。そして2030年と言う未来ではなく、1年ごとにロードマップを書かせます。その上で1年ごとに義務が順守できているかどうかを相互監視している国が確認します。アメリカと中国であればでっち上げの可能性もあるため、国連の第三者機関において再度監視国の言い分が正しいかどうかを検証します。
パリ協定のロードマップが遵守できなかった場合の罰則ですが、国連が作るカーボンプライシング市場で毎年 CO2枠を購入することにします。国連はカーボンプライシング市場で集めた資金を元に、発展途上国等CO2削減の実現が難しい国に経済援助をします。

COPの話し合いも必要ですが、現場の国連、G20等の国際会議は機能していません。その中でCO2ネットゼロと言う必達の目標を達成するためにはある程度の荒治療が必要だと考えます。そして、達成は私を含む一人一人の日々の行動から成り立ちます。まずは各個人がCO2ネットゼロを2050年に必達の目標と考えることからスタートしましょう!


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