見出し画像

被ばく事故から127時間後に「1次請ではなく3次請3社」と訂正:福島第一ALPS内の44億Bq /L廃液

訂正(&統一)とお詫び「43億7600Bq/ℓ」→「43億7600Bq/L」

【これまでのあらすじ】
(ご存じの方は目次まで読み飛ばしてください)
約1000基のタンクに溜まった汚染水から、多核種の放射性物質を取り除く施設(ALPS)で、前処理だけが終わった配管出口。そこに溜まってしまう炭酸塩を硝酸で洗浄した「洗浄廃液」は、43億7600Bq/Lの汚染水で汚染されている。

10月25日(水)、炭酸塩と硝酸が化学反応して発生したガスで、「仮設ホース」が暴れて「仮設タンク」から外れ、洗浄廃液(43億7600Bq/L)を浴び、作業員たちが被ばくした。

10月26日(木)、東京電力は、その作業員らは元請企業「東芝エネルギーシステムズ」の1次下請け作業員だと説明した。(既報

10月30日(月)、東京電力は、事故発生から127時間後に「1次請ではなく3次請3社」だったと訂正した。飛散した洗浄廃液(43億7600Bq/L)の量を「100m L」から「数L」との訂正もおこなった。(既報


受注企業「東芝エネルギーシステムズ」の3次下請けの3社

その30日の会見で、東電は「1次請ではなく3次請3社」としか言わない。内訳を聞くと、Cさんが1社、Dさんが1社、A、B、Eさんが1社だという。

10月26日中長期ロードマップ進捗会見資料「汚染水・処理水対策」93枚目
作業計画および身体汚染結果」の一部を筆者拡大。

正社員か派遣社員かは手元にない

A、B、C、D、Eさんはそれぞれの社の「正社員だったのか、派遣社員だったのかの情報はお持ちか」を尋ねると、「手元にございません」(東電)。

「Cさんが親方」の説明も撤回

3次請3社だとすると木曜日の会見で説明されたことと辻褄が合わないことが出てきた。そこで2度目の質問で聞いた。「もしや、Cさんが1次請→Cさんの指示の元にDさんが2次請→Dさんの指示系統のもとでA、B、Eさんが3次請として仕事をしていたのではないか」(動画 1時間15分目あたり。じきにリンク切れになる)

するとやはり「3次請3社」だと繰り返す。

そこで、「木曜日の会見では、Cさんは親方(おやかた)だと説明をされたが、それは訂正するか」を聞いた。「訂正させていただきます」と答える。

そこで、「A、B、C、D、Eさんの働いていた3次請3社は、同じ2次請からの3次請か」を尋ねると、その通りだという。

そこで、「労働法に詳しくないが、2次請の会社が3社に同じ作業をさせていたとすると、指示系統はどのような形になっていたのか」と尋ねた。沈黙があり「2次から各3社に指示がいく」と東電は回答。

カッパ(アノラック)を着用しなかった原因は指示系統ではないか

そこで今度は、資料の5ページを示し、「作業員Cが作業員Aと一時的に交代した際、作業員Aにアノラックを着用させなかった」とあり、Cさんに責任があるように書いていると木曜日に質問をした記者がいたが、汚染した原因は指示系統がしっかりしていなかったということもあると思いますが、どうか」と聞くと、「そのあたりも確認しているところでございます」という。

この件については、「危険な作業は東京電力社員が行うとか、フェイルセーフでない仮設でこうした作業が続くと思うが」と、怒りが込み上げてわかりにくい質問をしたが、「仮設設備で請負体制でやってはいけないということは考えていない」が東電の回答。

「偽装請負の証拠を撤回しますみたいな話」

指示系統に関する質問を、おしどりマコさんが拾い(動画1時間37分目あたり)、「現場でリーダーのような動きをされていたCさんとAさんの3次請の社は別ですよね。これは偽装請負に当たるのではないか」とズバリ質問。「業務上の指揮命令を他社から受ける場合は、労務管理、労働安全の責任の所在が曖昧になるので、そうならないように契約会社、委託会社以外の指揮は受けないはずです」と。

東電は「3社にまたがっていましたが同じ現場で作業するということで、責任者の方から、現場の状況に応じて交代を行うことが可能ということを事前に共有されておりますので、問題ないと思っております」と辻褄を合わせた。

同じ会見で矛盾する回答

しかし、「問題ない」という回答と、「汚染した原因は指示系統がしっかりしていなかったということ」ではないかという私の質問への回答「そのあたりも確認しているところ」という回答はどこか矛盾している。

おしどりマコさんは「『Cさんがリーダー』と先日の会見で説明した」と念押し。東電が「その報告を修正する」と回答すると、「CさんがAさんに交代の指示を出したという報告が間違っていて撤回ということですか。これ、なんていうか、偽装請負の証拠を撤回しますみたいな話なんですけど」とツッコミを入れた。

その通りだと思った。この話は、福島第一原発の廃炉作業で起きている多重請負構造の中で起きている問題の氷山の一角ではないか。

その3次請で働いている彼らが、正社員だったのか派遣社員だったのかも含めて、労働環境の構図を明らかにしなければ。原発事故現場における被ばく事故は、また再発するだろう。

ところで、こんな問題を横に置いて、東電は、トリチウムと告示濃度比総和1未満の多核種が含まれた水を4回に分けて海に捨てる今年度の計画の3回目の準備を進めている。

【タイトル画像】

2023年10月26日中長期ロードマップ進捗会見資料「汚染水・処理水対策」93枚目「作業計画および身体汚染結果」の一部を筆者拡大。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?