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設計に欠陥のある柏崎刈羽の原子炉を廃炉にしないのか?

2024年1月25日、福島第一原発に関する今年初の中長期ロードマップの進捗に関する東電会見での記者質問は、原子炉の下に溶け落ちた燃料瓦礫(デブリ)のことに集中した。


苛立ちまみれの記者会見

超高濃度で人間が近寄れないデブリは1、2、3号機に計880トンある。そのうち、耳かき一杯程度の「試験的取り出し」について、東電は楽観的な発表を繰り返してきた。取り出し難航は周知の事実。3度目の延期はあまりにも想定内なので、記者質問には、苛立ちが隠せずにほとばしっていた。(動画はこちらやがてリンク切れになると思わる。文末に報道リンク*

原子力規制委では矮小化した議論展開

一方で、原子力規制委員会はどうか。前日24日には、原子炉の下に溶け落ちた燃料が配管を損傷する知見を規制にどう反映するかしないか、つまり、メルトダウンしている最中の問題解決のための矮小化した議論をしていた。

デブリのせいで廃炉作業がどれだけ大変かを無視?

それはメルトダウン後に880トンの瓦礫と化したことを直視しない議論だ。
2号機の数グラムを取り出す試験すら実現していない
地下水がデブリに当たって汚染水が発生し続けている
それを全く考えないで、「原子炉の下の補機冷却機の配管の損傷だって?けっ!」という気分で、「1Fで、今、2号機については耳かき一杯、メルトダウンしたものを取り出すことにも苦労しているので、やはりきっちりと隔離する設計を新しく求めるべきではないか」(=古い設計の原子炉は廃炉にすべきではないか)と聞いた。そして、翌日25日の東電会見ではこのことを聞こうと決めた(既報)。

燃料が原子炉下に落ちる「設計が欠陥」という知見

中長期ロードマップ会見は毎度長引く(東電の説明責任を果たす時間を取る努力には敬意を表する)。そのためか、今回は司会が「2問目ずつ」と条件をつけた。そこで、手を上げ続けながら考えた2問を尋ねた。

まさの:1問目。2号機のデブリ取り出しについて聞いていますと、「事故が起きたときに原子炉の貫通部から溶融燃料が落ちてしまうという設計自体が欠陥だった」という知見が今、得られていると考えますが、小野さんはどうお考えでしょうか?

小野明・福島第一廃炉推進カンパニー・プレジデント:えっとそれは、どういう意味でしょうか?

まさの:設計が、たとえば炉心溶融が起きて、原子炉の下に今、溜まってしまっているデブリのように、全ての物を溶かしてごっちゃごちゃになっていて出せなくなっている、という状況があります。そういうことが起きてしまう原子炉の設計自体がまずかったということを考えるんですが、どうでしょうか?

小野:原子炉の設計というのはそういう発想というよりは、そういうことが起こらないようにするってのが、原子炉の設計の基本ですから、当然ながらそのためのいろいろな方策が講じられていて、そのための設備もいろいろあるということだと思います。
 今回の場合は、そういうふうな想定の中で、津波というのが一つの起因になっていますけども、我々としてもそういうことが起こらないようにもっときちんと、たとえば電源を確保するとかですね、いうことに配慮すべきだったところがあったのが、抜けていたことかと思います。

まさの:2問目ですが、実際に燃料は落下してしまったわけで、原子力規制委員会では、ご存じだと思いますけれども、溶け落ちた燃料が補機冷却系統の配管を損傷して放射性物質が放出されるという知見が得られた、ということで、それを規制にどう反映させるかを検討させるところです。
 で、ATENA(原子力エネルギー協会)と規制庁は柏崎刈羽原発6、7号機みたいに下部に貫通部がある格納容器でも、配管には弁をつけたから配管が損傷しても外に放出がないからバックフィットの必要がないという議論をしていますけれども、今の2号機の状況を見ると、配管がどうのこうのということではなく、万が一、メルトダウン事故が起きた場合に、この原子炉下部に落ちてしまう、被ばくをせずに取り扱うことが不可能だということがわかってきている。なので、こうした設計はもうダメであるという、そういう規制、バックフィットの必要があるのではないか。で、東電は、この設計のまずい柏崎刈羽6、7号機はもう自主的に廃炉にすべきではないかと思いますが、どうでしょうか。

松本純一・福島第一廃炉推進カンパニー・ALPS処理水対策責任者: 松本から回答させていただきますけれども、今回の1、2、3号機がメルトダウンを起こしたという事故の教訓をもとに、新しい安全、規制基準が作られ、私どもはそれを反映している所存です。したがって、メルトダウンを起こしてデブリが落ちてくるということも想定した上で、いわゆるドライウェル、下部への注水機能ですとか、そういう防護策をとっていると考えています。従いまして、万が一にもということを考えつつ、いろいろな対策を講じ、今後、新しい安全の対策の必要があれば、それを講じていくということで、ある意味、安全に終わりがないという覚悟のもと、原子炉の安全対策を講じていくといういことであります。以上です。

会見司会:まさのさん、こちら福島第一廃炉のロードマップ会見でございますので、そちらに関することでよろしくお願いします。
まさの:はい。2号機に関してでしたんで。

動画「2024/1/25(木) 中長期ロードマップ進捗状況について」より
溶融燃料が落ちてしまうという設計自体が欠陥だった」という知見が今、得られていると考えますが、小野さんはどうお考えでしょうかと聞いた途端「は?」という表情をしていた小野氏ほかの表情。
動画「2024/1/25(木) 中長期ロードマップ進捗状況について」より

まとめ

福島第一原発の廃炉状況を踏まえて、原子炉の下に貫通部があって燃料が溶け落ちる設計の柏崎刈羽原発を廃炉にすべきではないかとの問いに、「そういうことが起こらないようにするのが原子炉の設計の基本」と答える福島第一廃炉推進カンパニー・プレジデント。いや、起きたんだからという問いには、「万が一にもということを考えつつ原子炉の安全対策を講じる」と答えたALPS処理水対策責任者。その姿勢が変化するまで、コツコツ聞いていくつもりだ。

*【関係報道へのリンク】

【タイトル写真】

2014年1月25日 中長期ロードマップ進捗会見にて筆者撮影

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