ALPS配管の洗浄廃液事件に関する国会質問(2)偽装請負疑いほか
厚労省の審議官が「偽装請負の判断に当たりましては、請負事業主が、一つには自己の雇用する動労者の労働力を自ら直接利用するものであるか、二つ目には、請け負った業務を自己の業務として契約の相手方から独立して処理をしているかということにつきまして、労働者に対する業務指示や労働管理の実態、現場の管理監督の体制や当日の状況などを含めまして総合的に勘案した上で個別に判断するもの」(2023年12月6日参議院東日本大震災復興特別委員会)と答弁した「ALPS配管の洗浄廃液事件に関する国会質問」の続き。
石垣のりこ議員による質疑。抜粋しながら小見出しと関係資料へのリンクをつけさせていただく(動画は参議院のインターネットアーカイブから視聴可能)。
偽装請負疑いに関する質問
石垣のりこ参議院議員: これ、厚生労働省都道府県労働局が作成した労働者派遣・請負を適正に行うためのガイドの問い7をお伝えした。これは偽装請負に当たる可能性があるといういことで明言されている。東電に伺います。今回の事故の説明を考えると、これ偽装請負じゃないかという疑いがどう考えても生じてしまう。
酒井大輔・東京電力副社長: (略)私たちがヒアリングした内容(2023年11月16日東電「増設ALPS配管洗浄作業における身体汚染発生を踏まえた対応について」リンク)と東芝エネルギーシステムズの報告書(2023年11月16日東芝エネルギーシステムズ「福島第一原子力発電所における身体汚染発生に関する調査結果・原因と再発防止対策について」リンク)、これを突合させて、それで私たちとして総合的に事実関係を確認、把握。その内容から申し上げますと、今回の件につきましては偽装請負ではなかったというふうに考えてございます。
石垣議員:東芝さんをかばっているんじゃないか。東芝エネルギーシステムズが出してきたその報告書の中に、今後の対応策として、「施工会社に対しては作業班長を自社から配置することを徹底させる」という表現があります。まあ徹底させるということですから、いままでも同様のケースがあったんじゃなかろうかということが疑われます。
また、この事故現場、事故発生時間にはいなかった作業員Cとかは身体汚染の可能性があるとして検査を受けているけれども、その場にいて一番廃液をかぶったAの近くにいた放射線管理員は検査対象になっていなかったりとか、あとは、アノラックを本来ならば着けなければできない作業を目の前でしているにも関わらず、この放射線管理の担当の人が何も言わずにその作業をさせているとか、労働現場としてもどうなんだろうか(略)。そこで規制庁に伺います。
東電は偽装請負とは認めてないようですけれども、これだけ説明が偽装請負と言われないようにしているのではないかと疑わざるを得ないように書き換えられていく事実はあります。少なくとも今回の事実の説明において報告書をそのまま受けとめたとしても、労働法規が守らていない、指揮命令系統も曖昧である、放射線管理員が目の前にいるのにアノラックを着けていない、着なければならない作業をさせてしまう、こういったことが起きているということで、こういう労働者の安全を守れないような業務をおこなっているということに対して、規制庁としてはどのようにお考えなのでしょうか。
山中伸介原子力規制委員長:ご指摘の事案につきましては、作業員のうち、身体汚染を受けた作業員が本来作業手順に定められているアノラックの着用を行っていない状態で作業に従事していたことなど、東京電力が定めた手順に違反していたことが既に確認されていることから、実施計画違反に相当すると考えております。
規制委員会としては、今回の事案が発生した直後から、現地の検査官が中心となり、東京電力による作業の計画、管理、指示が適切であったかなど、調達管理の観点も含めて、事案の発生経緯等について保安上の問題点の確認をしているところ。
これまでの保安検査の内容につきましては、12月中旬に開催する予定の特定原子力施設監視・評価検討会(リンク)で議論を行うこととしており、最終的にこの検査の結果を受けて、実施計画違反による影響の程度や再発防止策の妥当性等について判断する予定でございます。
石垣議員:偽装請負に関しては、過去にも同じようなアンケートも取って指摘がされていますし、今回の事故を受けて、しっかりと規制庁として意見をしていただきたい。
手作業の仮設洗浄装置に関する質問
石垣議員:そもそも、この配管の洗浄作業が行われております。今回、ホースが暴れて廃液が飛び散ったことへの対応策も、固縛、この固定される仕方や場所が問題だったから適切に今後おこないますということが改善策になっているんですが、この仮設設備で対応しているのはなぜなのか。常設という選択肢はないのか。
酒井大輔・東京電力副社長: 今回の事案をうけまして、恒久対策といたしまして、洗浄廃液を受けるタンクの上蓋とホースを接合できるよう設備を改良するようにしてございあす。あっ、するようにする予定でございます。そしてまた、タンクにレベル計も設置しまして、液位を監視できるようにいたします。さらに、万が一の洗浄廃液が飛散した場合にも備えて、洗浄廃液を受けるタンクをハウスで区画することを考えてございます。この汚染拡大防止というところを測ってまいりたいと考えてございます。
石垣議員:いや、仮設のままじゃなくて常設という選択肢はないいんですかと言っているんです。仮設のままだというお答えでよろしかったですか。
酒井副社長:今回の配管洗浄作業は、年1回、あるいはちょっとインターバルというところも鑑みまして、どういうふうにやるのが一番いいのか適切かというところ。設備への恒久対策として、洗浄廃液を受けるタンクの上蓋を改良して継手をしっかり作り、固縛もしっかり定点でできるような形にして設備を改良する、なおかつレベル計も廃位を監視できるような形で対策を整えていきたい。
3種類のALPS関する質問
石垣議員:設備の問題だけではなく、そもそも弁を閉めるという今までやったことのない作業が行われていたことの原因究明も報告書にはない。そいういうことも含めて規制庁の方でしっかりとやっていただきたい。
今回の事故は増設ALPSで発生しています。ALPSは共に東芝製の既設ALPSと増設ALPS、そして日立製の高性能ALPSの3台が設置されておりますが、もう既設も増設のALPSもこの硝酸を注入して配管の清掃をする、手作業が生じると。これ高性能ALPSだとこういう手作業はないとうふうに私、説明を受けたんですけど、高性能ALPSももっと活用した方がいいと考えますけれども、いかがですか。
酒井副社長:ALPSにつきましては、ご指摘の通り3種類のタイプがございます。いずれも、放射性物質の除去性能といたしまして、汚染水に含まれますトリチウム以外の放射性物質を国の定める告示濃度限度未満まで低減させる性能を有しております。
高性能ALPSは1系統でございまして、処理量は日量400立法メートルでございます。既設及び増設ALPSはそれぞれ3つづつ3系統づつございまして、1系統あたりの処理量は日量250立法メートルでございます。現在、日々発生する汚染水でございますけれども、こちらは平均で日量約100立法メートルというところで、抑制されていることから、既設又は増設ALPS1系統を動かすことを、運用のし易さからこれまではやってきている。
石垣議員:運用のし易さというのはあるとは思うんですけれども、こういう作業員の危険性も考えて、しっかりとこの活用の方法というか、せっかくあるんですので、使っていただくような方法というものをもうちょっと明確に今後提示していただきたい。
長い棒で高濃度フィルターを突く作業に関する質問
危険な作業というのはこの配管の洗浄だけではなくて、吸着塔のフィルター交換作業においてもあるということで、この吸着剤によっては交換のタイミングで高まってしまっているものもあるそうですが、そうした場合、どのようにフィルター交換を行なっているんでしょうか、ご説明をお願いします。
酒井副社長:吸着材の交換につきましては、専用の配管により、それぞれの吸着塔内に水や空気を送り込むことで、内部の使用済みの吸着材を押し出して、専用の配管を通って、高性能容器に排出するということをおこなっております。
ただ一方で、この工程のなかで、まれに吸着材の一部がダマになり、排出しにくい場合がございます。その際は、棒状の治具を使用いたしまして、ダマ状の吸着材をほぐした後に圧縮空気と濾過水で排出を行なっている。この作業時には、遮蔽の設置、そして作業時間の管理、距離の確保など被曝低減対策の措置を講じ、十分安全の確保を図って作業を行なっている。
石垣議員:資料5をご覧いただきたいと思いますが、結局、まれに作業があるとおっしゃいましたけれども、吸着材などが固まってしまった場合に、こういう細長い金属の棒で上から吸着の塔をつついて削り取るという作業を作業員の方がなさっている。こうやって棒を持って、がつがつという。こういうアナログな作業がこのALPSのなかでやらざるを得ない作業として作業員が担当せざるを得ないと。こういうこと、私ちょっと聞いたときに、何か多核種除去設備という名前だけ聞いて、ものすごく完結したもので、もう汚染水入れるとそのまま綺麗にでてきて、あとはエアコンみたいに自動洗浄みたいなことが行われるのかとおもいきや、やっぱりこの中というのは非常に基本的な仕組みのなかで危険な作業を伴うところがものすごくたくさんあるということが、この例をもってもわかるのではないかと思います。
海洋放出を強行、タンクはいつ減っていく?
石垣議員:今後これを30年にわたって、もうちょっとALPSがどの程度進化していくかわかりませんけれども、やり続けるのかというのも、これも1つの課題ではないでしょうか。確認なんですが、今年、海洋放出して空になったタンク、30基あると思います。今後再利用するということで、今回、今年放出して空になった分のタンクというのはなくならないということでよかったですか?
酒井副社長:ALPS処理水等を貯留するタンク、現在、1046基ございますが、1046基のタンクとALPS処理水を希釈放出時に測定、確認するためのタンク、こちらが30基ござます。
これまで3回の海洋放出につきましては、後者のタンクに保管されていたALPS処理水を放出したもの。これらのタンクは今後も希釈放出前のALPS処理水を測定、確認する目的で設置しておりますので活用していく。
石垣議員:敷地内にタンクの置き場がないといって、汚染水減らすためにも海洋放出しか選択がないとおっしゃって、海洋放出を今年の8月半ば強行したわけなんですけれども、タンクっていつから減っていくんでしょうか。
酒井副社長:タンクはさきほど30基のほうは放出するために必要なタンクですけれども、貯留タンクにつきましては貯蔵状況と敷地利用の計画等をふまえながら、解体、撤去をしていく計画でございます。現在、そちらの検討をしている。
石垣議員:その見通しについては今ないんですか。
酒井副社長:すみません。今現在時点では検討しているところ。
石垣議員:タンクの解体方法については。
酒井副社長:順次解体、撤去をしていく上で、どういう順番でどういうプロセスでやっていくのかを含め検討しているところ。
石垣議員:海洋放出今年8月やりました。(略)復興の歩みと共にあの景色が変わっていくんだなと思っている方が多数いらっしゃると思うし、私もそうおもっていたんですけれども実際は(略)汚染水が発生し続けているわけなので、そんなに急にはまずなくならないということ、空になったものの処理もどうなるかわからない、いつそれが撤去されていくのかもわからない。わからないこと尽くしであることが、今日の答弁で明らかになったかと思います。
燃料デブリに触れる汚染水の発生
石垣議員:海洋放出に当たって行われる作業の中には、今日ご紹介したように、身体汚染などで被曝するおそれのある作業がふくまれています。さっきご覧いただきました図にありますけれども、これって、その塊というのは、結局は放射性物質を全部吸着したすごい濃度の高い廃液も含めたどろどろになったものとか固まっているものとか、非常に線量も高いであろうということが容易に推測できます。これを作業員が棒で削りとるような作業もふくめてやらなければならない。当初言われていたようにタンクも減っていくにはなかなか時間もかかりそうだと。
今回の事故の発表に関しても、作業を実施する東電の信頼性というのは(略)著しく失われていることを考えますと、これやっぱり海洋放出をしないで済むように、汚染水の発生を少なくするための対応を急いでやるべきではないか。燃料デブリにできるだけ水が触れないようにすべきだと思うんですが。
酒井副社長:現在、2025年内に1日あたり100立法メートル以下に抑制すると、中長期ロードマップに掲げてございます。2022年度の発生量は年間降雨量が少なかった影響もございますけれども1日あたり約90立法メートルとなってございます。今後、1Fの屋根カバーをしたりですとか、この敷地舗装というところをさらに進めていくことによって、28年度末には1日当たり50から70立法メートルに抑制していく(略)計画を立ててございます。
石垣議員:福島第一原発の事故の処理というのは、復興への道のりも含めてまだまだ遠いということを申し上げて、私の質問を終わります。
抜粋は以上(筆者感想)
いつ終わるとも分からない事故原発の事故処理。その1過程が国会議事録に残ることの意義は大きい。100年後の世代がこれをどう読むのだろうか。汚染水はどうなっているだろうか。作業員たちの健康状態についてはどのように語り継がれていっているだろうか。
【タイトル画像】
石垣のりこ参議院議員2023年12月6日日本大震災復興特別委員会質問資料5より