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前代未聞ぐらい分かりにくい老朽原発の審査基準(案)パブコメ

7月20日、FoE Japanが「パブコメセミナー:老朽原発の審査基準など」を開催。第1回の講師を頼まれ、パブコメを書く自分自身への尻叩きにもなるので引き受けた。取材した立場から(と言いながら、取材者の法(のり)を超えがちに)お話をしたが、前代未聞ぐらい、わかりにくい審査基準だ。

7月22、29日にFoEパブコメセミナー


FoE Japanでは締切(2023年8月4日24時)までにあと2回、以下の通りパブコメセミナーを開催するそうだ。第2回は明日。

<第2回>
日時:2023年7月22日(土)11:00-12:30
講師:井野博満さん(東京大学名誉教授)
申込:以下からご登録ください。
https://us02web.zoom.us/meeting/register/tZUlf-mvqz4uGty6LxMVVorJZ7Xih9GncbDg

<第3回>
日時:2023年7月29日(土)14:00-15:30
講師:阪上武さん(原子力規制を監視する市民の会)
申込:以下からご登録ください。
https://us02web.zoom.us/meeting/register/tZAtceCqrTMtGNDLBLOpIWxpU1UMZjnRlqud

FoE Japanサイトhttps://foejapan.org/issue/20230718/13536/ から抜粋

私が第1回で使ったパワーポイント資料はこちら(雑です)。

書類が基準に揃っていればパスという審査

原発事業者に老朽原発の「長期施設管理計画」のやり方を原子力規制委員会に申請させ、審査基準に合っていれば運転を認めるというやり方は、「運転期間」のように「はい!本日で廃炉!」となる絶対的な規制手法とは違う。

劣化管理の対象が限定的でも、方法や結果が、規制委が決める基準の範囲内で「長期施設管理計画」として書類上、記載されていれば、規制委は稼働を認めざるを得ない。本当なら「運転期間」を取り戻せと言いたいが、私自身が投じたパブコメは以下の通り。(とても不十分。あくまで恥のかき捨て気分で公開)

「実用発電用原子炉の長期施設管理計画の審査基準(案)」について以下、意見を述べる。

「1長期施設管理計画の審査に当たって確認すべき事項」のうち
●P8~9  (2)経年劣化に関する技術的な評価について
評価の対象機器と事象が限定的過ぎる。山中委員長は、老朽原発の安全確認で注視するものに、圧力容器、ケーブル、コンクリート、配管、電気部品があると、これまでに記者会見で述べている。一方、評価事象を「主要6事象」とし、他は事業者次第であれば、6事象以外の機器や事象を見落とすリスクがある。

1 一つの原発において、配管は延長120キロ、5万本、ケーブルは延長1700キロに及ぶことに鑑み、通常点検が及ばない箇所については全て30年以降の各長期施設管理計画のできるだけ遅い時期に網羅的に実地に点検を行うことを義務付け、点検が終了しない限りは次の10年の長期施設管理計画を認可しないこととすべきだ。

2 建設時のケーブルの接続施工不良だったとする高浜原発2号機は40年近く経ってはんだ付けがはがれたと推定されている。そこで、点検ができない箇所の公開を義務付け、健全性を事業者が明らかにできない限りは長期施設管理計画を認可しないこととすべきだ。

3 主要6事象のうち中性子照射脆化について。運転期間停止中に原子炉圧力容器の劣化が進まないことを証明するデータは示されておらず、かつ脆化の進展は照射時間のみならず、照射スピードにも影響を受ける(照射スピードが遅い方が脆化が加速する)との指摘があり、中性子照射脆化の評価は、PWR、BWRに関わらず、暦年で監視試験を行うこととすべきだ。

4 監視試験片の再生は認めないこと。母材、溶接部、熱影響部のうち後者2つは小さ過ぎて再生できないとの指摘がある。

●P 11 (3)技術評価の結果について
1 「表2 中性子照射脆化の判定基準」について。「損傷するおそれのある場合」を判断するのが事業者となり、規制として不安定なので削除すべき。監視試験は暦年で行うべきだ。

2 「d 上記 c.の判定基準を満足しない場合には(略)、長期施設管理計画の期間において判定基準を満足すること」を削除。主要6事象ぐらいは判定基準を事前に満たしていない限りは長期施設管理計画の認可を認めるべきではない。

●P14
「中性子照射量に応じ」を削除 暦年で監視試験行うこと

●全般 検討チームにおいて被規制者である事業者(ATENA)だけに意見を聞いて策定基準を定めることは、例えれば「泥棒」に相談してどんなカギなら開けられるかをすり合わせるようなものだ。公平な規制者として期待されることは、老朽原発の安全性に疑問や懸念を持つ外部専門家の意見や批判を受け付ける場を設けることだ。

筆者が提出したパブコメより

先日書いた通り、パブコメの締切は8月4日(金)夜中24時。
余裕のある人は、地元国会議員に対して、「原子力規制委員会/規制庁が老朽原発の規制についてパブコメを行っているので、その審査基準等をヒアリングしてください。私たちも同席させてください!」などとロビー活動することなどもオススメする。

パブコメの中身(審査基準など)は、一部「運転開始から長期間経過した発電用原子炉の安全性を 確保するための規制制度の全体像について」でわかりにくく説明が行われているので、あわせてみることも一案だ(タイトル画像に関係目次を示した)。

以下がパブコメサイト。

1)脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則等の改正案等に対する意見公募について(締切:2023年8月4日24時)

2)実用発電用原子炉の長期施設管理計画の記載要領(案)に対する意見公募について(締切:2023年8月4日24時)

【タイトル写真】

原子力規制庁が2023年7月12日の原子力規制委員会で示した「長期施設管理計画の認可制度に関する分かりやすい説明資料」として示した「運転開始から長期間経過した発電用原子炉の安全性を 確保するための規制制度の全体像について」より。パブコメに関係ある箇所の目次を示した。これ↑「分かりやすい」ですか???


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