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原子力規制委による老朽原発の審査基準案など4つがパブコメに #GX

GX束ね法案に束ねられていた改正・原子炉等規制法は、原則40年、最長20年の延長を可能とした「運転期間」を削除して、劣化評価と長期施設管理計画が、原子力規制委員会の審査に通れば、原発を60年を超えて運転できることを可能にした。

では、老朽原発の劣化評価とは何か、評価結果に基づく長期施設管理計画は何か、原子力規制委員会は何を基準に審査するのか、その具体的内容は、改正・原子炉等規制法で「原子力規制委員会規則」で定めるとしていた。そして、昨日(7月5日)の原子力規制委員会で、その案が出てきた。

今日は、(1)改正・原子炉等規制法とはどんなものだったか、(2)4つのパブコメが開始されていること、そのことだけをまずは書く。

(1)改正・原子炉等規制法(未施行)

これまで原子炉等規制法で定めていた運転期間や延長申請の手続に代わり、同じ「第43条の3の32」で「劣化の管理等」として、以下のように改正(改悪)された。随所に「原子力規制委員会規則で定める」という文言が出てくるが、その原子力規制委員会規則案がパブコメにかけられているという関係だ。

法改正の内容が頭に入っている人や、読むのが面倒くさい人は、以下の囲みは読み飛ばしてください。

GX束ね法案に束ねられた改正・原子炉等規制法 第43条の3の32
 発電用原子炉設置者は、その設置した発電用原子炉について最初に第43条の3の11第3項の確認を受けた日から起算して30年を超えて当該発電用原子炉を運転しようとする時は、原子力規制委員会規則で定めるところにより、あらかじめ、当該30年を超えて運転しようとする期間(10年以内に限る。)における当該発電用原子炉に係る発電用原子炉施設の劣化を管理するための計画(以下この条において「長期施設管理計画」という。)を定め、原子力規制委員会の認可を受けなければならない。

2 長期施設管理計画には、原子力規制委員会規則で定めるところにより、長期施設管理計画の期間、第5項の規定により実施した劣化評価(発電用原子炉施設の劣化の状況に関する技術的な評価をいう。以下この条において同じ。)の方法及びその結果、発電用原子炉の劣化を管理するために必要な措置その他原子力規制委員会規則で定める事項を記載しなければならない。

3〜4(筆者メモ:40年、50年、60年を超えてのことで中身は30年を超える時の定めとほぼ同様なので略す)

5 発電用原子炉施設設置者は長期施設管理計画を定め(略)、原子力規制委員会規則で定めるところにより、劣化評価を実施しなければならない。

6 原子力規制委員会は、第1項、第3項又は第4項の許可の申請が次の各号のいずれにも適合していると認めるときでなければ、これらの許可をしてはならない。
一 劣化評価の方法が発電用原子炉施設の劣化の状況を的確に評価するための基準として原子力規制委員会規則で定める基準に適合するものであること。
二 長期施設管理計画の期間における発電用原子炉施設の劣化を管理するために必要な措置が、核燃料物質若しくは核燃料物質によって汚染された物又は発電用原子炉による災害の防止上支障がないものであること。
三 発電用原子炉施設が、長期施設管理計画の期間における運転に伴い生ずる当該発電用原子炉施設の劣化の状況を踏まえ、当該期間において安全性を確保するための基準として原子力規制委員会規則で定める基準に適合するものであること。

7 (長期施設管理計画に関する軽微な変更は、原子力規制委員会規則で定めるところにより、その旨を原子力規制委員会に届け出なければならない)

8 発電用原子炉設置者は、第1項又は第3項の許可を受けた長期施設管理計画に従って、発電用原子炉施設の劣化の管理をするために必要な措置を講じなければならない。

9 原子力規制委員会は、第6項第一号の原子力規制委員会規則で定める基準の変更があった場合その他の場合において発電用原子炉施設の劣化を的確に管理するため改めて劣化評価を実施させる必要があると認める時、発電用原子炉施設の劣化を管理するために必要な措置が同項第二号に規定する基準に適合せず、若しくは適合しなくなるおそれがあると認めるとき、又は発電用原子炉設置者が前項の規定に違反していると認めるときは、発電用原子炉施設者に対し、劣化評価の実施、長期施設管理計画の変更その他発電用原子炉施設の劣化を管理するために必要な措置を命ずることができる。

脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案 新旧対照条文 P 25〜27から抜き書き(一部略)。太字は筆者による加筆。

(2)4つのパブコメ開始

改正・原子炉等規制法(第43条の3の32)で原子力規制委員会規則で定めるとした具体案について、原子力規制委員会が意見募集(パブコメ)を始めた。

パブコメ締切は8月4日(金)夜中24時。それを受けて原子力規制委員会が9月に決定後、閣議決定される予定。施行は一部が今年10月1日、フル施行は2年以内。

今回、パブコメにかかっているのは4つ。行政手続法に基づくものが以下3つ。行政手続法に基づかない任意(原子力規制委員会の意志)で行うものが1つ。

3つは束ね法の名前を冠しているが、要は上述した原子力規制委員会規則(「実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則」の改正案)。

脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則等の改正案等に対する意見公募について
この中に3つの案が出ている。
① GX脱炭素電源法附則第4条第6項の規定により納付すべき手数料等の額を定める政令(案)(概要)
② 実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則等の一部を改正する規則(案)
③ 実用発電用原子炉の長期施設管理計画の審査基準(案)

任意のパブコメが以下。
実用発電用原子炉の長期施設管理計画の記載要領(案)に対する意見公募について④ 実用発電用原子炉の長期施設管理計画の記載要領(案)  

上記をクリックして「命令などの案」欄にあるのが①〜④。
① は原発事業者が原子力規制委員会に払う審査料だから短い。
②③④は読みにくくて目がクラクラするかもしれない。

今日のところはまず、パブコメにかかりましたよ、ということだけを書いておく。

パブコメするなら説明会や意見聴取会をすべきではないか

ちなみに「こんなにわかりにくいのだから、説明会とか意見聴取会をやるべきではないか」と、山中原子力規制委員長に定例会見(動画)で迫ったが、「特段公開の説明会等は現在考えておりませんけれども、今後も引き続き分 かりやすい資料の説明、分かりやすい情報発信については心がけていく」(会見録)という回答しか得られなかった。

2023年7月5日原子力規制委員長定例記者会見にて筆者撮影
(IAEAの報告書が出た日でもあり、1FのALPS処理水に関する記者質問が多かった)

【タイトル画像】 

上記③ 実用発電用原子炉の長期施設管理計画の審査基準(案) P.2 

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