「GX経済移行債」は「原発経済逆行債」ではないか
GX基本方針と共に2月10日に閣議決定され、国会に提出されたのが「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案」(略称はGX推進法)という新法だ。今日から衆議院経済産業委員会で審議がはじまった。
原発投資は昨年から結論ありき
要するにグリーントランスフォーメーション(GX)を実現するための「投資」を促すという法案だが、これは昨年7月に岸田首相が開催した第1回のGX実行会議で既に結論が見えていた。
当時のGX実行推進担当大臣兼経産大臣が、経産省が作ったと思われる資料「GX実行会議における議論の論点」2022年7月27日を説明(第一回GX実行会議)。
「最近の電力需給ひっ迫の背景には」「原子力発電所の再稼働の遅れ」がある(P6)などとして、今後検討すべき論点として「GX経済移行債(仮称)」を発行して、「原子力(革新炉等の研究開発)に「0.1兆円」を投資するとしていた。
「脱炭素」に隠れて見えない原子力
今回の提出法案でも「今後10年間で150兆円を超える官民のGX投資が必要です」とあり、まさに結論ありき。原子力への投資はどうか? 概要を見ると、2022年7月27日「原子力」も「原発」も見当たらない。
しかし、法案の名前に「脱炭素」とあるように「脱炭素」はそこここに出てくる。そして、もう一方の束ね法案「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案」に含まれる「原子力基本法案」第2条の2などで、原子力は「脱炭素」エネルギーとして位置付けられ、国が推進することまでが新たに書き加えられている。つまり、原発への投資が含まれるのだ。(そして、本日3月14日、今開催中の衆議院経済産業委員会の篠原孝議員の質問(動画)によれば、「0.1兆円」としていた額は「1兆円」に焼け太りしたようだ。要確認)
EUタクソミーとの違い
なお、岸田政権が原発の再稼働・新増設・運転期間延長を連呼し、原子力規制委員会が「運転期間」についてモノを言わないと言い始めた頃、これはマズイと思って、昨年11月8日、経産大臣会見に行った。
欧州はグリーンな投資を推進する「EUタクソノミー」で原子力を入れようとしているが、高レベル放射性廃棄物と最終処分の資金の確保を条件にする。日本も新増設を認めるのであれば、同条件とすべきではないかと聞きに行ったのだ(*)。
唐突に聞かれて西村大臣は投資条件についてはスルー。「現時点ではまだ具体的な方向性が決まっているわけではありません。総合エネルギー調査会において、フルオープンで多くの専門家の皆さんの意見を頂きながら国民の皆さんにもフルオープンで理解を深めていただきながら議論を進めている」と答えるにとどまった。(それなら参加型政策決定を目指すべきではないかと問い直すのが精一杯だったが。)
その後も、E Uのように、将来世代に高レベル放射性廃棄物の後処理を丸投げしないための具体的な制度は議論されていない。
「GX経済移行債」で得た資金をどうバラまくのか
「GX経済移行債」という名前の国債で得た資金を、国がどうバラまくのか、額以外は不透明なままだ。
中でも、経済合理性を失い、民間で投資が困難になった原子力産業にも、国が「国債」で得た資金を投資する、つまり自由経済に反するのが、この法案の特色ではないか。
また、電力自由化をしたにもかかわらず、いまだに、送電線を使う優先順序は原発は再エネよりも高いままだ。このままでは原発が永続的に居座り(束ね法案では原子力の持続的な活用を狙っている)、再エネの主力電源化は遠のく。「GX経済移行債」は、どこへも「移行」しない。「原発経済逆行債」だ。
(*)西村経済産業大臣の閣議後記者会見2022年11月8日動画
(*)西村経済産業大臣の閣議後記者会見の概要2022年11月8日(火曜日) より
【タイトル写真】2023年3月15日 衆議院 経済産業委員会 立憲民主党チャンネルより筆者スクリーンショット
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