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高速実験炉「常陽」は稼働を許可されるべきか?

半世紀を過ぎても未完―高速実験炉「常陽」のパブコメ #GX 」でお知らせしたように、高速実験炉「常陽」(じょうよう)の設置変更許可に関する審査書案(以下、審査書案)について原子力規制委員会がパブリック・コメントを求めている。今日夜中(24時)が締め切りだ。
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構大洗研究所(南地区)原子炉設置変更許可申請書(高速実験炉原子炉施設の変更)に関する審査書案」に対する科学的・技術的意見の募集について

研究炉の設置に関する許可基準

この審査書案とは、原子炉等規制法が定める研究炉の設置に関する許可基準(第24条)のうち、「運転を適確に遂行するに足りる技術的能力」(第24条第1項2号)があるか、そして「災害の防止上支障がないものとして原子力規制委員会規則で定める基準」(第24条第1項3号)つまり「新規制基準」に適合しているかを、原子力規制委員会が審査した案だ。

原子力規制委員会の審査書案は、許可基準に適合しているから、申請(つまり稼働)を許可するという結論になっている。審査書案は375ページ*からなり、ほとんどのページを後者の新規制基準に割いている。

私が注目して意見を出したのは「運転を適確に遂行するに足りる技術的能力」。以下の意見を出しておいた。複数の研究機関が合併して、多くの事業を日本原子力研究開発機構という組織が抱え込んでいる。以下、あくまで参考まで。

筆者意見「申請者は運転を適確に遂行するに足りる技術的能力がない」

【意見】
P4 申請者の技術的能力に関し、申請内容が「技術的能力指針に適合する」としているが、(1)申請者は2度目のナトリウム火災発生を防げず、(2)2007年11月「計測線付実験装置の保持部と試料部切り離し失敗」以来、運転経験がない。原子炉等規制法が求める「運転を適確に遂行するに足りる技術的能力」(第24条第1項2号)はない。
 (1)1度目は1995年。申請者(当時、動力炉・核燃料開発事業団)の高速増殖炉「もんじゅ」でナトリウム漏えいと火災が起きた。2度目は、それからわずか6年後の2001年10月31日、申請者(当時、核燃料サイクル開発機構)は「もんじゅ」を教訓に徹底して取るべき火災防止策を取らず、「常陽」でナトリウム火災を防げなかった。2001年11月15日茨城新聞記事「『ナトリウム発火』断定」および同年12月4日消防庁「ナトリウムを取り扱う施設で発生した火災について」によれば、ナトリウムが床などに落ちる可能性がある作業を窒素充てんビニール袋外で行っていた、ナトリウムが付着した紙タオルを紙製ごみ箱に入れられた、いつの時点のナトリウムか特定できないナトリウムが別の場所からも検出された、請負作業者等に対するナトリウムの取扱いに関する教育訓練が不十分だったなど、ナトリウム発火を防ぐ当たり前の対策を取っていなかった。
 (2)「常陽」は2007年に「計測線付実験装置の保持部と試料部切り離し失敗」で燃料交換機が破損・変形する事故が起きて以来、運転を停止している。
 申請者には「運転を適確に遂行するに足りる技術的能力」がなく、申請を許可すべきではない。

【意見】
P4 申請者の技術的能力に関し、申請内容が「技術的能力指針に適合する」としているが、ナトリウムを冷却材に使う原子炉は日本には1基もない。つまり「国内外の同等又は類似の施設への技術者派遣や関連施設での研修を通して、経験及び技術が十分に獲得されている」とする「指針7 運転及び保守の経験」に適合していない。申請者がナトリウムを冷却材とした原子炉での「運転及び保守の経験」を海外で得ているというのであれば、そのことは審査書案に記載されているべきである。ない限りは指針7に違反している。申請者の申請を許可すべきではない。

筆者が出した意見

2023年5月24日原子力規制委員会 では、資料2-2 高速実験炉原子炉施設(常陽)に関する審査の概要(案) として概要が書かれている。本来ならパブコメサイトにも掲載するかリンクを貼るべきだが、取っ付きにくい本体しか載せていないのは不親切だぁと思う。

その他の参考ページ
原子力事業者の技術的能力に関する審査指針
(↑実用発電用原子炉に関する規則・告示・内規・ガイド)
消防危第130号 ナトリウムを取り扱う施設で発生した火災について 平成13年12月4日
○2001年11月15日茨城新聞記事「『ナトリウム発火』断定」 どなたかがTwitterで教えてくださった。

【タイトル画像】2023年5月24日原子力規制委員会 資料2-2 高速実験炉原子炉施設(常陽)に関する審査の概要(案)  P.3 高速実験炉原子炉施設「常陽」の概要 より。

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