日本は「核燃料サイクル政策」を推進しているが、エネルギー基本計画などの表舞台からは隠されている問題がある。燃料を再処理して出る高レベルの放射性廃液を固める「ガラス固化」という技術が確立していないのだ。
なんて馬鹿げたこと?!
初めてそれを知った時(というよりボンヤリ理解した時)に「え?そうなの?」とビックリした。高速増殖炉もんじゅの冷却材が、水や空気に触れると燃えるナトリウムだと知った時ぐらい驚いた。なんて馬鹿げたことをしているんだ!と。
廃止措置中の再処理施設
2024年10月2日の原子力規制委員会の主な議題は2つで、1つは原発、1つは核燃料施設等の新規制基準適合性審査状況の報告だった。
後者で「東海再処理施設」(=日本原子力研究開発機構(JAEA) 核燃料サイクル工学研究所 再処理施設)の審査状況も報告された。
東海再処理施設は、1977年から2007年まで30年稼働した研究施設で、現在、廃止措置中だが、それが難航しているのだ。
山中委員長「進捗が見られない。ガラス固化」
つまり、冒頭で述べた高レベルの廃液を固めて処理する「ガラス固化」がうまくいかないのだ。これは約70年もかかる「廃止措置」の入り口にあたる。
以下が、規制庁による説明(動画リンクの頭出しはこちら)だが、山中委員長はJAEAの廃止措置の幾つかの「進捗が遅れているというより見られない」として質問を行った(動画リンクの頭出しはこちら)。
東海再処理施設のガラス固化:マジックハンド劣化
そこで、この機会を捉えて、ガラス固化技術の現在地について会見で聞いてみることにした(動画の頭出しはこちら)。
六ヶ所村再処理工場のガラス固化:白金族元素が堆積
ここで尋ねた「他の再処理工場」とは日本初の商業用再処理工場である「六ヶ所再処理工場」(日本原燃)。ここでもガラス固化がうまくいかない。
再処理の過程で出てくる高レベル廃液をガラス固化しようとすると、 「白金族元素」なるものが沈降・堆積して運転性が悪化する。関係者だけは知っている深刻な問題だ。
仏では順調だとして日本は今、何合目?
ガラス固化技術が確立してからでなければ、使用済核燃料の再処理はやるべきではないのではないかという質問に、フランスでは順調だという回答が来た。ではそこを頂上とすれば、そこに立ててない日本は、今、何合目なのかと聞いてみた。
山中委員長は、何合目という質問に対し「政策」の話と回答を避け、規制当局としては、適合性審査で「許可が出せるレベル」だったとかわした。「これから設公認で詳細な設計は確認」するというので、次の質問をした。
設工認の技術議論が始まるまでに2年。ガラス固化技術の確立は?
なぜなら、日本原燃は1993年に六ヶ所再処理工場を着工。新規制基準に基づく許可を得たのは2020年。その後、設計及び工事の計画の認可(以後、設工認)については、「電力会社、メーカー、ゼネコンの支援を受けて申請から1年10ヶ月で本来の技術的な議論を始める段階に来た」との説明が、規制庁担当者から原子力規制委員会であったからだ(動画の頭出しはこちら)。
その程度の技術力しかない日本原燃に、ガラス固化技術が確立できるのか?
六ヶ所再処理工場は27回目の延期
それでなくとも日本原燃は2024年8月29日に、「2026年度中」としていた六ヶ所再処理工場の竣工延期を「2027年度中」と27回目の延期を行った。
設工認審査でやっと「技術的議論ができるようになった」と、子ども扱いされている日本原燃が、JAEAでも難航中のガラス固化技術を確立できるのか。
まとめ
・東海再処理施設は、廃止措置期間が長すぎて施設が劣化を始めている。
・六ヶ所再処理工場は、1993年の着工から既に31年。まだ何も始まっていない。
高速増殖炉もんじゅと同様に、後者も断念して廃止措置へ向かうのが、妥当だと思わない人がいるだろうか。これは単に規制当局だけの問題ではなく、「政策」の問題でもあり、困ったことに、おそらく、このことを気にかけているのは野党のごく一部の国会議員だけなのだ。
【タイトル写真】
2024年10月2日原子力規制委員会後の会見で筆者撮影。