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他人のIDで中央制御室に侵入:東京電力柏崎刈羽原発の「核物質防護」違反おさらい

2020年9月、柏崎刈羽原発で、
①「他人のIDカードで中央制御室に侵入した事件」。
②そのことが、マスコミにリークされる(2021年1月)まで東京電力が隠蔽した事件、さらには
③「核物質防護設備の機能が一部喪失していた事件」について。
3つの事件がある中で、②は放念されてきたが、①③の簡単なおさらい。

直接の条文を適用しない原子力規制の歪み

本来なら、核物質防護規定(第43条の3の27)違反は(第43条の3の27第2項による読み替えで)、原子力規制委員会は、発電用原子炉設置許可を取り消すことができる。または1年以内の運転停止を命ずることができる第43条の3の20第2項)。

ところが、原子力規制庁は、法律を読めない原子力規制委員たちに、核物質防護規定に関する条文を適用させずに、規制基準の条文第43条の3の6第1項第4号)をあてて、「検査」を行うこととした。

しかし、この条文は設置許可(また、新規制基準への適合性)するための条文であり、設置後に違反が起きた時のものではない。

(許可の基準)
第43条の3の6 原子力規制委員会は、前条第一項の許可の申請があつた場合においては、その申請が次の各号のいずれにも適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない。
四 発電用原子炉施設の位置、構造及び設備が核燃料物質若しくは核燃料物質によつて汚染された物又は発電用原子炉による災害の防止上支障がないものとして原子力規制委員会規則で定める基準に適合するものであること。

原子炉等規制法より

なのに、わざわざ、違反に対して検査する。検査を通過すれば、再稼働が可能であるという法律が想定していないストーリーが作り出された。大したことではないと考えているか、一発の違反で原子炉設置の認可を取り消す判断ができないか、または意志がないか、または権限を行使する責任に耐えられないのだ。原子力規制の歪みが露呈した事件だった。

官僚が敷いたレールの上を走った原子力規制委員

検査は、検査項目を追加をしながら3段階にわたって行われた。原子力規制庁が敷いたレールの上を、原子力規制委員会が通り、今日に至る。以下、

柏崎刈羽原子力発電所に対する追加検査の結果の報告 P29 より
柏崎刈羽原子力発電所に対する追加検査の結果の報告 P29 より
柏崎刈羽原子力発電所に対する追加検査の結果の報告 P29 より

私は捻くれているので、これは時間をかけて十分にほとぼりを覚まし、再稼働をするプロセスの一つだとしか受け止めることができない。これは今日以前の流れ。今日の原子力規制委員会の議題1については、議題2の適格性の確認も同様、別途書く。

【タイトル写真】

麻布台ヒルズの手前に立つ原子力規制委員会が入っているビル。11月29日筆者撮影。


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