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規制委提案にならないよう経産官僚が「頭の体操」:原発の運転期間

GX脱炭素電源法案(既報)の審議が、衆議院の経済産業委員会で始まっている。4月7日には、原子炉等規制法から運転期間を削除し、電気事業法に移す提案が原子力規制委員会の提案にならないようにとの経産官僚の「頭の体操」が、閣僚の知らないところで行われた過程を示すメモが明らかになった。

立法政策意図すら認めない山中委員長

原子力規制委員会は、福島第一原発事故の翌2012年に、原子力の推進と規制を一つの組織が担う問題を解消するため、安全に関する事務を「一元的に司る」としてできた(内閣官房「原子力規制委員会設置法案の概要」2012年6月15日)。

4月7日、阿部知子議員は、経産委員会でその該当箇所を示し、山中伸介原子力規制委員長に「原子力の安全のための規制として運転期間の制限が置かれたことを理解しているか」を質問。単に2012年の立法時の政策意図を確認するだけの質問に、山中委員長は答えず、今回も令和2(2019)年に「運転期間については安全規制ではないという結論を得た」と強弁した。

就任半年間で、山中委員長は、国会答弁のはぐらかし方を習得したようだ。

炉規法改正案は、本来、環境大臣から提案

阿部議員は、もしそうならそうと、「主務の大臣である環境大臣から規制委員会の案件について請議を行う」とのルール通りに、正面から環境大臣が請議にかければいいではないかと質問。

4月7日衆議院経済産業委員会への阿部ともこ議員提出資料

これに対して、山中委員長は「私どもが関係することではない」と言い放ち、小林茂樹環境副大臣が(国会の仕切りで、経済産業委員会に答弁に立てる大臣は経済産業大臣のみ)環境大臣に代わり、西村明宏環境大臣には「状況の報告がされている」と答弁した。

昨年7月、エネ庁「規制委が提案者とならない」必要

これに対して、阿部議員は、昨年7月28日のメモだとして、以下の資料を提示した。「昨日、資源エネ庁からいただいた資料があります。ああ、そうかと思いました。これはこの間、資源エネ庁と原子力規制庁が7回にわたる面会を行なっていた時の経産省側のメモ。やっと出てきたんです。そこの2番目に『規制委が主請議・提案者とならない法構成が必要』と書いてある。」

4月7日衆議院経済産業委員会への阿部ともこ議員提出資料

「頭の体操で法律が変えられたら困る」

阿部議員:こんなことを経産省側からなぜ指示するんですか。大臣は知っていたんですか。
西村康稔経産大臣:私自身は、このメモの存在は2週間ほど前に初めて見たものであります。当時、担当者がさまざまな法改正に向けての頭の体操、準備をする中で、いろいろなアイデア、考えを個人的に整理をしていたというふうに承知をしております。
阿部議員:個人的な整理で、頭の体操で法律が変えられたら困るんです。そして、環境省の環境大臣の請議としないということまで何で官僚が決めるんですか。(略)7月から年末年始にかけてこうした検討が省庁間で行われて(略)原子炉等規制法から勝手に電事法まで持っていって、おまけに束ねでやりましょうと。なぜ頭の体操でここまで言えるんですか。秘密裏の暴走というべきですよ。

阿部議員からの「政務側としてのお話し合いはいつ、どこであり、メモはどうなっているのか」との質問に対しては、西村経産大臣は「意思決定をする閣僚会議であるとか、あるいはGX実行会議であるとか、こういったものについては議事録を公開している。閣僚同士の口頭でのそうしたやり取りについては、大きな方向性について常に確認しながら進めておりますが、何か記録を残していなければならないという公文書管理法状の何かそういう規定があるわけではない」と言い放った。

原発政策の転換を閣僚はどう議論したのか?

しかし、公文書管理法は、第4条で、行政機関の「意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう」「次に掲げる事項その他の事項について、文書を作成しなければならない」として、「法令の制定又は改廃及びその経緯」が明示してある。その趣旨を考えれば、言い放つことができない答弁ではないか。経済産業委員長は「後刻、理事会で協議する」と引き取った。

原子力の推進と規制を分離するとして同時に制定された原子力規制委員会設置法及び改正原子炉等規制法。それを180度回転して元に戻すのが今回の改正案だ。提案の「頭の体操」段階から一体化していたことも知らずいた閣僚たちが、どのように、その歴史的意味を考えたのか、考えなかったのか。原発事故で著しい影響を受けた国民には知る権利がある。

4月7日の経済産業委員会では、以下の議員がそれぞれ興味深い視点から質問をおこなっているので、視聴をお勧めしたい。

山崎誠(立憲民主党・無所属) 
阿部知子(立憲民主党・無所属)
神津たけし(立憲民主党・無所属)
前川清成(日本維新の会) 
笠井亮(日本共産党) 

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「7月28日から10月5日の前までの間における原子力発電所の運転期間に係る原子力規制庁と資源エネルギー庁とのやりとりにおいて使用した資源エネルギー庁作成の資料」P13 より(2023年4月6日に経産省から入手した阿部ともこ衆議院議員事務所より提供)↓


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