見出し画像

議題に2つの問題を隠す原子力規制庁

公開を迫られた都合の悪い情報は、情報の山に隠されることがある。映画「ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男」でもそんな場面があったが、まさか公開会議でもそんなことがあるのかと、2月15日の原子力規制委員会で思った。

長い議題

2月15日の原子力規制委員会の議題2は、当初「原子炉等規制法改正に係る事前評価及び発電用原子炉施設の劣化管理等に関する検討チームの設置」となっていた。(規制委員たちの討議の結果、上記赤字で修正されたように、「原子炉等規制法改正に係る事前評価及び高経年化した発電用原子炉の安全規制に関する検討チームの設置」となる。)長い議題だ。

パッと見で、これは「原子炉等規制法改正に係る事前評価」を「発電用原子炉施設の劣化管理等に関する検討チーム」で行う是非を諮る議題だと勘違いした。しかし、違った。2つは別々の議題で、どちらも別々に重要だった。

1/2 「原子炉等規制法改正に係る事前評価」

法改正の「事前」評価?

議題の前者「原子炉等規制法改正に係る事前評価」(資料2のP2〜11とP13)は、行政評価法に基づいて総務省に提出する事前評価案だった。行政評価法では、法改正を行う際、閣議決定前までに、改正について事前評価を行うよう定めている。

しかし、運転期間を削除する原子炉等規制法案について原子力規制委員会は、すでに13日の臨時会議で決定済みで「事前評価」もへったくれもない。意味を持たないタイミングで委員たちに評価案を差し出す事務方(規制庁職員)の姿勢は、昨年10月5日の原子力規制委員会前に、資源エネ庁と法案の事前協議を済ませていたこと(既報)と同根だと思った。

運転期間の年限を外すことが「規制緩和ではない」?

そのタイミングはともかく、文案に異議を挟んだのは石渡委員だった。

2023年2月15日 原子力規制委員会資料2に修正される前に、
筆者がオンラインで聞きながらスクリーンショットした元の資料2の2頁。

石渡委員は、案には「今回の措置は規制緩和ではない」と書いてあるが、40年、60年というハッキリした年限を外して、30年から10年ごとに評価を行うということが「規制緩和ではない」と、どうして言えるのか、説明が必要だと指摘。

これに対して、金城原子力規制企画課長が、「運転期間は安全規制ではない」ので、これを規制緩和として捉えるのは妥当ではない、山中委員長が国会で答弁したと述べ反論。

石渡委員は再び、「年限が決まって、これ以上は運転できませんということになっていたものを、今の法文だけを読めば、これは無限に10年ごとにいくらでも延ばせることになるわけですよね。それが規制緩和ではないということは、私は常識的には納得できない」と述べたが、再び金城課長が抗弁、山中委員長、金子次長が次々と抑えにかかった。結果、「今回の措置は規制緩和でない」はそのまま、赤字(以下)で木で鼻をくくったような説明が加わった。

石渡委員の異議を受けて差し替えられた2023年2月15日原子力規制委員会資料2

行政評価:目的は国民への説明

さて、評価の根拠法である「行政評価法」第1条には、「政府の有するその諸活動について国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的とすること」と書かれている。政策評価の在り方(第3条)として、「政策効果を把握」することを基礎として、「必要性、効率性、有効性」の観点などから評価せよとある。「政策効果」とは、行政行為が「国民生活及び社会経済に及ぼし、又は及ぼすことが見込まれる影響」のことだと定義されている。

だから本来は、運転期間の削除が国民にどう影響するのかを把握してからでなければ、改正の是非は決められない。しかし、そのような観点からの討議はなかった。あったのは山中委員長が使った金科玉条(既報)「運転期間は原子力規制委員会が関わるべき事柄ではない」(R2年見解)だけだった。

「今回のケースになじみにくい」と誘導

実際には、金城課長は、行政評価法には「行政が関与する必要があるのかといった基準」があり「市場活用、経済学的な視点で構成されている評価であることを念頭に」説明を聞いてほしいと述べて、ミスリードした。

伴信彦委員はまんまと誘導されて、「この事前評価書なのですが、先ほど説明があったように、基本的には市場原理、あるいは業界のガバナンスに委ねた場合に、問題がある、問題が生じる可能性がある場合にのみ行政が関与すべきであるという一種の価値観」で、「今回のケースになじみにくい部分がある」(2023年2月15日 原子力規制委員会議事録 (12頁)と誤解した。行政評価法にはそんなことは一言も書いていない。

もし、福島第一原発事故の後に原子炉等規制法に盛り込まれた「運転期間」を原子力の安全規制から外すことが「国民生活及び社会経済に」どのような影響(政策効果)をもたらすのかを、原子力規制委員たちが、「必要性、効率性、有効性」の観点から討議していれば、2月8日と13日の原子力規制委員会の結果は、違ったものになっていたのではないか。悪質な説明であるとしか言いようがない。

委員会終了後の記者会見では、「今日の資料あるいは説明だと、民間に委ねる事業があるかどうかというような観点からの評価なんだという説明しかありませんでした。国民に説明するための評価法であるという説明は受けられたか」を山中委員長に尋ねた。山中委員長は「評価法の目的については説明を受けていると思う」と答えたが、筆者にはとてもそうは思えない。

2/2 「高経年化した発電用原子炉の安全規制に関する検討チームの設置」

(に続くが、これから作業します)

【タイトル写真】

2023年2月15日原子力規制委員会資料2のスクリーンショット

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?