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規制委:老朽原発審査の骨抜き案

原子力規制委員会は12月21日、原発の運転期間に関する経産省(利用政策側)の方針が決まったということで、高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の概要(案)https://www.nra.go.jp/data/000414718.pdfの3〜4ページ)を明らかにした。12月22日から1月20日まで意見募集するという。

これはやがて法律案の条文となって国会に提出されるものの骨子だと考えられる。全文を以下に引用し、その下に注視すべき点を挙げる。

高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の概要(案)

1. 運転開始後30年を超えて発電用原子炉を運転しようとするときは、10年を超えない期間における発電用原子炉施設の劣化を管理するための計画(長期施設管理計画(仮称))を策定し、原子力規制委員会の認可を受けなければならないものとする。

2.1.の認可を受けた長期施設管理計画の期間を超えて発電用原子炉を運転しようとするときは、1.と同様に、10年を超えない期間における長期施設管理計画を策定し、原子力規制委員会の認可を受けなければならないものとする。これ以降も、同様とする。

3.1.又は2.の認可を受けた長期施設管理計画をその期間中に変更しようとするときは、原子力規制委員会の認可を受けなければならないものとする。ただし、その変更が軽微なものである場合には、原子力規制委員会に届け出るものとする。

4.長期施設管理計画を策定し、又は変更しようとするときは、その変更が軽微なものである場合を除き、発電用原子炉施設の劣化の状況に関する技術的な評価(劣化評価)を実施しなければならないものとする。

5.長期施設管理計画には、計画の期間、劣化評価の方法及びその結果、発電用原子炉施設の劣化を管理するための措置等を記載しなければならないものとする。

6.長期施設管理計画の認可の基準は、劣化評価が適確に実施されていること、発電用原子炉施設の劣化を管理するための措置が災害の防止上支障がないものであること及び計画の期間において生じる劣化を考慮しても技術基準に適合することのいずれにも適合していることとする。

7.発電用原子炉設置者は、1.又は2.の認可を受けた長期施設管理計画に従って発電用原子炉施設の劣化を管理するために必要な措置を講ずるものとする。その講ずべき措置の実施状況を原子力規制委員会が行う原子力規制検査の対象とする。

8.原子力規制委員会は、認可を受けた長期施設管理計画が6.の基準に適合しないと認めるとき又は発電用原子炉設置者が7.の定めに違反していると認めるときは、発電用原子炉設置者に対し、劣化評価の実施、長期施設管理計画の変更その他発電用原子炉施設の劣化を管理するために必要な措置を命ずることができるものとする。

9.原子力規制委員会は、発電用原子炉設置者が1.若しくは2.の定めに違反して発電用原子炉を運転したとき又は8.の原子力規制委員会の命令に違反したときは、発電用原子炉の設置許可を取り消し、又は1年以内の期間を定めて運転の停止を命ずることができるものとする。

10.発電用原子炉設置者が1.若しくは2.の定めに違反して発電用原子炉を運転したとき又は8.の原子力規制委員会の命令に違反したときについての罰則を設けるほか、1.〜9.を実施するための手数料に関する定めその他所要の定めを設ける。

11.新たな制度への円滑な移行を図るため、次のような準備行為その他所要の経過措置を設ける。
①新制度施行までの一定の期間中、あらかじめ長期施設管理計画の申請及び認可ができるものとすること
②新制度の施行前に認可を受けたときは、新制度が施行された日に、新制度下での認可を受けたものとみなすこと
③新制度の施行前に認可を受けていないときは、新制度が施行された日に、新制度下の申請とみなすこと

12.なお、運転開始後30年を超えるが運転しようとしていない発電用原子炉については、この枠組みの対象とせず、長期停止している発電用原子炉に関する既存の枠組み、すなわち保安規定に定める施設管理に関する特別な措置の中で劣化管理を行うことを求めることとする。

出典:高経年化した発電用原子炉に関する安全規制の検討(第5回)

注視すべき点の1つは以下の通り(あくまで一取材者が現時点で強調したい1つに過ぎないことにご留意ください)。

「運転しようとしていない」原発の延命策(案)

「1」と「12」を見比べてほしい。

1に、「運転開始後30年を超えて発電用原子炉を運転しようとするとき
12に、「運転開始後30年を超えるが運転しようとしていない発電用原子炉について」とある。

は、「運転開始後30年を超えて発電用原子炉を運転しようとするとき(略)長期施設管理計画(仮称)を策定し、原子力規制委員会の認可を受けなければならない」とある。違反したら設置許可を取り消すとある(上記9番)。

ところが、12は、「運転開始後30年を超えるが運転しようとしていない発電用原子炉については、この枠組みの対象とせず」とある。

「運転しようとしていない発電用原子炉」ってなんでしょう?

国会答弁でも老朽化の審査は「暦年」で審査をすると答弁しています。原子力規制委員会の中でも「カレンダーイヤー」「暦年で」と何度も言っています。

運転しようとしていない発電用原子炉」がもし「未申請」のことを指すなら、以下、赤枠で囲った原発。東京電力の柏崎刈羽原発の5基と東通原発1基、東北電力の1基、中部電力の浜岡原発1基は、30年を過ぎて行っても「暦年」でやりますという老朽原発審査の対象外となる。

出典:経産省資料に、「未申請」原発を赤枠で筆者加筆

「1. 運転開始後30年を超えて発電用原子炉を運転しようとするときは、10年を超えない期間における発電用原子炉施設の劣化を管理するための計画(長期施設管理計画(仮称))を策定し、原子力規制委員会の認可を受けなければならないものとする。」

「1. 運転開始後30年を超える発電用原子炉については、10年を超えない期間における発電用原子炉施設の劣化を管理するための計画(長期施設管理計画(仮称))を策定し、原子力規制委員会の認可を受けなければならないものとする。」

とすれば、「12」は不要で、例外なく暦年で審査をすることになり、赤枠9基は廃炉となる。それを避けるために、事業者のために「12」を追加し、温存を図ったと考えられる。


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