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原発は気候危機対策になるか? 研究会の問いかけ

岸田政権が閣議決定した「GX実現に向けた基本方針」(2023年2月)は、再生可能エネルギーと原発を「エネルギー安全保障に寄与し、脱炭素効果の高い電源」であると位置づけて、「最大限活用する」とした。しかし、それは本当か?

この度、「気候変動対策として原発が本当に使えるのか」を問い直す「原発の気候変動脆弱性研究会」をNPO法人原子力資料情報室が設置し、その研究会報告書「原発は気候危機に耐えられるかについて、10月31日に記者発表した。(以下は筆者メモ。報告書はこちらから)。

第1章で、
原発から排出される二酸化炭素排出量を他の電源による排出量と比較。

第2章で、
経済性な観点から、原発が気候変動対策として効果的な選択肢かを検討。原発は、計画から稼働までの期間が長く、高コスト。排出される二酸化炭素の多くがウラン採掘から燃料製造までの過程で発生する。

第3章は、
原発の安全性が、気候危機による海面上昇、水温上昇などで脅かされていることについて。3章執筆者の鮎川ゆりかさん(千葉商科大学名誉教授、CUCエネルギー株式会社取締役)は、海外では多くの学術論文が発表されていると紹介。

気候変動による深刻な影響を回避するためには、世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて1.5度に抑える、いわゆる「1.5度目標」が、気候変動枠組条約締約国会議で掲げられている。「今、その1.5度にどれくらい近づいているかといえば、すでに1.24度」との研究もあり、対策を急ぐ必要があると強調。

例えば、米国国防総省(DOD)は、2010年から海面上昇を国家の安全保障問題と捉え、米国議会は2019年、DOD施設は、設計段階から海面上昇の影響を評価し、防災対策を施すよう法令化した。

また、「ローレンス・ウイルカーソン元米国長官主席補佐官は『辺野古は自然災害にも攻撃にも脆弱で、軍事基地を沿岸部に建設する時代でもありません。気候変動による海面上昇で自然災害を被るリスクは高まっています』と朝日新聞耕論(「辺野古 米国から見たら」2019年2月22日)で語っています」(鮎川さん)

「日本海沿岸には廃止措置中を含め26基の原発がある。2022年12月の新潟県での記録的大雪は、柏崎市、長岡市など国道8号、17号が26時間通行不能になった。にもかかわらず、日本では危機意識が低い」と鮎川さん。

第4章では、
日本では、福島第一原発事故を踏まえて策定された新規制基準には、気候変動対策を義務づける規定がないと指摘。

第5章は、
2005年から国際的には使われるようになった「気候安全保障」について。気候変動は、安全保障上の脅威を構成する要件、「人為性」、「能力」(影響力があること)、「意図」を満たしているという認識からきた考え方だと、5章執筆者の蓮井誠一郎さん(茨城大学 人文社会科学部 教授)。

例えば、気候現象や水温上昇など水を原因とする原発停止件数が2000年代以降、急激に増加しているという。以下は国際原子力機関(IAEA)の資料。

報告書 第5章「気候安全保障と原発 ―その論理と対策としての原発の有効性の検討―」より

水を原因とする原発停止は、海岸で27%、河川で45%、湖で28%起きていて、この30年間で約5倍に増加し、2009年以降は顕著に加速している。[「水」が「干ばつによる水不足や川や湖の水位低下で冷却水が取れなくなる、または水温が高くなり、冷却水として使えなくなるなどのケース」は3章P.13、14にも)。]

「IAEAはこのグラフを、停止が増えても、損失した発電量(細い黒線グラフ)は小幅だ、と楽観視するグラフとして使っている」と蓮井さん。右の灰色棒グラフは、送電網自体の障害(Grid failure)件数で、「件数としては水が原因の原発停止は、その3分の1程度だと見せているが、Grid failureには、嵐の巨大化といった理由で送電線が切れたケースも含まれているはずだ、という。

最後に、研究会メンバーの大島堅一さん(龍谷大学 政策学部教授)が、「原発問題と気候変動の共通点は、不可逆的かつ不均等に被害が発生することだ」、「原発固有の問題は、事故リスク、放射性廃棄物問題、技術が進むほどコストは上昇すること、長期利用が前提で再エネと共存できないこと、国により保護政策がなければ成り立たず、原発を持たない電力会社との競争上の不公平があること、安全保障上の脆弱性もある」上に、気候危機対策としても間に合わないとまとめた。

他に相対的に安価かつ短期間で導入できる脱炭素電源がある中、原発を推進することは、他の対策を遅らせることにもつながり、カーボンニュートラルの実現を困難にする。少なくとも、原発を推進する前に、本報告書が指摘した多くの論点を検証するべきである」と報告書は、GXによる原発回帰策を進めようとする現政権に求めている。

【タイトル画像】

原発の気候変動脆弱性研究会報告書 原発は気候危機に耐えられるか」表紙より

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