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原発事故で生じた汚染土の拡散を危惧する市民と環境省、そして国会質問

4月5日(金)、「放射能拡散に反対する会」※が除去土壌の再生利用に関するヒアリングを環境省から行なった。ギリギリセーフで会議室に滑り込んで、ICレコーダーをオンにした。(※「放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会」と誤解しておりました。訂正してお詫びします)

会場に来ていた川田龍平議員がこのヒアリングをもとに、4月9日(火)参議院の環境委員会で、環境省に質問を行った。ここでは、順に記録だけしておきたい。


除去土壌の再生利用に関するヒアリング趣旨

会を代表して和田央子さんがその趣旨を次のように語った。
 「放射能拡散に反対する会」は、除去土壌を再び拡散することを危惧している福島県内外の市民による団体です。環境省は福島県の中間貯蔵施設に保管中の東京ドーム11杯分におよぶ除去土壌を再生利用するため、省令改正を2024年度中に提出する予定であり、これを阻止したいと考えています。
 環境省は法改正もせず、大臣の一存でできる省令改正という手段で重大な8000ベクレル/kg基準を恒久化しようとしていますが、これは将来、大きな禍根を残すと考えます。
 環境省が理解醸成しようと精力的に進めていますが、必要な情報が説明されず、都合のいい説明だけして理解してくれと進めているようなので、質問を出させていただきました」

質問項目と動画

質問項目は以下の通りで、UPLANさんによる動画が公開されている。横着をして、それぞれ貼り付けさせていただく。

放射能拡散に反対する会による環境省への質問

Q1.除去土壌等の県外最終処分にかかる費用は、4,000から6,000億円かかるとの試算(「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦略検討会」第12回)が提示され、報道もされている。この算出根拠をお示しいただきたい。なお、この試算は再生利用にかかる費用は含まれないとのことであるが、再生利用にかかる試算を併せてお教えいただきたい。もし試算されていないようなら、その理由をお聞かせいただきたい。質問回答 動画 冒頭〜

Q2.中間貯蔵施設への汚染土搬入量は、当初の試算である2,200万㎥から1,400万㎥へと、三分の二以下に減少しているが、費用は現在までで1兆1千億円から1兆6千億円へと膨張し、さらに再生利用と最終処分費用が上乗せされるとのことであるが、最終的には3兆円を超える規模になるということか。新たに必要な経費は、改正されたエネルギー特別会計の石油石炭税より繰入れるとのことであるが、詳細な説明を求めたい。
回答 動画 7分目〜

Q3.「中間貯蔵施設整備等影響緩和交付金」「広域的減容化施設影響緩和交付金」に類する、除去土壌再生利用実証事業の受入れ自治体(南相馬市、飯舘村)に対する交付金はあるか。ある場合はこれまでの実績を示されたい。
 また今後再生利用が行われる場合に、そのような制度を構想されているか。
回答 動画 10分目〜

Q4.除染廃棄物という言葉がよく使われているが、環境省Q&Aでは、除染廃棄物の処理についての説明では、除染土壌について書かれている。
 「再生利用という処分」を導入したときに、新たに、除去土壌について「最終処分対象のものは「除染廃棄物」」とし、再生利用対象のものは循環法制にいう「資材」あるいは「有価物」という分けになるのか。
 また、中間貯蔵施設に保管されている「10万ベクレル以上の廃棄物」についても、最終処分場で最終処分されるのか。
回答 動画 22分目頃〜

Q5. 除去土壌の再生利用を積極的に進めたいと考えられているようだが、中間貯蔵施設に埋め立て保管された状態から再生利用までの流れをどのように想定されているのかをご教示いただきたい。
(1)再生資源化は、JESCOまたは環境省の委託業者が行うのか。再生利用を行うとする場合、再生資源化までは国の責任と考えるが、環境省としての見解を伺いたい。
回答 動画 45分目頃〜
(2)再生資源化事業者について、資格を定めるのか。
(3)再生資源化は中間貯蔵施設で行うことが想定されているのか。
回答 動画 46分目頃〜
(4)再生資源化する段階及び資源化された段階での放射性物質の濃度及び
他の土壌汚染対策法に定める有害物質の基準等の適法性確保は、誰が行うことを予定しているのか。
(5)再生資源を引き渡すに際して、再生資源を利用し公共事業等を行う者及び再生資源を利用する事業の決定はどのように行うのか。また、その要件は法令で定める必要があると思われるが、現在どのように考えられているのか。再生事業者の資格審査制度は考えられているのか。
回答 動画 47分目頃〜
(6)再生利用は、長期にわたって放射性物質の管理を必要とするが、適切に行われることを担保する法令等をどのように考えられているのか。
(7)再生利用業者と管理者が異なる場合、または変更される場合があるが、それを可能とする制度を設けるのか。
回答 動画 48分目頃〜
(8)適切な利用、管理について違反をした場合の罰則、及び原状回復命令、自然災害をはじめとして、災害による違法状態が発生した時の考え方と法令はどのように考えているのか。
(9)管理の終期をどのように考えているのか。
回答 動画 49分目頃〜

Q6.2024年1月19日の除去土壌の再生利用等に関するIAEA専門家会合(第2回)は非公開で行われたが、その詳細な議事録を公開して欲しい。公開できないとすればその理由を説明いただきたい。
回答 動画 1時間14分目頃〜

Q7.除去土壌の再生利用等に関する国際原子力機関(IAEA)専門家会合(第2回)サマリーレポートのポイントについて

2024年 1月19日 環境省環境再生・資源循環局
除去土壌の再生利用等に関するIAEA専門家会合 (第2回)の概要 P.5

P.5〈再生利用及び減容〉
1.2番目●「再生利用実証事業により放射線に係る安全性が確認され、[略]必要な科学的知見は得られていると考えられる」とあるが、それは今後、これ以上の実証事業は不要であるという意味か。
回答 動画 1時間20分目頃〜
2.5番目●「環境省が再生利用に関する省令と技術ガイドラインを策定した後、[略]モデル事業の実施を検討」とあるが、「モデル事業」を実施する目的と、その内容はどのようなものであるか。
回答 動画 1時間21分目頃〜

2024年4月9日 参議院 環境委員会質問

川田龍平議員は上記のやりとりをもとに環境省への質問をおこなっている。(以下、参議院インターネット中継からの和田央子さんの書き起こしをもとに構成。)

川田龍平議員:国際原子力機関(IAEA)は、環境省の協力を得て、2023年5月8日から12日まで、東京と福島で、「除去土壌の再生利用等に関する国際原子力機関(IAEA)専門家会合」を開催しました。環境省は昨年9月今年1月にそのサマリーレポートを受け取って、「中間貯蔵施設における除去土壌等の再生利用方策検討ワーキンググループ」で公表しています。この第2回のサマリーレポートを見ると、5ページに、再生利用実証事業により放射線に係る安全性が確認され、省令や技術ガイドラインの根拠となる必要な科学的知見は得られていると考えられるとあります。
 この結果から、これ以上の実証事業は不要ではないかと、特に所沢と新宿御苑で行うとして説明会を1回ずつ行っていますが、もうやる必要がなくなったと各自治体にはっきり通知すべきではないでしょうか。

環境省(前佛和秀環境省資源循環局長):除去土壌の県外最終処分の実現に向けましては、再生利用により最終処分量を低減させることが必要でございます。ご指摘の福島県外の実証事業につきましては、これまでの福島県外での一定の実証事業の成果を踏まえ、再生利用の安全性等について多くの方にご覧頂くことで、更なる理解醸成を図ること等を目的としたものでございます。ご指摘の通りIAEA専門家会合第2回サマリーレポートにおきましては、これまでの再生利用実証事業により、安全性が確認され、省令等の根拠となる必要な科学的知見が得られていると考えられるという見解をいただいているところです。
 また一方で福島県外での実証事業について、これについて非常に重要であり、国民が理解醸成する可能性を有していることや、省令等を策定したあと、効果的に実施されることで除去土壌の再生利用に対する国民の認知と社会的受容性が向上する可能性があるとの見解もIAEA等から示されているところです。
 現地での説明会等に対してご意見をたくさんいただいておりますが、これに対して丁寧に答えていかなければいけないと考えているところです。再生利用実施に向けては国民のご理解とご協力が重要と考えております。IAEA等のこうしたご指摘をふまえ実証事業の進め方について検討して参りたいと考えております。

川田議員: 新宿区民も、所沢市民も、所沢市議会も反対しているということで、これそんなに順調に行ってるんですか。新宿と所沢の事例は。

前佛局長:福島県外での実証事業につきましては、これまで地域の住民の皆様方から安全性や管理方法等について関する様々な御意見をいただいているところでございます。
 環境省といたしましては、これらのご意見に対してよりわかりやすく説明するためにはこういった再生利用にかかる基準とか技術的な取組の成果をとりまとめることが必要と考えており、今般IAEA等の国内外有識者等のご助言等をいただきながら検討を進めているところでございます。

川田議員: 再生利用実証事業ですね、これ省令や技術ガイドライン、安全性も確認されて必要な科学的知見も得られているというのに、さらに実証事業やる必要どこにあるんですか。一体いくらの予算がつけられているのですか。すでにおこなった実証事業の科学的知見があるなら、改めて実証事業を所沢や新宿でやる必要なく、税金の無駄遣いではないかとの声もある。いくらかけているんですか実証事業に。

環境省(前佛局長):当初この事業に関わる所沢、新宿ということで約5億円程度計上したところです。 

川田議員:どういった事業者が関わっているのでしょうか。

環境省(前佛局長):はい、特定の企業とかはございませんが、そういった工事ができるところにお願いしようとして準備していたところです。

川田議員 昨日聞いたところではコンサルタントですとか、たぶん理解醸成のためということで、東京駅の看板とか色々使って、電通使ってやるんだと思うんですが、5億円も使うんですね。事業全体でいうと6千億から8千億円と、一兆円くらいいくんじゃないかという話もあって。この原発事故後始末にかかるお金というのは一体いくらかかっているのかわからないぐらいの規模のお金がどんどんどん膨らんでいるということで、少しでも意味のない実証事業だったらやる必要ないんじゃないかと思います。
 環境省は今後8000㏃/㎏以下の汚染土壌は公共事業などで再利用するための省令や基準をつくるつもりでいますが、そもそも省令以前に根拠となる法律がないとも指摘されています。ここにおいても省令や基準を作った後、実証事業やっても意味がないというのは明らかです。
 ということは新宿でも、所沢でも実証事業できなければ省令や基準を作らないということでよろしいですか。

環境省(前佛局長):繰り返しになりますが、県外での最終処分場を実現するに向けては、再生利用が重要と考えています。そのためにはいわゆる技術的な指針、基準の指針となります省令になりますが基準が必要となります。そのためにはIAEA等のご協力をいただきながら国内外の有識者にもご協力いただきながら基準の策定に向けた取り組み、検討を進めさせていただきたいということでやはり基準が必要と考えております。

川田議員:福島県民の方も言っていましたが、最初は管理するために中間貯蔵施設に入れると、そこで再生利用というのは最初は言われていなかったと、後付けで再生利用が入ってきて、特措法の中で再生利用というのは基本方針には入っているかもしれないけれども、これだって検討ですよね。そしてその再生利用についてもお金をどんどんどんどん際限なく使って行こうということで実証事業はされるということですけれど、実証事業ができなければ省令や基準は作らないということでよろしいですね。

環境省(前佛局長): 先ほどもお答えさせていただきましたが、福島県内での再生利用実証事業を実施しており、そこでさまざまなデータ等は得られております。そのデータ等も基に、まずは省令等となるものについて、技術的な基準をまとめていきたいと思っております。

川田議員: じゃ、やっぱり新宿や所沢いらないじゃないですか。やめてくださいよ。この実証事業。必要ないですよね。福島でもやっているんだから。福島でできているのをなぜ更に広げようとするんですか

環境省(前佛局長): 福島県外実証事業は、県外での今後の実証に向けてやはり広く国民の皆様方に多くの方にご覧いただくことで、広く理解醸成をしていかなければいけないと考えているところです。今後の実証事業の在り方、進め方につきましては、さきほどお答えさせていただきましたが、検討して参りたいと考えているところです。

川田議員: 環境省がやろうとしている所沢は国立障害者リハビリテーションとか防衛医大の隣接地ですよ。ここで実証事業をやろうとしているんですけれど、周辺住民は所沢市議会も反対でまとまってますよ。どうしてやろうとするのか意味がわからない。ここでやろうとすることで結局、より反対の意見が広がって、全国に放射能をばらまくようなことをするというのはどうかと思いますよ。
 本当に8000㏃/㎏を固定化するようなことはやめて頂きたいと思うんですが。非常事態だから8000㏃/㎏以下だったものを非常事態ではないものを恒久的に8000㏃/㎏以下にしようとしているんじゃないですか。

環境省(前佛局長): 今私どもとして8000㏃/㎏という数字を設定させていただいていますが、今それにつきましてはIAEA等を含め、有識者の方々とご議論させていただいているところでございます。

川田議員: IAEAからも言われているのは、実施主体である環境省と、監督庁である環境省と一緒であることはおかしいと言っているじゃないですか。そこを環境省を無理矢理自分達が全責任を取るように言っていますが、じゃあ水俣病はどうなんですか。本当に責任取る気あるんですか。将来的に今だけ乗り越えればいいということではなく将来のことを考えたら絶対にやらなくてよいことはやらないほうがいいとおもいます。

2024年4月9日 参議院 環境委員会質問、参議院インターネット中継

【タイトル写真】
「放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会」による環境省ヒアリング。2024年4月5日、筆者撮影。


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