ユニバーサルミュージックミュージックQ2決算

毎週、音楽産業のトピックについて英文記事を一つ選んで要約しご紹介する連載、第二回目です。私の古巣、かつて三年ほど所属したユニバーサルミュージックグループ(UMG)のQ2決算発表がありました。上記記事からその概要をお伝えします。

サマリ

  • 全体の売上は+9.6%の対前年成長率。しかし、サブスクストリーミングでの売上は6.9%とアナリストの予測を下回る。

  • Adjusted EBITDA(調整後税引前利益に支払利息、減価償却費を加えて算出される利益)は対前年成長率+11.3%とアナリストの予測通り

  • 1−6月上半期の純利益は+46%で、一株あたり利益も前年同時期に0.34ユーロだったのが0.5ユーロに上昇

  • 利益率は改善されたものの、7月25日欧州市場で株価は23%下落。サブスクストリーミング売上の予測ショートが投資家の心理に影響したのでは、というのがUMGの見解

UMG isn’t particularly worried about this one quarter of slower-than-expected streaming revenue growth; it’s playing a longer game.
長期的な視野で考えれば、今回の四半期未達は心配していないとも。

なぜサブスクストリーミング売上成長は鈍化したのか?

第一回で紹介したSpotifyの好決算と比較するとUMGはやや異なる動きです。なぜでしょうか?その答えが以下のコメントにあります。
the occasional illusion of performance weakness caused by price hikes at streaming services over the past few years.
一時的にパフォーマンスが弱く見えてしまうのは、ここ数年のサブスクサービスの値上げによるもの
price hikes at Apple Music and Amazon Music that occurred more than a year ago have now been “fully annualized” into UMG’s numbers, meaning they no longer boost Universal’s YoY growth.
ここ数年のApple MusicとAmazon Music Unlimitedの価格上昇が売上成長に全て織り込まれ、UMGの対前年成長率を加速させることはない

上記をもう少しわかりやすく噛み砕くと、

1)Apple MusicとAmazon Music Unlimitedが値上げした(私の記憶では確か+10%ほど)結果、通常のサブスクストリーミング売上の対前年成長率に下駄を履かせた形となった
2)この2社のサブスク会員数が、値上げによって減少せず例え同数だったとしてもUMGの2社から得られる売上は+10%維持された。(おそらく、会員数は純増しており、値上げと会員数純増のインパクトを享受できていたはず)
3)その影響が一年以上経って、前年同期として比較対象となる値上げ直後は下駄をはかされていた状態であり、そのインパクトが一巡した対前年成長率は鈍化。と、いうことなのだろうと考えます。
アナリストは、同様の現象がSpotifyの値上げ(昨年Q3に実施)でも見られることが予測され、UMGのサブスクストリーミングの成長率はもう一段鈍化するのでは、と予測しています。

四半期ごとの売上を追いかけるようなビジネスではない、というのは、UMG Chairman and CEO Sir Lucian Graingeのコメント
UMGとして以下のコメントも出ています。
while we report results quarterly, we manage the business for long-term success. We think in multiyear cycles and anticipate and embrace variations in certain business lines

確かに、世界的なヒット、スーパースターを生み出すことは単年、あるいは四半期ではできないことで、数年にわたって取り組むものだと思います。四半期ごとの成長率の上がった、下がったで長期的な企業価値は損なわれるものではないと思います。

その他4つのトピック

  • 今回の決算報告にFaceBook, TikTokからの収益は入っていない
    FaceBookについては、音源使用をもっと最適化できるように共同で開発中、TikTokについては既報の通り、音源使用に関する交渉を行なっていたので、新しい条件での収益が影響を及ぼすのは今後の見込み

  • Spotifyの有料課金ユーザーのうち2割のユーザーがさらに月額5ドル高い”Super Premium”に移行している

  • UMGとしては潜在的に1億8000万人のユーザーが今後ストリーミングサービスを利用すると予測

  • UMGがカタログで持つ過去の有名楽曲がAIテクノロジーを使って多言語で歌われるかも

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