メンタルと腸内環境と腸脳相関

心の健康や行動パターンに影響を及ぼす腸内環境
腸内細菌のバランスがよくなると、健康の維持や向上につながるというのは、ここ最近多くのテレビや雑誌などで取り上げられ、認識される ようになってきました。今回は腸内細菌が身体の健康だけでなく、心の健康にも関わっているという知られざる一面にスポットを当ててみましょう。
脳腸相関=脳と腸のつながり=
生物には脳と腸、どちらが先に備わったと思いますか?地球上に生物が誕生したのが約40億年前、当時生命体は消化器官を備えていましたが、脳はなかったと言われています。
例えば、腸機能のみを持つ生物の代表としてよくミミズが挙げられますが、エネルギーを得て自己増殖を続けていくことに生命の基本がありますので、腸などの消化器官が先に備わったというのは、うなずけるところです。
腸は「第二の脳」とも呼ばれ、神経系や液性因子を通じて脳と腸は互いに影響しあっているとされてきました。『脳と腸は神経系を通じて連 携しており、適正な腸内細菌が心の健康によい』とするという考えは以前からあったのですが、最近の研究では、自閉症やうつ病と腸内細菌叢に関係があるとい う報告もあります。
身近なところではストレスが腸内細菌のバランスを変化させることがあります。例えば、宇宙飛行前後の宇宙飛行士や、大震災後などの高ストレス状態を体験した人の腸内細菌の状態を前後比較すると、腸内細菌に変化が見られることが報告されています。
行動パターンと腸内細菌
腸内細菌の違いが生物の行動パターンに違いを与えるという可能性を示す、興味深い報告があります。異なる場所で飼育した腸内細菌の組成 やバランスが異なるマウスに、一定の刺激を与え、行動変化を観察すると、行動結果に大きな違いを生む可能性があるというのです。 無菌環境で飼育されたマウスと、普通の環境で飼育されたマウスとでは、行動面で大きな違いが出ることがわかっています。
例えば腸内が無菌のマウスでは、動けない様にするストレスを掛けると特定のホルモン分泌が上昇したり不安に関係する行動でよく知られる”多動”が見られたりします。多動については、無菌の環境で飼育されたマウスに、ビフィズス菌を腸に定着させてやると、多動が減少し、不安レベルは低下することが報告されています。
また腸内細菌が行動面へ及ぼす影響は生物が幼少期のほうがより大きいとも考えられています。腸内細菌が行動に影響を及ぼすということは、マウスのようなげっ歯類から昆虫レベルまで広く見られることだと考えられています。
人の心の健康と腸内細菌

腸内細菌が人の心の健康に及ぼす影響については、まだ今後も検証の必要がありますが、腸内細菌の代謝や情報伝達など、これまでの研究からさまざまな考察や仮説が組み立てられるようになってきました。
脳 と腸はつながっていて、脳から指令が出だされるとともに腸からも情報が脳に伝えられ、情報を共有しています。腸にいる莫大な数の腸内細菌はさまざまな代謝 物質を排出しています。その中にはr-アミノ酸(GABA)やポリアミンなどの神経系に作用する可能性がある生理活性物質が含まれています。
腸内細菌が作りだす物質には心の健康を保つ物質と体の健康を保つ物質がありますが、これらには共通部分も多いことが分かっており、体の健康を維持・向上させるために必要な腸内細菌が、心の健康状態をよくする方向にも役立つのです。
つまりストレスケアにも配慮すれば心、身体、腸のよりよい循環を生み出せる可能性があるのです。

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