今さらながらウィッチャー3の魅力を紹介するよ

 ウィッチャー3が楽しい。ウィッチャー3というのは2015年に発売されたゲームのことで、この記事書いてるのが2023年だから8年も前になる。私は発売当時に買って遊んでるから、もうかれこれ8年も同じゲームで遊んでいることになる。
 もちろん、8年の間に他のゲームをしていなかったわけではない。ちょいちょい他のゲームも遊びながら、ウィッチャー3も遊んできたわけだ。なのでそろそろこのゲームの魅力について私が感じた感想を書いておこう。

大人が次世代に繋ぐための物語

 ウィッチャー3というゲームを語る上でまず欠かせない、物語の良さ。もう少し詳しく書くと、ゲームが語る物語に触れたときの体験の良さが、このゲームは圧倒的に良い。
 ここからネタバレを含むので注意してほしい。なぜ今さらウィッチャー3について語るのかという理由がまさにこれで、私がウィッチャー3の良さを語るときにネタバレを避けることが出来なかったから、発売から日が浅かったら語れなかったからだ。もう8年も前のゲームだし、例えばかぐや姫のお話だとすると「かぐや姫が月に帰りました」という程度の、物語の面白さの本質を侵害するネタバレではないと自信を持って言えるのだけど、ネタバレに対する姿勢は人によって異なると思うので、注意するべき人は注意してほしい。

 主人公ゲラルトはウィッチャーという怪物退治の専門家だ。プレイヤーはゲラルトとしてゲームの世界を体験していく。この怪物退治の専門家という役割が絶妙で、我々がゲラルトとして物語の世界に触れるとき、怪物退治の専門性を駆使して物事を解決していく。
 だがウィッチャーはどこまでいっても怪物退治の専門家でしかない。この二面性がプレイ中には終始つきまとい、我々大人の心にしみこんでくる。つまり、自分の特技を活かして問題を解決するカタルシスも、自分の力が及ぶわけでもない挫折感も味わうことになる。これがすごくいい。
 主人公ゲラルトは恋人イエネファーとともに、自分たちの人脈を駆使してシリ(ゲラルトの養女)を守り抜く。シリを守り抜けたと思ったとき、世界の終わりを知る。自分たちには手も足も出せない。シリを守り抜くためにどんな困難も乗り越えてきたゲラルトたちが、ついにやりきったと思ったところで気づく、自分たちではどうすることもできない世界の終わり。そこでおもむろにシリは行く。「これは私の物語なの」なんてことだ。いつだってそうだった。ゲラルトはどんな問題も解決してきたが、所詮は害獣退治の専門業者に過ぎない。世界を救うことは出来ない。世界を救うことが出来るは、必死に守り抜いてきたシリだった。これは、次の世代に繋ぐための物語なのだ。

 我々は大人になって知る。自分は何者でもなかったと。ただ専門的なだけだ。
 何者でもないが何も出来ないわけではない。
 次世代に繋ぐことは出来る。次世代を守り抜くことは出来る。
 これは、そういう物語だ。

ゲラルトが高所からの落下に弱いことについて言いたい

 発売当時から世界中で笑われ続けている、主人公ゲラルトの落下ダメージ耐性の少なさ。つい先日の次世代アップデートで公式も落下耐性を少し上げたがそれでもまだ足りないという意見が支配的だ。だがここでも反対意見を唱えたい。
 ウィッチャーは厳しい修行と変異と呼ばれる肉体改造によって超人的な存在として畏れられているが、それでも生身の人間である。ウッチャーとしての特技を活かさなければ普通の人間として大けがを負ったり場合によっては簡単に死んでしまう。よく批判される落下ダメージ耐性の少なさも、このバランスを素晴らしく表現していると評価したい。
 「1メートルは1命取る」とは工事現場などで有名な標語で、言わずもがなかもしれないが、つまり1メートルは低い高さに思えるかもしれないが命を失うに十分な高さであるから注意しなさいよという意味が込められている。私も若いころ工事現場で働いていたときに、1メートルどころか膝下程度の高さからの落下でさえ命に関わるような危ない目に何度もあったことがあるのでよくわかる。実際に厚生労働省からもはしごの落下事故について注意喚起が出されている[pdf]。
 ステレオタイプな見方であることは承知の上で言うが、工事現場などは体を鍛えた丈夫な人が多い。そんな頑丈な人たちでもはしご程度の高さからの落下で何人も命を落としている。それよりも鍛えてあるウィッチャーが、もう少し高いところからの落下で大けがを負うのは、ウィッチャーという存在の強さともろさを表した、とても絶妙なバランスだと私は感じている。

ファストトラベルの絶妙さ

 ウィッチャー3というゲームを語る上でこれも支配的なのが、どこでもファストトラベル出来ないことへの不満。別にゲームに対する不満は自由に言えば良いのだが、一部の紹介記事などでは「ファストトラベルがいつでもできないなんて信じられない」「MODで絶対に改善するべき」とまで書かれてあって、辟易する。本当に遊んだことがあるのだろうか?
 別に、いつでもファストトラベル出来ない不満を上げていることに対して憤っているのではない。ウィッチャー3は発売当初から話題になり、よく売れるゲームになっただけに、遊びもしないで紹介して、読者に購入へのリンクを踏ませることで紹介料を自分の稼ぎにしようとする、そういった記事が多いので、そのような記事の特徴としては自分で遊んだことがなくてネットでの評判をかき集めた記事になりがちなので、つまりは付和雷同な意見が集中しやすい。 
 一度でもいいから遊んだらわかるはずだ。どこでもファストトラベルが出来ないことが、ウィッチャー3のゲーム性に直結しており、ウィッチャーとしての旅を追体験する仕組みに組み込まれていることを。
 体力もギリギリになってもう少しでファストトラベルまで辿り着くまでの焦りや駆け引き、瞑想するべきか、荷物が重くなってしまったがクエストに必要な額を稼ぐまでは捨てられない判断、そういったものも含めて、ファストトラベルできるところまでの進退がウィッチャーなのだ。
 もちろん、普段のゲームとしての快適性についても、まずほとんどの場合でうまく自分の居る場所の近くにファイストトラベルポイントが設置されているはず。不便に感じることはそう滅多にないはずだ。
 そこまでを踏まえた上で、なぜ新規に遊んでみようと思う人に対して「どこでもファストトラベルMODは必須」とまで言うのか、遊んでないからとしか思えない。今から遊ぶ人はぜひ、読者の購入額の一部をかすめ取ろうとしているだけの記事の言うことは真に受けずに、ファストトラベルまでの駆け引きも含めてウィッチャーとしての旅を楽しんでほしい。

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