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令和版UFC日本人選手の序章。『UFC Singapore Holloway vs THE KOREAN ZONBIE』(試合後追記しました。)



大会色合い

昨年はナンバーシリーズとして行われたシンガポール大会ですが、今年もファイトナイトで開催されます。
時間帯もアジア圏に合わせた土曜日の夜という時間帯、日本人選手も多く起用されていながらメインにはフェザー級1位に君臨し続けるマックス・ホロウェイと韓国人選手のトップ、ジョン・チャンソンの試合が組まれていて、ファイトナイトとしてはお得なカード目白押しです。
しれっと組まれているブランチフィールドvsタイラ・サントスの試合はタイトルに絡んでくるであろうカードで、サントスは前戦、一年前に同じ場所でシェフチェンコとのタイトル戦で僅差の試合をしています。

昨年を通してシンガポールで1回戦が行われたRoad to UFCで契約した選手が、翌年にまた同じ会場でUFC選手として試合をするという事は本人達はとても感慨深いものがあるだろうと思います。
現在は平良達郎選手が牽引している感じもありますが、ここに出ている選手たちにも期待して更なるジャパニーズMMA反撃の狼煙をあげて頂きたいところ!!!

ちなみに日曜日にはRoad to UFC Season2としてまた再びアジア圏でのUFC契約をかけたトーナメントの2回戦が行われますので、そちらも注目です。

注目試合・注目選手(試合前記事)

日本人選手の3試合と、その他に気になる試合をピックアップします。
にしてもいいカードが揃っていて、開始時間もアジアのプライムタイムなので心地良く楽しめそうです。どこかでパブリックビューイングお願いします笑

(ウェルター級) ビリー・ゴフ vs 木下憂朔

デビュー戦で洗礼を受けたUFC2戦目、反撃の狼煙を上げることが出来るか木下憂朔23歳/6勝2敗(UFC1敗)4KO/2SUB
2022年のDWCSでは長身ジョゼ・エンリケに華麗なカウンターの左ストレートでKOしUFCと契約。試合直後にはダナの名前を叫びまくってアピールしていたのがちょうど1年前になります。
デビュー戦ではアダム・フューギット相手にケージレスリングで組み負けてしまい、消耗したところで本来主導権を握れるはずのスタンドでも打撃を効かされ、マウントからのエルボーで仕留められてしまいました。
現在所属ジムはウスマン、バーンズや佐藤天選手も所属するキルクリフFCなので組みの展開での対応力の向上に期待です。

対するは今回がUFCデビューのビリー・ゴフ。25歳/8勝2敗 6KO
彼も昨年DWCSで契約を勝ち取った選手で、序盤にハイキックを被弾して尻餅をつかされるも状況を立て直して逆転KO勝利してしまうという、目が覚めるパフォーマンスを発揮しました。
Bellatorでの試合経験もあり2019年、2020年に1試合ずつ戦っていずれも勝利しています。

契約を勝ち取ったビリー・ゴフの試合を見ると木下選手の打撃は被弾しそう。距離を詰めて、やっぱり組んで消耗を狙ってくると思われるのでその前にKOしたい。が、今後ウェルターで戦っていくならここで組みの対応力を見せてフルラウンド判定勝ちの方が経験としては良さそうだなと、勝手なことを思っておきます笑
どちらも若いので、エキサイトな試合を期待!


(バンタム級) 風間敏臣 vs ギャレット・アームフィールド

昨年のアジア圏版RoadtoUFCのバンタム級トーナメントにて準優勝に終わった風間敏臣26歳/10勝3敗 3KO/5SUB
柔術がバックボーンのグラップラー。昨年トーナメント決勝の中村倫也戦では距離を詰めての打撃戦を挑んでKO負けに沈みますが、そのファイトスピリットが功を奏したか準優勝でありながらUFC契約となりました。SNSでは、打ち合いを挑んだその過程に議論が巻き起こりましたが、今流行り?の「負ける勇気を持って勝ちに行け」をやってのけた選手、と言ってもいいかもしれません。
UFCと契約した後に本戦で勝ち進むことが出来るかを考えるとすれば、あの決勝で中村選手にまず打撃戦を展開したのは合理的思考だったんだろうなと今では思います。
もちろん決勝戦にフォーカスした意味を持って打ち合ったのだと思いますが、格闘技以外のことに置き換えて考えてもなかなか出来ない決断と実行をした風間選手にとってプラスになったことは間違い無いでしょう。

対するはUFC2戦目ギャレット・アームフィールド
26歳/8勝3敗(UFC1敗)5KO/2SUB
木下選手と同じくキルクリフFC所属。前戦はデビッド・オナマに肩固めを極められて敗戦。ただし直前オファーで本来よりも階級上のフェザー級バウトだったので、あまり条件の良く無い敗戦であったことは否めません。
CFFCでの試合を見てみると試合の立ち上がりは近い距離でフックを振ってプレッシャーをかけてくる印象。打撃戦で優位に立っていても消耗してきたところでポジションを奪われるとワンチャン与えてしまうような気がしなくもないです。

シンプルにリスクを取らずに試合を遂行した方が勝つ試合になりそうだなーと個人的には思いますが、フェイスオフはバチバチでしたのでリスクとか関係ない展開になるかもしれません。


(バンタム級) 中村倫也 vs ファーニー・ガルシア

U23レスリング世界選手権優勝の実績を提げてMMAへ転向したレスリングエリート、中村倫也28歳/7勝0敗 5KO/1SUB
昨年のRoadtoUFCで優勝を果たしUFC契約、今回がデビュー戦です。
レスリングの力は当然ですが、なんといっても魅力なのはスタンドセンスじゃないでしょうか。
プロデビューとなったの修斗での論田愛空隆戦で見せたハイキックKOは衝撃でしたし、昨年トーナメントでも野瀬選手、風間選手をスタンドで圧倒しています。1回戦でのサブミッション勝利も優勝候補を彷彿させる勝ち方でバックボーンはレスリングと、これで北米MMAに通用しない訳がないと期待が持てます。されどUFC。

対するはUFC2連敗中、ファーニー・ガルシア
31歳/10勝3敗(UFC2敗)1KO3/SUB
DWCS2021では強烈なオーバーハンドを相手のガードの隙間に叩き込んで効かせパウンドアウトしてUFC契約しますが、デビューから現在2連敗中と崖っぷち。

中村選手の組みの展開を長い時間見たいところではありますが、有観客試合なのでスカ勝ちKOでUFC村に思う存分存在感をアピールしていただきたいところです。

(ミドル級:プレリム) チディ・エンジョクアニ vs ミハル・オレクシェイチェク

注目選手はミハル・オレクシェイチェク。
28歳/18勝6敗(UFC6勝4敗)13KO/1SUB
昨年12月にコーディ・ブランデージと対戦した際には、取れショーン・ゴア戦でのKO劇の影響でブランデージに注目していたのですが、クロスガードのトップから強烈な左肘、左パウンド連打というパワープレイで試合を終わらせたのが印象に残って追っています。
前戦はカイオ・ボハーリョにUFC初サブミッション勝利を与えてしまいました。ボハーリョ久々のサブミッションで嬉しそうだったな、、、。

対するはチディ・エンジョクアニ。
34歳/22勝9敗(UFC2勝2敗)14KO/1SUB
2015〜19年にはBellatorを主戦場としており、2021年のDWCSでマリオ・フェリペ・デ・ソウザと対戦した際にはクリンチ膝をお見舞いしてパウンドアウト。ちなみにソウザは2022年のDWCSにも出場しており、今年10月のアブダビ大会で期待大のイクラム・アリスケロフに敗れています。
ムエタイをバックボーンとしていて組みでの膝、エルボーに関しては恐ろしい精度、威力があり、先日のUFCで勝利したロボコップことグレゴリー・ホドリゲスの眉間をご開帳してしまうほどの破壊力。
UFC本戦ではデビュー2戦連続2連勝1R2KOを飾りますが、先述したロボコップとアルバート・デュラエフに敗れ2連敗中。

破壊力たっぷりの両者の試合に期待です。

(フェザー級:メインカード) ギガ・チカゼ[#9] vsアレックス・カサレス[#15]

フェザー級ランカー対決となったこの試合。
ランキング9位の蹴りニキ、ギガ・チカゼ。
35歳/14勝3敗(UFC7勝1敗)9KO/1SUB
GLORYに参戦した経験もあり、その長いリーチと蹴り技でUFCデビューから7連勝(3試合連続のボーナスも獲得)を築き上げ、間違いなくタイトル戦線に名乗りをあげるであろうランカーの一人と見られていましたが、当時ランキング5位のカルヴィン・ケイターと下剋上マッチではケイターの見事な肘の餌食になってしまいUFC初黒星。それが昨年1月となるので約1年7ヶ月ぶりの試合となります。

対するはランキング15位、天然パパーハのアレックス・カサレス。
35歳/21勝13敗(UFC16勝11敗)4KO/7SUB
気づけば2011年から参戦し今に至るまでUFCで戦い続けるベテラン選手となりました。
過去の対戦相手としてはセルジオ・ペティス、ユライア・フェイバー、ヤイール・ロドリゲス、クロン・グレイシーなどなど。UFC日本大会にも出場し金原正徳選手とも対戦しています。
RNCによるサブミッションの方が印象的ですが、昨年ジュリアン・エローサ戦ではその体の柔らかさから繰り出す見えないハイキックを見事にヒットさせ久々のKO勝ちを収めてランキング入りを果たしています。

流石にチカゼ相手なのでカサレスはどうにか捕まえたいところ。
チカゼとしては格下ランカー相手なのでこの試合でベルトへの道を登り直したいところですね。ギガキックの炸裂に期待。

※※※以下、試合後追記※※※


見返したい良試合4選

メイン・コメイン以外から面白かった試合4試合ピックアップします。
プレリムもフィニッシュが多く、期待値通りの試合と期待値以上の試合が入り混じって良い緩急のついたイベントでした。

(ウェルター級:プレリム) ビリー・ゴフ vs 木下憂朔

予想通りスタンドでの主導権は木下選手が握る展開。体つきも見違える木下選手に大きく期待感が持てました。
互いに近い距離ですが木下選手の落ち着いたジャブ、コンビネーションを当ててタックルも防ぎます。跳び膝やハイキックも見せてさらにペースを握ると思いきや、、、ビリー・ゴフのジャブフェイントからのボディストレートが木下選手の腹にクリーンヒット。
見た目には、「腹に当たったな」くらいで見ていたら木下選手悶絶するかのような前屈みダウン!!!!
そのままパウンドアウトとなってしまいました。

何が起きたか分からずでしたが、確かに序盤からボディアッパーをさり気なく入れたていたものの、木下選手の調子の良さが目立っていたので気にせず見ていましたし、組まれてからどうなるかに注力して観戦してたのでこの結末は完全予想外でした。

コンテンダーシリーズで逆転劇を見せたビリー・ゴフはやはりタフ。
手術の影響でデビューが遅くなったゴフ。悔しいですがいいデビューを飾ったので次戦もまたタフファイトを見せてくれると思います。
木下選手は2連敗。次は負け越し同士のような厳しい評価の試合が組まれたりするんでしょうか。崖っぷちに立たされました。

(ミドル級:プレリム) チディ・エンジョクアニ vs ミハル・オレクシェイチェク

個人的には今大会、メインイベント以外ではファイト・オブ・ザ・ナイトです。
開始早々ボディへの前蹴り、膝を入れまくるエンジョクアニ。見てるだけで腰が引けます。とにかく腹に蹴りを刺され続けるオレクシェイチュクですが引きません。
エンジョクアニのタックルを切ってトップポジションをとるオレクセイチュクですが、立ち上がってスタンドに戻します。マジか。

ハイキックでグラつくオレクセイチュクにクリンチ膝、エルボー、鋭いムエタイ打撃を打ち込んでいきます。
直後にオレクセイチュクの左ストレート、左アッパーが炸裂して彼のターンが始まりました。その後テイクダウンしてガードポジションへ。前回の勝ちパターンだとここから左パウンド連打のパワープレイフィニッシュだったのを思い出すと、やっぱり左のパウンド連打!!!!!
スタックガードに移行してさらにパウンド!!!!レフェリーストップ!!!

お互いの良さを出し切って、というかオレクセイチュクがエンジョクアニの全てを受け切って自分の形に持っていくという超タフファイトを魅せました。腹相当もらってたと思うんですが、一度トップポジションになったのに立たせていたのを見ると相当気も強い。
やっぱり気になる選手です。オレクセイチュク。

(ヘビー級:プレリム)ウォルド・コルテス・アコスタ vs ルーカス・ブジェスキ

注目選手の一人でもあったウォルド・コルテス・アコスタ。
31歳/9勝1敗(UFC2勝1敗)4KO/1SUB
元々は野球で投手をやっていた経験を持つアコスタ。ヘビー級ではありますがコンパクトなパンチをまとめる選手で、昨年DWCSではパンチでKOして契約を勝ち取っていますが、デビュー後2試合は決め手がないものの2連勝。
ボクシングスタイルのため、構えが前傾気味な為かよくカーフを蹴られる印象ですが全くカットしないでパンチを打ち続けるのがある意味特徴です。

対するはルーカス・ブジェスキ
31歳/8勝3敗(UFC2敗)5KO/2SUB
2021年のDWCSで勝利し契約を勝ち取った選手ですが、RNCの体勢で相手がタップしていないのにも関わらずストップがかかる内容だったり、その後トーピング関係の問題でその試合がノーコンテストになったりと物議ばかり起きて2連敗中の崖っぷち選手。バックボーンはキックボクシング。

試合展開はパンチで組み立てるアコスタに対して、やはりカーフを蹴っていくブジェスキ。全くカットしないアコスタ。
蹴られながらも右オーバーハンド、ボディと打ち分けて散らすアコスタ。
1R3分が経過しようとしてるところでブジェスキの右ミドルをアコスタがキャッチ!すかさずアコスタが右ストレートを2発入れると今度は右オーバーハンド!!!
このオーバーハンドが特徴的で、まるで投球するときのオーバースローのようなフォームでした笑
ベースボールパンチと勝手に命名します。

このベースボールパンチの後に返のフックを当ててブジェスキが背を向けて千鳥足状態に。危険な後頭部にパンチが当たりそうなほど(というか当たっていた?)ラッシュをかけるとブジェスキが前方に倒れてレフェリーストップ!!

なんとも豪快なKOに会場は大盛況。KOなしが続いていたアコスタが大きなインパクトを残す結果となりました。

(バンタム級:メインカード) 中村倫也 vs ファーニー・ガルシア

日本人選手で唯一メインカードとなった中村倫也選手。
試合前にはSNSでカーロス・ニュートンとの幼少期の写真がアップされ話題となっていました。
試合は倫也選手の一方的な試合となります。

この試合テイクダウン成功率は流石の100%。最初のタックルでは脇を刺されても足ごと束ねて相手に尻をつかせます。
パスガードをこなしてノースサウスの形をとってトップキープします。
1Rではノースサウスチョーク、2Rではアームバー、3Rではバックから腕十字と果敢にサブミッションを狙っていきます。
トップキープ力もさすがレスリング世界王者とにかく柔らかい動きで相手にポジションを与えません。
フィニッシュには至らずでしたがフルラウンド優位に立ち続けて勝利!

この形で試合運びが出来るのは素晴らしいです。
スタンドは蹴りがとにかくいい。軸がぶれない蹴りというか、初動が読みにくそうなミドルは今後駆け引きの大きな武器となりそうです。
ところどころ相手の左をもらってしまいそうなシーンがあったのが気になりました(U-next解説の宇野さんが結構気にしていた)が、試合後のオクタゴンインタビューではマイケル・ビスピンから「ジャパニーズ・ボー・ニッカル」と言われていて、英語でのインタビューの受け答えなど試合の結果を積み重ねていけばもっと人気が出ること間違いなしだと思われます。SNSでも数々のUFC選手が彼の試合を評価していました。

次の試合を早く見たい。数年後が楽しみ。

大会総括

シンガポールは韓国人選手、中国人選手のお客さんが多いのか声援がプレリムから大きな会場の熱量を感じました。向こうのプライムタイムだったのも大きいんだと思います。
U-nextで観戦した筆者ですが、シンガポールの方が1時間遅いのでメインイベント直前に眠気と戦っていました笑
それを考えると朝から始まって昼に終わるUFCの方が頭がスッキリしたまま見られるので自分には合っているのかもしれません。

メインイベントはフェザー級不動のマックス・ホロウェイvsコリアンゾンビ。これもすごい結末となりました。
日本人がデビューする中、アジア人選手としてトップに立ち続けたコリアンゾンビの現役生活に終止符が打たれたのも印象的です。
最後は壮絶な打ち合いからホロウェイの右オーバーハンドがゾンビの顔面を打ち抜きノックアウト。打ち合いの中、ホロウェイにはほとんど当たらない状況でしたが最後の最後、オーバーハンドを被弾しながら自身も右をホロウェイに当てています。さらに左を振りながら地面に倒れるゾンビ。最後に生き様を見せてくれました。

試合後にはグローブを置いて、ゾンビのハイライト映像も流れました。どれだけUFCに貢献したかが伺えます。
今現役の日本人選手もこういった形で讃えられる日が来ることを願っています。