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【UFC297】どうなるミドル級新時代【メイン以外の注目試合】『Strickland vs Du Plessis』※試合後追記しました。



大会色合い

今年最初のナンバーシリーズ大会はカナダ・トロントで行われます。
カナダと聞いて浮かぶのはGSPことジョルジュ・サン・ピエールでしょうか。ローリー・マクドナルドでしょうか。
メインイベントの両者は恐らくカナダに縁はないものの、アンダーカードにはカナダの実力派ファイターがちらほら組まれています。

今回はミドル級タイトルマッチがメインイベント。昨年9月にミドル級のアイコンだったアデサニヤを超プレッシャーで破った現王者ショーン・ストリックランド、対するはアデサニヤとミドル級を支えてきた元王者ロバート・ウィテカーをKOで下した挑戦者、ガス欠しても勝つマンことドリカス・デュ・プレシ。

この両者がタイトルマッチを行うと1年前に誰が予想できたでしょうか。アデサニヤの長期政権時代から考えるとミドル級にはチマエフが乗り込んできたりウスマンもミドル級は満更でもなさそうで、ボー・ニッカルパイファーアリスケロフといった実力者の更なる突き上げを期待するとかなり活発になっていきそうなミドル級です。

コメインでは最強女王ヌネス引退により空位となった女子バンタム級タイトルマッチ、その他ランカー登場の下剋上カード、TUF勝者やクセのあるファイター同士のマッチアップ、コンテンダーシリーズの誤審(個人的見解では)によるリマッチなど楽しめそうなカードが並んでいます。

注目試合

相変わらずメイン、コメイン以外で気になる試合をプレリムとメインカードから2試合ずつ計4試合選んでつらつらと書いていきます。
マグニーの部分だけちょっと投げやりですがご了承ください。

(バンタム級:プレリム②)セルヒー・シディ🇺🇦 vs ラモン・タベラス🇺🇸

※記事投稿後の悲報。タベラスが3.75ポンドのオーバー…

このカードは昨年DWCSで組まれたカードで、その際はセルヒー・シディのKO勝利、そして契約成立という記録になっています。
しかし、レフェリーストップのタイミングが明らかに速く、敗戦となってしまったタベラスにセカンドチャンスを与える形で、最終週に違う相手とのカードが組まれアンダードッグでありながら見事KO勝利。契約を勝ち取りました。結果的に前シーズンのボー・ニッカルとは違った形でコンテンダーシリーズで2試合を行っています。

リーチの長いシディのストレートをもらい腰を落としたタベラスでしたが、直後の様子を見ると意識は十分あったのにも関わらずレフェリーが介入していて、デイナも「これまで見た中で最悪の審判の試合の1つ」とコメントした模様。

セルヒー・シディ 27歳 10-1 7KO/1SUB
カナダを拠点とするローカル団体BFL、BTCいずれもバンタム級王者。ムエタイベースのキックボクサー。
ラモン・タベラス 30歳 9-2 5KO/3SUB
アメリカCombatNightバンタム級王者。DWCS2戦目は29秒でのKO。サウスポー構えの左がメインウエポン。喧嘩屋っぽい。

UFCデビュー戦とは言っても UFC契約下になかった選手同士の試合なのですが、DWCSをじっくり見てた自分としては見ておくべきカードの一つです。本当のデビュー戦は次戦な両者に注目。

(フェザー級:プレリム③)シャルル・ジョーデイン🇨🇦 vs ショーン・ウッドソン🇺🇸

昨年UFC288ではクロン・グレイシーとも対戦した柔術黒帯シャルル・ジョーデイン。
28歳 15-6(UFC 6-5) 8KO/5SUB

UFC288ではもはや時代錯誤と言われてしまうようなクロンの引き込みに対して現代MMAの洗礼?を浴びせたような内容でした。
トータル戦績ではKO勝ちの方が多いですがUFCでは2KO/2SUB
前戦ヒカルド・ラモス戦では序盤からタックルにギロチンをセット、解除してもスクランブルの展開からギロチンに拘って見事タップを奪って勝利。

対するはフェザー級の巨人ショーン・ウッドソン。
31歳 10-1(UFC 4-1) 3KO/1SUB

188cmの長身と2m近いロングリーチでとにかくデカい。
膝蹴り刺したり、リーチを生かした懐の深いパンチ、「それな」と言いたくなる大きなフレームを生かしたスタイルで3連勝中。
こんなデカい人の踏み込んだストレートなんて距離感狂いそうです。

UFC2戦目となったジュリアン・エローサ戦(エローサの身長185cm)ではスタンドで優位に立っていたものの3Rに組まれて見事なダースチョークで敗戦。この時のタップの仕方が顔に似合わずちょっとだけカワイイのでファイトパスのアーカイブでご覧あれ。

(フェザー級:メインカード①)アーノルド・アレン🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿[#4] vs モフサル・エフロエフ🇷🇺[#9]

フェザーランキング級4位。イングランドのストライカー、アーノルド・アレン。
30歳 19-2(UFC 10-1) 7KO/4SUB

サウスポー構えで回転力のあるパンチとハイキックを武器にUFCデビューから10連勝ロンドン大会でのフッカー戦では猛烈なラッシュで会場を爆発させました。
ベルトに絡んでもおかしくない位置にいたものの前戦は元フェザー級王者ホロウェイと5Rマッチで対戦しジャッジ2名が49-46を付ける結果で判定負け。
得意の左を当てるシーンもいくつかありましたがミドルを機能させながら位置取りを制したホロウェイが支配した試合でした。あとホロウェイの顎が頑丈すぎました。
連勝はストップし、下位ランカーとの試合に臨みます。

17戦無敗のフェザー級9位、モフサル・エフロエフ。
29歳 17-0(UFC 7-0) 3KO/4SUB

今はタイトル挑戦を控えるイリア・トプリアとの無敗対決を組まれては流れ、ブライス・ミッチェルとの対戦が流れ、なかなかランカーとのチャンスに恵まれなかったエフロエフですが今回は上位ランカーとの下剋上マッチに臨みます。
前戦はミッチェルの欠場を受けて急遽、2023年のルーキーオブザイヤーとして名前の挙がったディエゴ・ロペスと対戦。この時オッズ-900のFavoriteでしたがスタンド、下からの仕掛けに面食らってロペスが大健闘。

ロペスのパンチが当たってたところを見るとアレンの左は当たると見てますが、グレコローマン出身のエフロエフが組まないワケないのでそこの駆け引きがどうなるか。

(ウェルター級:メインカード③)ニール・マグニー🇺🇸[#13] vs マイク・マロット🇨🇦

フィニッシュ率100%の注目株、マイク・マロット。
32歳 10-1(UFC 3-0) 4KO/6SUB
2021年のDWCSで相手のタックルにシングルギロチンを合わせスカ勝ち契約Bellator、WOSF参戦歴あり
MMA戦績は2017年で途絶え、2020年に復帰し勝利を挙げていますがこの間アルファメールで打撃コーチをしながらBJJに専念し、黒帯取得。こんな計画的に人生設計してみたいものです。

ミッキー・ガル戦では打ち合いを制して、ヨハン・レイネスにはお手本肩固め、アダム・フューギット戦では蹴りで腹を効かせてガードを下げパンチでダウンを奪い、即ギロチンとフルコース。

なんでもござれの男がホームのカナダで何を見せてくれるか期待です。ランカーになれるか。

対するはランキング13位、ウェルター級の門番?ニール・マグニー。
36歳 28-11(UFC 21-10) 7KO/4SUB

記録の方ではマロットとは対照的にUFCでの判定勝ちの数が歴代トップの14というなんとも言い難い記録の持ち主。
2022年ダニエル・ロドリゲス戦ではダースチョークでフィニッシュしているマグニー。
とは言えラフモノフ、バーンズ、ギャリーというランキングを駆け上がるファイターには道を譲っているのでワイとしてはもう門番的な位置付けで見ています。

前戦は昨年8月UFC292でのギャリー戦。序盤からローを効かされギャリーに中指立てられ挑発され、、感じ悪いギャリーのせいでマグニー応援の気持ちが芽生えた試合でした。

その他気になる選手たち

ミドル級 クリス・カーティス
引退を繰り返したMMAボクサー。ミドル級ランキング14位。バッティングによるカットでノーコンテストとなった昨年6月からの復帰戦。バックリー、ブレンダン・アレンにKO勝ち。
バンタム級 ブラッド・カトーナ
TUF27、TUF31で優勝。TUF31ではチームチャンドラーだったが色々あったのちSBG所属ということもあってチームマクレガーに移動。
バンタム級 ギャレット・アームフィールド
風間敏臣選手に勝ったプレッシャーファイター。カトーナと対戦。

※※※試合後追記※※※


面白かった試合、見返したい試合

フィニッシュ決着はもちろんありましたが、判定となった試合ではジャッジ泣かせの難しい内容のものが多かった印象です。

(ウェルター級:アーリープレリム③)ヨハン・レイネス🇨🇦 vs サム・パターソン🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿


ギロチンが得意な長身パターソンはライト級からウェルター級に階級を上げての再調整試合。
UFCデビュー戦となった前回はスカ負けしてしまったので立ち上がりは慎重。対するレイネスはプレッシャーをかけつつも様子見。
パンチの反応が危ういパターソンがケージを背負った形になったところでレイネスがタックル。

上からがぶったパターソンが自分の左手で相手の左腕を裏から巻いてコントロール。レイネスは締め手の右腕を掴んでディフェンスの姿勢を取っていますが、左腕が取られてしまってるので首がフリーに!それを見越して動いていたパターソンがしっかりRNCセットしてタップアウト!!!

デビュー戦で苦い思いをしたパターソンが地元選手のレイネスを葬ってDWCSで契約を掴んだUFCで初勝利を飾りました!
打撃の反応は危うかったので今後の課題にはなりそうですが、焦らずコントロールして一本はお見事。
打撃、スクランブルのうるさい選手と当たったら苦しいかもしれませんがウェルター級で華が咲かせられるか次に期待です。

(バンタム級:プレリム②)セルヒー・シディ🇺🇦 vs ラモン・タベラス🇺🇸

リーチで勝るシディがタイミングを変えながらジャブ、ストレートを当てるとタベラスはチェックフック、左右の動きで懐に入ってボディに打ち分けたりと緊張感のある打撃戦が展開されます。
2R、タベラスはダッキングやヘッドスリップで見切って逆にワンツーを当ててシディの顔が赤く染まります。ラウンド終盤、ケージを背負ったタベラスにクリンチから肘、膝でダーティに攻めるシディ。
3Rはタベラスがあまりリスクは取らず、変わらずにケージを背負ってスルスルとシディのパンチを避け続けて逃げ切ります。

判定はスプリットでタベラスの勝利。
両者ナイスの試合内容でしたがタベラスは大幅オーバーだったことはお忘れなく。次の試合では文句なしの状況で試合を見れれば良いですが果たして。

(フェザー級:メインカード①)アーノルド・アレン🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿[#4] vs モフサル・エフロエフ🇷🇺[#9]

ディエゴ・ロペス戦であれ?と思わされたエフロエフですが改めて強さを確認できる試合でした。
アレンは右ジャブを出していきますが、当然テイクダウンを警戒して右はほぼノーガードのような腕を下げた状態でステップを踏んで構えます。
シングルレッグ、足蹴けで攻めるエフロエフですがケージを上手く背負って脱出するアレン。
2度目はニータップに近い形でタックル、アレンはスプロールしますがこれを読んでたかバックに回るエフロエフ。スクランブルで逃げるアレンを追いかけて逃がさないエフロエフ。
1分近く組みの展開で密着状態になった両者ですが、インターバルでは肩で息をするアレン、そこまで息の上がっていなさそうなエフロエフ。カーディオの差が顕著に出たように見えます。
2Rはエフロエフのミドル、真っ直ぐがアレンを捉えます。アレンの出鼻を挫くようにジャブがヒット。1Rの組み、タックル警戒を逆手に取るように打撃戦が展開されエフロエフがパンチを当てていきます。

3Rは相手の懐に深く入るコンビネーションでアレンが攻めの姿勢にでます。2分過ぎ、アレンによる反則膝蹴りが出てしまい中断。
エフロエフのタックルにアレンがカウンターのニンジャ・チョーク!体を一回転させて外すエフロエフが再びアレンのバックに回って1R終盤の組み展開に。3Rでこれをやれるエフロエフ。しんどすぎる。

ユナニマス判定でエフロエフの勝利!
アレンも上位ランカーとして攻勢を見せる展開もありましたが無敗のエフロエフがここを喰ってタイトル戦線に一歩近づく形となりました!

(ウェルター級:メインカード③)ニール・マグニー🇺🇸[#13] vs マイク・マロット🇨🇦

期待のマロット、13位のウェルター級門番マグニーの試合はフィニッシュ率100%のマロットがフィニッシュできるかどうか、という見方をしていましたがまさかの展開に。

前回ギャリーにいじめ抜かれたときと同様カーフを攻めるマロット。
2R、前進しながらパンチを放つマグニーに合わせてタックルが決まってテイクダウン。ここで観客大歓声。ホームゲームのマロットの士気を上げます。
2度目とテイクダウンを決めるとパスガードしてマウントを奪うマロット。さあ、何でフィニッシュするのか!?という期待感で高揚する場内。エルボーで削るマロット。精神的な余裕が見える表情です。

最終ラウンド、再びトップポジションになるマロットですが立ち上がったマグニーがクラッチして逆にテイクダウン。この時ギロチンを取りに行ったマロットが悪手だったようにも見えます。


この試合初めて?下になったマロットにマグニーはパウンドを浴びせ、マロット足関を取りに行く姿勢。
攻め疲れもあるラウンド終盤でボトムになったマロットは元気なく、マグニーは逆に元気たっぷり!
マウントを奪ったマグニーがパウンド!!!マロット逃げられず背を向け成す術なし!!再び向き合うと追撃のマグニー!!!
残り時間15秒でレフェリーストップ!!!

まさかの判定王マグニーがベテランの嗅覚で期待の新星を下しました!!これはファイトボーナスものです。

大会総括<絶対王者不在>

ミドル級絶対王者を下したストリックランドですが、持ち前のタフさで前進し続けるデュ・プレシがスプリットの判定で新王者に輝きました。
ペレイラが王座を奪ってから一度も防衛されていないミドル級のベルト。続々と迫ってくる新星ファイター。

アデサニヤに防衛されてしまったウィテカー、キャノニア、ヴェットーリの上位ランカーと、ブレンダン・アレン、イマボフあたりの下位ランカーとのマッチメイクが組まれていくでしょうが、
忘れてはならないのが魔王チマエフでしょう。こことタイトルマッチ経験者が組まれて挑戦に相応しいかどうか篩にかけられるか、飛び級でいきなりタイトル戦か、イベントの時期次第ではどちらもあり得そうな気がしてなりません。

ランカー入りはしていませんが、同じくチマエフとミドル級マッチを戦った元王者ウスマンもミドル級に関しては満更ではなさそうだったので今後ランカーに絡んでくるのか注目です!!