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これから広報周りを考える人、広報について体系的に理解したい人にオススメの本3冊

こんにちは。カフェで仕事しようとしたらおしゃれなクリスマスソングが流れていてイライラしてきたので、2000年代のヒップホップを大音量で聞きながらこの記事を書いてます。一年早すぎ。

さて、今日は「これから広報周りを考える人、広報について体系的に理解したい人にオススメの本」を紹介します。ちなみに最初に断っておくと、ここで紹介するのは現場でのテクニック論というより、広報を考える上で大前提となる知識や考え方を整理するための書籍です。

なので、今まさにトップダウンで「そこのキミ、今日から広報担当だから! 来週プレスリリース出して。うん? TVに取材してもらうのがゴールだよ! もちろん売り上げに直結するPRね! 採用にも力入れたいからブログも週一回以上書いてね。予算はないけど頑張って!」みたいな指示を出されているような方にはちょっとお役に立てる情報ではないかもしれません。
そんな場合はまずはその経営者の脳みそを入れ替える必要があるので、私を呼んでください。w

閑話休題。
もしあなたが以下のような考え方に共感してくださるなら、これから紹介する書籍はきっとお役に立てると思います。

・経営戦略を考える上で広報活動が大事だということはなんとなくわかっているけど、なぜ重要なのか、具体的に何を目指すべきなのかを感覚論ではなく理論的・体系的に整理したい
・個別のPR戦術のノウハウを学ぶよりも、まずは企業コミュニケーションの根幹の部分を理解して自分なりの持論を構築したい

結論からいうと、この3冊。

1)デジタルで変わる広報コミュニケーション基礎 (宣伝会議マーケティング選書) 社会情報大学院大学(編)(2017,宣伝会議)

2)コーポレートコミュニケーション経営 広報戦略が会社を変える 柴山慎一(2011,東洋経済)

3)【小さな会社】逆襲の広報PR術  野澤直人著(2017,すばる舎)

TOP写真の順番が違うのはご愛嬌。順に紹介していきましょう。


1)デジタルで変わる広報コミュニケーション基礎 

まずは1冊目。宣伝会議さんの本です。非常に教科書的な一冊ですが、平易な文章で広報PRの考え方の基本を体系的にまとめてあります。目次はこんな感じ。

はじめに「未来を創る広報」とは
第1章 デジタル時代の「広報パーソン」とは
第2章 デジタル時代に問われる広報コミュニケーション―「情報集約社会」へ―
第3章 コーポレート・コミュニケーション
第4章 広報戦略の立案
第5章 ICT の活用とコミュニケーションデザイン
第6章 マーケティング・コミュニケーション(マーケティングPR)
第7章 インターナル・コミュニケーション
第8章 CSR と地域社会への広報活動
第9章 成功するIR 活動
第10章 グローバル広報
第11章 電子自治体・行政広報の要点と実務
第12章 危機管理広報(対応とリスク管理)
第13章 広報効果と効果測定
第14章 インターネット広報とオウンドメディアの活用
第15章 メディア・リレーションズ
第16章 広報業務にかかわる法務

コーポレートコミュニケーションの基本的な知識や広報戦略策定の基本的なフレームワークがサクッと解説してあるので、概要を掴みたいという人や、今まで自己流でやっていたけど改めて整理し直したいという人にはぴったりの本なのではないかと思います。

個人的にこの他にここに網羅されていて欲しかった内容は、採用広報とデジタル活用にまつわるお話。
これ、「デジタルで変わる」シリーズの中の一冊なんですが、肝心の「デジタル」についての部分は、実践的な話はほとんど記載されていません。
採用広報とデジタル活用は広報戦略を考える上で必須なので、別途情報収集をすることをお勧めします。


2)コーポレートコミュニケーション経営 広報戦略が会社を変える 

続いて2冊目。野村総研の柴山慎一さんが2011年に出版した本です。
初版発行からは少し時間が経っていますが、広報実務というよりももう少し上流の「経営者として、経営戦略の中で広報活動をどのように捉え、活かしていくか」を考える上で非常によくまとまった一冊だと思います。
一部、1冊目と重複する項目もありますが、大手企業の事例なども取り上げられており、読み応えがあります。

第1章 コミュニケーションモデル
第2章 日本のコーポレートコミュニケーション
第3章 コーポレートコミュニケーションで作り込まれるコーポレートブランド
第4章 コーポレートコミュニケーション機能のあり方
第5章 顧客向けコーポレートコミュニケーション
第6章 記者やアナリスト向けコーポレートコミュニケーション~プロへの対応~
第7章 社会向けコーポレートコミュニケーション~マスへの直接対応~
第8章 社内向けコーポレートコミュニケーション
終 章 コーポレートコミュニケーション経営

何を隠そう、私は自社の会社名を「コーポレートコミュニケーション株式会社」としていますが、これはこの書籍と出会って「これからの経営に必要な考え方はこれだ!」と深く腹落ちしたから。

柴山氏は本書の中で「企業はステークホルダーとコミュニケーションするための器である」と述べています。
その上で、広聴と広報を繰り返すことによって企業とステークホルダーの双方向の関係性をマネジメントしていくことで様々な経営効果を上げていくことがこれからの企業に求められていることだ、と。

また、このようなコーポレートコミュニケーション経営を有効に展開していくためには
・企業自身の見える化
・企業活動の見える化

の2点が必要であり、これは「企業・社外間の対外的コミュニケーションモデル」と「企業内部の対内的コミュニケーションモデル」が共通言語によって結び付けられることによって初めて成立する、とも述べています。

ここからは個人的な考えですが、この「見える化」って何かというと、ストーリーテリングだと思うんですよね。
経営者の声、開発者や営業担当者など従業員の声、そしてお客様の声をひたすら聴いて、世の中に対して発信していく。発信したストーリーに対して生まれた反応や反響を丁寧に拾い上げて、次のストーリーに繋げていく……。
シンプルな話なのですが、その繰り返しが企業と世の中とのコミュニケーションを円滑にしていき、信頼を築いていくんだと思います。

この辺りの話は長くなるのでここでは割愛。興味がある方はぜひ読んでみてください。


3)【小さな会社】逆襲の広報PR術  

最後は、超実践的な書籍の紹介です。
こちらは株式会社ベンチャー広報というその名もズバリな会社の代表を務める野沢直人さんのご著書。「コマケェことはいいんだよ! とりあえずメディアに取材しにきてもらえればそれでオッケーだから!」という人は、最初の1、2を飛ばしてこの本だけ読むということでもいいと思います。

Amazonの書籍紹介って出版社によってはかなり手抜きで笑えるんですが、すばる舎の担当さんが書いたこの文章に結構全てが詰まってます。

多品種少量生産の時代には、広報PRが重要!
ところが、中小企業では専門の広報部門はなく、営業マンや総務などがPR業務を兼務しているケースがほとんどだ。専門的な知識やノウハウに欠けるケースが多く、プレスリリースの一斉送信をすることが広報PRの仕事だと勘違いしている人も……。
しかし、それだけでは取材につながるケースはごくわずか。社内のコストセンターとみなされて、他部署からの冷たい視線にさらされることも多い。
では、一体どうすれば小さな会社でも実効的な広報PRを行えるのか?
中小企業やベンチャー企業、スタートアップなどの「小さな会社」専門の広報請負人であり、雑誌編集者→ベンチャー企業の広報PR担当者→PR会社社長という異色の経験を持つ筆者が、「こんなに公開しても大丈夫?」と言いたくなるほど、いま、多くの会社に求められているノウハウをとことん解説した1冊です!

目次はこんな感じ。

はじめに <小さな会社>にこそ広報PRが必要だ!
第1章 広報PRのさまざまなメリットと変わる役割
第2章 プレスリリースの一斉配信なんていますぐやめなさい!
第3章 自社のためだけの<使える>メディアリストをつくる!
第4章 ゲリラ的広報PR 秘蔵ノウハウ50連発 !

個別の方法論においては私は別の考えを持っているところもあるのですが、おそらくそれはこの著者がかつて個人向けサービスを提供していた企業の広報を担当していたからこそ生じる違いでもあると思っています。

例えば「プレスリリースの一斉配信はいますぐやめろ!」という項目があるのですが、広報のリソースが足りていない会社ほどプレスリリースの配信代行をうまく活用する意味はあるというのが私の持論です。
ただ、これは私がニッチ領域の法人向けサービスの広報をお手伝いすることが多いからかも。この場合、リーチしたいターゲット層や現実的なゴールから逆算するとテレビ、雑誌などいわゆるマスメディアへのアプローチは優先度が低くなるのですが、サービスによってこの優先順位は当然のことながら変わると思います。

しかし、そういったことを差し引いてもこの本は他のPR本と比べて圧倒的にベンチャー・中小企業の広報PRの現場で使える一冊だと思います。大企業の広報担当者さんも、もちろん読むことをおすすめします。知名度と予算がある中で新しい戦術を身につけたら、他社より一歩も二歩も先に進めますからね。「広報担当者の育成ノウハウ」や「PR会社との付き合い方」は読んでおいて損はないんじゃないでしょうか。

序章の中にこんな一文があります。

大企業の発信する情報には、常に一定のニュースバリューがあると見なされています。そのためプレスリリースを一斉配信すれば、それだけで取材が入ります。
しかし中小企業やベンチャー企業がそれと同じことをしても、マスコミから取材が入ることはほとんどありません。
大企業と小さな企業では、とるべき広報PRの戦略・戦術が違うのです。
それなのに、書籍などで世の中に流布している広報PRノウハウのほとんどは大企業の広報経験者が発信したものであるのが現状です。結果、中小企業やベンチャー企業にとっては、役に立たない情報になってしまっていることが少なくありません。

この部分だけで頷きすぎて首がもげそうになる人も多いのでは。
大企業の広報事例をみて「(同じようなレベルでやるのは)うちには無理だ…」と思い込んでしまっている広報担当者さん、多いですよね。
でも、最適な戦い方は会社によって違います。もっと言えば、おくべきKPIも効果測定のやり方も、業界ごと、企業ごと、フェーズごとに違います。

広報の現場では「いつかは日経新聞に載りたい」「ワールドビジネスサテライトに出たい」などとおっしゃる方が少なくないのですが、メディアもターゲットの行動もこれだけ多様化している中で、五大紙や民法キー局に取り上げられることだけをゴールにするなんてはっきり言って思考停止でしかありません。
「そうはいっても何を目指せばいいのか、ロールモデルとなる情報がなさすぎてゴールの置き方自体がわからない…」。そんな人はこの本を読むと色々と整理できると思います。そして、かなり「攻めの広報」な内容なので自分の仕事の可能性にワクワクしてくるんじゃないかな。少なくとも、私はそうでした。


以上ざっとですが「これから広報周りを考える人、広報について体系的に理解したい人にオススメの本」でした。
実務に悩む人向けの書籍もそのうち紹介したいと思います。広報界隈の皆さんのオススメもよかったら教えてください。

それでは!

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