スリー・ジャスティスを見た

見た推し映画、せっかくだから感想書き溜めていこうと思って。

私はビリー・ザ・キッド推しなのですが、幼少期のザ・ドラえもんズのドラ・ザ・キッド推しが始まりです。だから一番好きなのはFGOのビリーくんではありますが(だって知ってるか?私のカルデアにいるビリーくんは私が召喚したんだぜ?私の召喚に応えてくれて私と一緒に冒険してきたビリーくんなんだぞ。特別に決まってるじゃないの)ビリーがモデルの漫画のキャラとか、オーソドックスに西部劇とか見るの好きなんです。

今回は「スリージャスティス 孤高のアウトロー」を見たのでざっくり感想を書いていきます。ネタバレあります。ご容赦ください。

あと、かいつまむと「役者さんと演出は良いのに脚本がな…」という感想なので読後感が良く無いかもです。それもご容赦ください。

ビリー役はデイン・デハーン、パッド役はイーサン・ホーク。2019年製作。最近ですね!西部劇って日本でいう所の時代劇なので、近年になっても映画が作成されるというのはビリー、愛されてるなぁ!と感じて嬉しいです。あと、家にあるDVDが21歳の生涯(1973)とならず者(1943)なので普通に映像がキレイで嬉しかった。アメリカの雄大な大地が美しいです。

ストーリーは指名手配中のビリーと殺人に手を染めたばかりの少年(姉弟)が出会って…というもので、ビリーよりもこの少年が主人公の成長物語。かつては悪党で名を馳せたものの人生に失望し、今はアルコールに溺れるだけの姉弟の父。父に殴られる母と震える姉を助ける為に少年は引き金を引くが、時遅く母も亡くなってしまった。騒ぎを聞き駆けつけた父の弟(以後叔父)が、兄よろしくクソ野郎だったので兄の敵討ちとして姉弟を捕えようとする。姉弟は助けを求める為に母の友人のいるサンタフェを目指すが、この道中でビリーと出会う。

いつビリー出てくるかなーと待っていると7分めあたりでようやく出てきました。

私は芸能に疎く察しが悪いので自己紹介されるか、他の登場人物が「こいつはビリー」と紹介してくれないと誰がどの配役なのか分からないのですが彼は一目でわかった。
銃に片手を置いてる、ビリーの写真の一番有名なポーズで登場するのでお、お前だー-!お前がビリーだ!ってめっちゃ興奮した。
写真か?ってくらい微動だにしないのに、アハ体験か?ってくらい口元だけがニヤーってしてくのが良いです!ポーズであの写真を思い出させて、ニヤーで生命吹き込んでそれから動き出すのがまるで写真から飛び出てきたようで良い!
このシーンだけで何回もリピートしちゃいますね!かっこいい!初登場シーンとしてこれ以上かっこいい演出は無いと思う!

演出だけでもかっこいいのに服装がニットにスカーフ巻いてるのですが、私ニット着てる男が性癖でな……ずっとかっこいいかっこいい言いながら見てました。ニット着ると柔和なイメージ出ません?私、硬い男性の身体に柔らかいニットが纏わるの大好きです。
小柄で童顔、茶目っ気のある笑顔はビジュアルだけでビリー・ザ・キッドだって説得させてくるので「会った事無いけど知ってる!」って感じ。
ていうかマジでかっこいい。好き。

このビリーは話し方が悪役チックですね。ちょっと仰々しいというか悪ぶって話してる?サイコキラーっぽいというか。こう、笑顔のピエロがひたひた寄ってくるような怖さを感じる話し方でギャングの親玉感が強いです。
犯罪を犯したばっかで罪に震える子供目線だと大物に見えちゃうだろうな~。

屋根を借りた小屋で眠ってたら新聞で見たお尋ね者に包囲されてるの興奮せん?ビリーに歳を聞かれた少年が「もうすぐ15」と言うと「俺は13の時だった」と返すのですがビリー察したのかな。初めての殺人が13の時って事だよね?何も言ってないのにそんな事言われたら好きにもなるんだわ。
この時、お別れ代わりにビリーから石を貰う(本当に何の石かわからなくてwiki見たらお母さんの形見らしい?13歳の殺人もお母さんを助ける為に父を殺したと話してたみたいで、翻訳で省略されたのでしょうか)

そんな訳で悪童に早速懐いてしまった少年。今度はビリーがパット一行に包囲され連行される。少年、せっかくビリーが逃がしてくれたのに投降して処刑先まで護送される一行についてきちゃいます。
「あの人たちサンタフェ行くって!ついてこう!」って事なのですが、自身も殺しをやってるのに殺しでしょっぴかれる人間と警察の一行についてくの中々勇気あると思う。

殺人を犯したとは言えず、サンタフェに行く途中で父とはぐれたのでサンタフェで再会するんだと嘘をついて同行を願うもパッドから「父親とはぐれたと、そう思ったんだな?」と意味深な質問をされる姉弟。
まぁ国民的ギャングと一緒にいたわけだし、捉え様によってはビリーが彼らを隠して逃がそうとしたとも見れるもんね。

この後のシーンでタバコを貰おうと立ち上がったビリーにパッドの部下がビビり散らすのですが、大人でも怖い犯罪者に、しかもビリーを捕えるためにドンパチして死人まで出した集団に着いてっちゃおうとするのは善良な若者の行動としては結構不自然。そりゃ疑う。

もうね、少年がビリーに憧れを抱いていく様がよくわかるの!無邪気に「僕はあなたに似てる?」とか聞いちゃうし「さぁどうかな。似ていたい?」と返すビリーがめちゃニヒル。純粋な少年が悪い男にたらし込まれていくの楽しいなー。

ビリーは姉弟をかばってくれるようでそうでもなくてヒヤヒヤするのですが、少年に縄抜けの手助けをさせたり、姉に向かって「自分の弟が俺と違うと思ってるなら大間違いだぞ!」と怒鳴って少年も道連れにしようとする所とかヒーロー像の強いビリーからは想像できなくて(脱走するためのハッタリではあるけど本心が読めない)でも少年にビリーと自分は同じなんだって思わせるには十分で、どんどん強刺激のこの男に惹き込まれていきます。

少年はパットから殺人の経験を告白され「殺人の後に何をするかが大事。何か言う事はないか?」と自白を促されますが姉に口止めされたのもあり「ない」と答える。
少年、ビリーの事大好きだからこの後ビリーには自分から自白しちゃうんですけど、ビリーは「言わなくていい」と制止するんです。この時のビリーの優しく見える事!
ただ、姉が止めてるだけで少年は何度か大人に言いたそうにしてるので、誰かに話す事で楽になりたかったんじゃないかな。

この大人2人からしたら今の少年は過去の自分でもあるので何を背負ってるか何となくわかっちゃうんでしょうね。
ビリーなんかお母さんの写真見せられただけで「俺は13の時」って答えてますからね。ビリーお母さん大好きだからね。お母さんの為に悪の道に入った少年と出会うのも胸にくるものがある。

そうしてビリーの仲間が処刑される予定のサンタフェに着き、ビリーとパッドだけがリンカーンへ向かいます。
先日縄抜けの際に、ビリーはパットから問われた「何で逃げずにリンカーンに2年も残ってたんだ?」を受けて、ここで少年に「知りたい事があるんだ。自分がなぜ逃げなかったのか」と漏らします。物憂げに言ったその余韻もなく立ち上がってサンタフェの民衆の声援に応えてく姿は切り替え上手な大人のようでいて、一回通して見た後だとまた違った印象を受けるのでぜひ2回目見てください。
ここで「ビリーもサンタフェで引き取る」と言った保安官にパットが言い返してる時、ビリーが被せるように「サンタフェじゃなにもしてないぜー」となにもどころかしっかりやんちゃしてた事話すから「いいから黙れ!」とパット切れさせてるの凄い笑った。
こういうビリーとパットのじゃれ合いが好きで常に飢えている。
この映画のビリーはやかましさ全開ですね!
ほんとマジで好き…

パットが「(サンタフェに長居したくないので)首尾よくここを出る良い方法を見つけた」と言いながら駅馬車を奪います。
ここでパットが「犯罪者たちはリンカーンで罪を償わせる。それまでは俺が命をかけてやつらを守る!」って言うんですよ!これがめちゃかっこいい!
ビリーに恨みがある人々とパット一行の銃撃戦が始まり(ビリーが招いた銃撃戦だけど本人は馬車の中から見物。パットが命をかけて守ってくれるからねww)その隙に一行を離れる姉弟。パットは姉弟のお父さんに会いたいとか言ってたし、お父さんの嘘バレなくて良かったね。

お母さんの友人がいるダンスホールに着いたもののあまり歓迎はされていない様子。大方予想はしてましたが(西部のそれはバブルのダンスホールみたいに若者がダベる場所じゃないですからね)もう叔父に待ち伏せされてて、お姉ちゃんは叔父の経営する娼館へ、少年は売れないので釈放。でもなんというか、叔父さん的に少年は野放しで良いの?一応兄貴の仇は少年の方だし男でも農村とかに売れそうだけど…店用に若い女が欲しかっただけなのかな。

少年、この辺から犯罪に躊躇いがなくなる。
あっという間に盗品で身なりを整えて目が濁ってく。良い。
すっかり擦れた雰囲気が身に付いた頃にデイブ(ビリーの仲間)の公開処刑に遭遇してしまいます。

「なんでここにいるんだ!?お姉さんを探しに行ったんじゃないのか?」

ええデイブもう姉弟が引き離された事知ってる!
もうそんなに経った?リンカーンに行ったビリーの裁判も終わってビリーから手紙が来てる!
少なくともリンカーンから往復できる期間は経ったって事でしょ?電車も無いし結構距離あるのに…とぐぐる先生で調べた所、自転車で寝ずに約3日の距離でした。割と近い!トントン拍子でいけば馬なら1週間せず往復できるか…
(サンタフェ=リンカーン間が約1200kmあって、当時の駅馬車が大体1日で200km走るらしいからそのくらい?)

姉の行先は叔父の経営する店だとわかっているはずなのにずっとサンタフェにいたという事は、父殺しがあった時近くにいた割に叔父さんと姉弟の接点はあまり無かったんですかね…
この少年、無鉄砲な所があるから叔父さんの居住近くとか仕事場付近とかとっとと捜索してそうだけど、セリフだけで「姉の居場所はビリーが知ってるからビリーと再会しろ」と説明されるので尺巻いてる感じが否めない。
というか少年が姉探してるってバレてるの良くないのでは?

でもデイブがね、まさに絞首台の階段で自分がもう死ぬって時に少年の心配をして、ビリーの居場所を教える為にビリーからの手紙を渡すんです尊くない??
私だったらこの少年を人質に最後まであがくぞ。

ここから少年がリンカーンに着くまでビリーのターン。

パッドの助手?が死刑失敗してすっぱり死ねなかった死刑囚の話を楽しそうにビリーに聞かせてる。この時のビリーのつまんなそうな心底イヤそーな顔が堪んないです!聖書読み聞かせられてる小学生みたいでかわいいね!
というか本当にこの役者さんのビリーが好みすぎるんだよ。

顔がね、良い。

良い塩梅なんですよね、顔ちっちゃくて笑顔柔らかくて、若くも見えるけど表情の動きが「この表情が出来てこの若さだったら相当苦労してきたんだな」って思わせる感じの。
軽薄さと生い立ちからくる苦みが感じられる良いビリーです。
撮影時で役者さんは31歳ですって。お若いね……
ブロマイドあったら本当に欲しい。

この映画のビリーは躁鬱感が強くて、仲間が買収されてたりもするので人望もあるんだか無いんだか……21の生涯だとカリスマ性のあるみんなの人気者!って感じが強かったけど所詮犯罪者、育ちの悪い悪党って印象を受けます。ビリーの事を支持する人もいるけど冷たい目で見ていく人も多い。

序盤はテンション高めの明るい笑顔とちらっと見せる暗い表情に頼りがいや信頼を抱くのですが、この辺りからどんどん不安定になっていって、逆にビリーと合流できた事で表情が力強くなった少年との対比が怖い。

獄中のビリーに会うため自身も投獄されようと銀行強盗を起こす少年。命は助かるも銃撃を受け怪我をします。
少年が運ばれてきた事に気付いたビリーが少年と話させろと騒ぎ、その怒鳴り声をBGMにパッドたちが会話するのですがサンタフェであった賑やかな感じと打って変わって聞いてて辛くて。悲壮感。
ようやく会話する機会があり二人は情報を交換し合うのですが、少年が持ってきたのはデイブの死刑が執行されたという話。

死刑失敗の嫌な話聞いた後でさ、再会を誓った仲間は死んでさ、いくらサイコキラー演じてるビリーでも気が落ちると思うのよ。

この時に少年から罪の告白を受けるのですが「言わなくて良い」以上のフォローが無いので優しさというよりこれ以上厄介な事聞かせんなって気持ちもあったのかもと邪推。

私、ここでようやく期待していた映画ではないな?と気づく。

というのも解説だと「姉を攫われ途方に暮れる少年に、ビリーが救いの手を差し出した」って事になってるのですが実際は「ビリーはビリーで逃げてる所に少年が転がり込んできた」なんですよね。
もっと少年少女の助けになるヒーローめいた余裕のあるビリーが見れると思っていたんです。

でも冷たいとか見捨ててるとかじゃなくて、ビリーも罪を犯した自分の人生と向かい合ってるだけなんですよ。

この映画自体が義賊として祭り上げられたビリー人気に一石を投じてるような所があって、一般的な「庶民に人気のあったビリーと卑怯にも闇討ちしたパット」という構図じゃなくて、パットはパットで法治国家の正義を見せてくれるんです。
多分ね、話の作り的にもすごく似てるしサム・ペキンパー監督の「21才の生涯」で情けなくなってしまったパットのリベンジがしたいんじゃないかな。
邦題のスリージャスティスもここにかかってくるんじゃないかと思います。
(でも3つの正義とするにはビリーと姉弟の父を混同視してそうな所が、ここに正義があったんか?って感じなので、ビリーはかわいくてとても良いんだけどビリー主役の映画じゃねぇんだよなっていうもどかしさ)

まぁ、まぁ。それで結局、詰め寄られてお姉さんの救出とその後の逃亡を約束しちゃうビリーなのですが、嬉しそうにビリーに抱きつく少年を、困惑した表情で抱きしめ返すんですよ(あっここ並んでます次私お願いします!)

このシーンはね、ラストのパットのシーンと対になってます。

そして衝撃。お前子供作ってたんか(ビリー彼女が妊娠してた)

可能性として考えなかった事は無いけど映画で初めて見た事と「出産まではそばにいてよ!」という彼女に「俺は出てく!」と言い捨て去ってしまうクソ男加減がな!最高すぎ!さっすがアウトロー!
(ここもwiki見たら彼女の住む地域からビリーを追い出そうとする動きがあったみたいです。そんな雰囲気ないよ、翻訳の違いかなぁ……)
私はこれを、少年と姉連れて逃げる約束してるからだと解釈したのですが何でか少年がこの騒動を見て「姉さんの所に行こう!」とビリーを急かすんですよ。

……いや彼女妊娠しててさ?彼女置いて逃げるって話で揉めてさ?その直後にもう出ようって鬼か??

うーん、彼女に責められ少年に責められ、自由とはだいぶ遠くなってきましたね…

憂さ晴らしに寄った酒場で、少年はビリーからも、彼が犯した初めての殺人の話を聞かされます。(ここで侮辱してきた男を殺したのが初めての殺人って言ってますけど父親殺しは何回目かの殺人なんですかね…)

泣き酒で鬱全開のビリーは愛おしい。
少年を突き放すでもなく自分の弱さを吐露してる辺り、やっぱ少年を信頼はしてるはずなんですよね。
酒に酔ったのは一度きり、母親が死んだ時。とサンタフェで言っていたので、今もし酔っているなら母の死と同等の辛さを抱いているはず。

パットもビリーも初めての殺人を忘れてないし、向き合えていようと向き合えていなかろうとその出来事を肯定もしない。

じゃあ少年は?
ビリーの、周りすら飲み込むような後悔と恐怖を抱えた「人生は無意味だと思った事はないか?」の質問に「僕は未来を知ってる(から、そうは思わない)」と返します。

そしてサンタフェ到着時にビリーが言った、リンカーンから逃げなかった理由の答えがきっとこれですね。
人生は無意味→だから逃げずに捕まるのを待った?
捕まって死刑になりたかった?でも生きようとしてるしな…
メメントモリ(喜びの最中にこそいつか訪れる死を忘れるな)とかカルペディエム(いつか死ぬからこそ今日を楽しく生きよう)って事?と思ったり。

今日という何でもない大切な日を、どうせ来る死に怯えずに大切な場所で大切な人と過ごしたいって意味だったら良いけど。享楽主義にも自暴自棄にも取れます。

余談ですが、私は史実のビリーって大好きなものに囲まれて亡くなったのかなと想像しています。
既に悪さをしているフォートサムナーなんて絶対見つかるのにそこに留まったのは、フォートサムナーに友人たちがいたからだとか、いや好みの女性がいたからだとか、滞在してたのも本当に信頼している友人宅だったとか彼女の家だったとか、とにかく好きな人たちに囲まれていたのは確定みたいだし。
結局そこで親友のパットが来るのを待ってた訳じゃないですか。
友人の手で殺されたというのも悲劇性はあるものの、個人的な恨みによるものではなく仕方ないと言えるものだし、知らん誰かの手にかかるなら友人の手柄になりたいというか。

私、21歳の生涯のビリーの死にざま結構好きなんですよ。
パット見て笑顔のまま銃弾を受け亡くなるのですけど「お前に殺されるなら運命を受け入れられる」って感じがして。
殺した、という事実はあれど彼を看取ったのは彼の親友で、彼が最後に見たのは親友の顔。ビリーの人生のエンドロールに、一番最後に出てくるのは親友の名前。なんかこの身内感。

ゴールドラッシュがあった一攫千金の夢ある時代のアメリカに生まれながら、本人が望んだのは自由と手の届く範囲の幸せだけなんだろうな、と思ってて、アメリカ史に名を轟かす大悪党でありながら慎ましやかな所が好きです。

ところで少年、殺人がバレたら君の未来も処刑だよってお姉ちゃんが何度か言ってたと思うけど罪バレた後も生きる気でいる…?
死に対してどっしり構えてるだけ?

この「僕は未来を知ってる」に対しビリーは「俺ももっとお前みたいだったらな」と言い酒を流し込みますが、私がこの流れでこのセリフ言うとしたら完全に皮肉で言いますね。

この後のビリーの心象がいまいち読めませんが、多分彼女と生きる事を決めたんじゃないかな。
「馬を見たい」と言った少年を「明日な」とすげなく躱すビリー。少年は不満げに口を曲げて、ビリーは馬じゃなくて彼女の寝室を訪れる。
このまま少年とは離別っぽいなー。
泣き顔のままベッドに腰掛けて彼女と2人。

「子供が俺に似てたら?(多分、俺みたいな悪ガキだったら?の自虐じゃないかな)」のビリーの質問に、彼女が「似てるよう神様に祈るわ」と返します。
彼女の愛が深い。こんなん顔も性格も全肯定じゃん。
幸せになってと祈らずにはいられない。まだ25分残ってるしもしかして既婚ビリーが見れる?ビリー彼女と結婚して?

肉を焼きに野外に出るビリー。ねぇ死亡フラグ。
闇に紛れ忍び込んだパッドが銃を向け……

えぇ……ビリー死んだ。
嘘じゃんあと20分も残ってるよ?パットに闇討ちされた。

パットきちんとリンカーンで罪を償わせるんだって言ってたじゃん!何がなんでも殺してこいって命令に変わったのかな。
いやないわ。パット部下が「何があった?」「誰が誰を撃った?」と聞いてるからこれ想定外でしょ。

ビリーの葬儀シーンがあり、少年は出会った時に貰った石をビリーに返し、お別れをします。
少年なりのビリーへの決別の意でしょうか。
葬儀までしっかりやるの初めて見たからちょっと嬉しかったり。

……見る気、無くなっちゃったんだけど残された人たちがビリーを胸にどう生きてくのか見たいから見るね。主にパット。

ダラダラ期間にビリーから銃を習っていた少年は、もうだいぶ上達したみたい。
パットの所にも行き、やっと己の罪の告白が出来ました。

「これ(この銃)で父さんを殺した。後悔してたけど間違ってた」

少年、気持ちの整理がついたんだね。

「もっと早く殺すべきだった」

お???

お?????

えっと、ビリーとパットがずっと投げてきたメッセージってそんな感じでしたっけ?

「ビリーを信じたのに彼は助けてくれなかった」

いやだからさぁ!
確かに彼は手を貸してくれるようで周りを利用してきたよ。少年の事も道連れにしようとしたよ!でもさ!

でもさぁ。
少年一人で行ったら殺されるから行きたくないのも理解はできるよ。
でも正直、少年が寄生先を姉→ビリー→パットって鞍替えしてるようにしか見えないんだよね。
この子、姉といる時も盗みとかは姉にやらせてて、自分は守って貰う立場だったもの。
姉のいる末っ子男子の描写が嫌な方にリアルですね~~(役者さんの表情だけ見ると序盤から精神的に成長した感がすごく伝わってくるので、シナリオのモヤモヤがただ不快)

ビリーだって少年にそこまで酷いことした訳じゃないのにこんな風にパットに乗り換えられたら、ビリーが見たくてこの映画見てるんだからビリー庇わせてくれ。死人に唾吐かないで。

ビリーは間違い。殺人の後にうまく立ち回り、少年に何度も手を差し伸べていたパットが正解という結論で、あんまりじゃないかな、悲しいな……

この後のパットは本当にかっこよくて、いやずっとかっこよかったのですが、本当にこの映画のパットはかっこいい。

パットの人生はね、ビリーという圧倒的光に押し潰されそうになりながらも生きる為に国の犬になったしたたかさが泣けます。
でもパットの正義は「大切な身内を守る為に大切な親友を差し出した」という大切な人1人しか助けられないならどうする?に本気で答えた結果だったり、泣いて馬謖を切るような辛さがチラ見えするから、仕方ない、仕方ないって言いながら我々視聴者はパットの正義を受け止め誰も恨むことはせずに時代と運命に翻弄されたビリーの人生に泣くんです。

パットとビリーの年齢差ご存知ですか?9歳です。
31歳のパットが、22歳のビリーを撃つんですよ(ここビリーはその年の誕生日を迎えていないので数えで失礼)
時代に沿って、家族のためにしたたかに生き方を変える大人と、若くて純粋ゆえにアウトロー以外の生き方を知らない少年の対比なの。

だから、パットを正義として書くなら法治国家の近代的価値観で書いて欲しい。
アウトローの時代の幕引きを担ったのがビリーなら、法治国家の幕を開けたのはパットであってほしい。

……と、本編に戻ろうと思ったのですが、お口が悪くなってしまいそうなのでここで感想を終えておこうと思います。

総評としては、もったいない。
役者さんの演技は素晴らしいし、セリフ回しにもキラリと光る粒があるのにとにかく気になるんです。

・これ、ビリー必要だったか?
・少年、成長したんか?
・お姉ちゃんの方が過酷な人生じゃなかった?
・パット、何でビリー殺したん……?

「事実かどうかは関係ない。お前が去った後人々がどう語り継ぐかが問題なんだ」

ラストにあったパットのこのセリフには正直目が覚めるほどハッとしました。
ビリーが去った後、人々が真実だけを語り継いだだろうか。
パットが去った後、彼は何と呼ばれただろうか。
事実だけが後世に残るんじゃないんです。

こういうの、もったいないな。
正直、ビリーとパットのキャラがしっかり立っててめちゃくちゃ好きです。いくらでも見てられる。
だけど、キッドとダブルミーニングにした肝心の少年のキャラが微妙に、うん……
ラストも良いセリフを言ってたんですけど、少年の成長がまるでわからないので説得力が無いんですよね。
(繰り返し言いますが、演技は素晴らしかったんです。顔つきがどんどん変わってくの)

でもキャラが立ってるし、キャラ同士の掛け合いも面白いので二次創作映えしそうだなとは思った。ビジュ最高だし。
このキャラでパパになったビリーとか、いつまでもトムジェリするビとパとか見たくない?
クランクアップお疲れ!出番終わったヤツからシチュー配ってるぞ!
リオお疲れ!シチュー取っといたぞ。
パットのシチュー?ねぇぞ。お前遅いから鍋もう空。とか言ってくだらない平和な事で喧嘩してほしい。

あと、特別に西部劇が好きな訳ではない人と見るには良いビリー映画だと思う。
私が家族に「たまにはあんたの好きなビリー?でも見ようよ」とか言われたらこれを一緒に観るかな。
物語はリズミカルに進むし、キャストのビジュがとにかく良いし、夕飯終わりにだらーっと見るにはちょうど良いと思う。
視聴負荷が少ないって言うのかな。

「ビリーが死ぬまで」という条件付きで、何回でも見たい映画です。


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