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話を撮る【厩火事 / 麹町】

髪結(かみゆい)のおさき。
酒ばかり飲んでちっとも仕事に行かない亭主に愛想が尽きたので別れたいと言う。
以前から亭主に呆れていた仲人は「さっさと別れちまいな」と賛成する。
すると、おさきは自分のことをどう思っているのか、亭主の料簡(本心)が知りたいのだという。

そこで仲人は二つの話を聞かせる。
一つは唐土(もろこし:中国)の孔子の話。
あるとき厩(うまや)から火が出て、孔子が大切にしていた白馬が焼け死んでしまった。
それを聞いた孔子は家来の身を案じ、馬のことには一切触れず、家来たちの孔子に対する信望が一層深まったという。
一方、麹町のさるお屋敷の旦那。
女房が滑って転び、大事な骨董品の皿を危うく割りそうになったとき、「皿はどうした、皿は大丈夫か、皿、皿、皿、皿」と皿のことばかり聞き、女房を気遣う言葉は一言もなかった。
後日、女房は離縁を願い出たという。

「お前んとこの亭主がどっちかを試してみろ」と仲人。
不安に思いながらも試すことにしたおさき。
亭主も瀬戸物に凝っているので、うっかりしたフリをしてそれを割ってしまう。
すると亭主は真っ先におさきの体を案じた。
感激したおさき「お前さん、そんなにあたしのことが心配かい?」

亭主「あったりめぇよ、俺たちゃ夫婦じゃねぇか」とは言わなかったところが落語の面白いところ。

あ、すいません。
でも、オチを書くのはヤボですんでね。

/ 「麹町」は半蔵門から四谷あたりまでの地域で、江戸時代にはお屋敷や出入りの商人で賑わっていたといいます。

四谷見附橋
四谷の土手
半蔵門