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落語のお話【小三治さんのこと3】

ある「柳家小三治独演会」でのこと。

一席目を聴いていて、なんだかとても心地よく感じたことがあります。
いつもと同じくおかしくて大笑いしたのはもちろんなのですが、それだけではなく、いつもとは違う「心地良さ」を感じたのです。
なんと表現したら良いのか分からないのですが、う~ん、言葉が滑らかというか、静かというか、穏やかというか、適切な言葉が思い浮かびません。
私が心地良かったというよりも、むしろ小三治さん自身が心地良さそうに思えたのです。
何がどうというものはないのですが、心地良さそうに話しているように感じました。

中入り後のニ席目。
小三治さんの口から、こんな言葉が聞かれました。
「先ほどの一席目はとても気持ちよく話すことができました。」
「こういうことは年に何度あるか分かりません」
「それは客席の皆さまのおかげだと思っております」

やっぱりそうだったんだ!

後にも先にもこういう言葉を聞いたのはそのときだけでしたので、客を喜ばせようとしておっしゃったのではないと思います。

小三治さんがそう思える場に立ち会えたこと、そして、それを私自身も感じることができたこと。

嬉しい思い出の一つです。