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【てんびんの詩】

近江商人の商いの心を描いた「てんびんの詩」という映画があります。

近江の商家の男の子が小学校を卒業し、父親から贈られたものは鍋の蓋だった。それを売ってこいと言う。それを売れるようになったら店を継がせる、と。

鍋の蓋だけを売るなんてことができる訳はない、と少年は思う。
それでも少年は泣きながらもその蓋を売ろうとする。しかし、蓋だけを買ってくれる人はいない。

苦労の末に、少年は商人としての心得を学ぶ。
このような物語です。

私の会社人生で最も長く就いていたのは営業系の仕事です。

ここへの投稿でも書いた「逃げるな、嘘をつくな、数字に強くなれ」はその時代に社長がよく仰っていた言葉です。

営業時代、私が意識していたことは「常に誠意を尽くす」ということでした。

それは、
自分が売る商品を自分でも使ってみるなどして徹底的に知って、好きになる
お客様が何を欲しているのかを対話を通じて知る
お客様が必要としないものを無理に勧めることはしない
買っていただいた後も訪問を続けて何か不都合がないかを聞く
等々。

そして、営業としての最終目標は、商品を売ることでも、ブランドを買っていただくことでもない。自分という人間を買っていただくことと思っています。

「てんびんの詩」は私にそのようなことを教えてくれた人やモノのうちの一つです。そして、このような心は営業という仕事に限らず、普段の生活のうえでも必要なことだと思います。

自慢話になりますが、営業としての私が嬉しかったことを2つ書きます。

競合と競った結果、最終的に私が売っている商品を買っていただくことになったときにお客様から言われた言葉。「値段はあっち(競合)の方が安かったけど、あなたとの付き合いが長いからおたくに決めたよ」。

商談を終えて、帰ろうとしたときにお客様に昼食に誘われました。食事を終えて会計の際に「いいよ、ここは」と私の分まで払ってくださいました。お客様にご馳走になるなどとんでもないことです。盛んに恐縮していると、「客におごってもらえる営業になったってことだよ」。

約30年の営業生活の中でのこの2つの言葉は忘れることはありません。今後も忘れることはないでしょう。