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落とし噺の話【志ん輔の会】

昨日、ほんとうに久しぶりの寄席。

「楽しかった、面白かった。」
ただこの言葉だけで十分な感想だとは思うのだけど、何がどう面白かったのかを書かずにいられないので書きます。

江戸時代から伝わる落語という話芸。
既に使われなくなった言葉や特殊な世界でしか通じない言葉がたくさんあります。
そのような言葉をまくらで分かりやすく、且つ、さりげなく述べて自然と本題に入ってゆく。
そうすることで古い話が今でも通じるようになる。
それができるかどうかは演者次第。
昨日の「今戸の狐」もそのような噺の一つだと思います。
志ん輔さんご自身のおもしろおかしい思い出話を聴いているうちに本題の噺に必要な言葉が分かってくるという噺の構成が楽しかったです。

そして、噺家さんは単に喋れればいいってもんじゃない。
歌舞音曲の心得もなくてはならないのでしょう。
それらを身につけていなければ演じることのできない「掛取萬才」。
見事な喉も聴かせていただきました。
そして、年の瀬の慌ただしさも、少し早いながらも味わうことができました。

同じく、真冬の寒さを感じさせた「夢金」。
「針一本落としたって分かっちまう」という言葉がやけに印象に残っています。
この一言で静かな冬の情景が浮かび上がってきました。
そして、品を落とすことなく終えたサゲ。
スッキリした気持ちで演芸場を後にすることができました。

落語という芸の素晴らしさを改めて味わうことができた会でした。